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「孤独と笑顔のカーニバル Orphans Circus」

「笑顔」というものは、人にとってとても大事な感情である。今回は心を失っていた孤児がたくさんの人々を笑顔にさせるようになる、そんな物語。

僕は、物心ついた時から一人だった。親と離れて暮らしてるとかじゃない。いないんだ、身内が。
だから、僕は色んな所を転々として、生活してたんだ。孤児院とか養護施設とか、でも僕はどこへ行っても居場所なんてなかった、なぜなら、僕は「感情がない」からだ。何があっても、ほとんど無表情な僕をみんなは気味悪がり、誰も僕と話さなくなった。だから、そんな施設が嫌で、抜け出したのは正解だったのかもしれない、だって、あの人に出会えたから…
施設から出て、街をさまよい歩いていたんだ。そしたら急に誰かとぶつかった。僕は無表情で「すみません」と謝ろうとしたが、それは驚きで消えてしまった、だって僕とぶつかったのは人形だったんだから。僕がびっくりしていると、
「やあ、坊や。こんなとこを一人で歩いてたら危ないよ。」と優しい声が頭に響いてくる。それを聞いた瞬間、僕は何故か涙が出てきたんだ。そして気づいたら、その人に僕の事を全部話していた。直感的にこの人に僕の事を話さなきゃと思ったのかな。
そうして、全てを話したあと、不意にその人が言った。「じゃあ、うちのサーカス団においでよ」
その問いかけはあまりに突然だったけど、しかし、僕は「はい!行かせてください!」としっかり頼み込んでいた。こうして、僕のサーカス人生は幕を開けたんだ。
「ここがうちの拠点であるサーカスだよー」僕はサーカステントの中にいた。なんと、僕がぶつかった人は団長だと言う。僕なんかのために「せっかくだし、僕らのショー、見てもらおう。」と言って、ショーを見せてくれた。そこから先は伝えきれないような楽しさが次々と湧いてきたんだ、そして思った、僕もこんなふうに人を笑顔にしたい、って。今思えば、この時に僕の心は一気に色付いたんだろう。
数年後、僕は大事なサーカス団の一員となり、活動を続けている、僕を救ってくれた団長には感謝しかないし、何より僕はこの仕事に誇りを持っている、だって、面白いじゃん?身よりもない、感情がない少年が、たくさんの人の感情を豊かにするなんて。人生、生きていれば何が起こるか分からない、そんなふうに思った僕は誰よりも笑顔だった。


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