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いちばん嬉しい「ほめ言葉」

わたしが1年でいちばん楽しみにしているもの。
それは、おそらく『M-1グランプリ』なのだと思います。

漫才が好きで、とにかくおもしろい。
それは言うまでもないことですし、素人なのですから、本来はそこだけを「お祭り」として楽しめば良いわけです。

だけど、こんな仕事をしていますから、
失礼は十二分に承知のうえで、やっぱり、「4分」という時間に込める「構成力」だったり、普段の劇場や予選で試し続けた結果の「編集力」だったり、
そういったところもどうしても見てしまいます。
(ミルクボーイの予選からの編集は圧巻でしたね!)

そしてまた、「下積み」や「ラストイヤー」だ「同期対決」「去年の結果」などの要素に、
嫌でも「ドラマ」を感じてしまいます。
それは「甲子園」にも通ずるものがあるかもしれません。
「一生懸命」の格好の良さや美しさを、どうにも感じずにはいられないのです。

そしてもうひとつ。
わたしがいつも気になるのは。というよりも、願ってしまうのは、どうか「誰も損をしませんように」ということです。
この日のために、たくさんのことを悩み犠牲にし辿り着いたすごい方々です。
審査員に酷いことを言われようとも、(そのときのご本人たちは辛くとも..)「マヂカルラブリー」のような結果であればいいわけです。ネタにして負け切れるハートがあって、みんなから「お前らは、M-1で(笑)」と触れてもらえる。
ですが、「ここに賭けてきた人たち」にとって、あとに残るような傷や損がなければいいなあ、ただそれだけをよく思います。

よく、審査員の1人である松本人志さんを、「笑いに厳しい」「ストイック」と評するものも目にしますが、わたしの目に映る松本さんは、同じ「笑い」に誠心誠意向き合ってる同業者には本当に本当にあたたかいひとです。

M-1の舞台でも「いい点数はつけられない」ということはハッキリ言います。
しかし、決して損をしないように、空気が悪くならないように、配慮に配慮を重ねた言葉選びにいつも脱帽してしまいます。

そして褒めるのが本当にうまい。
「いちばん言うて欲しいこと」
を短い言葉で、サラッと言ってくれるのも、すごいなあと感じているところでした。

M-1のこの15年の歴史の中で、松本さんの言葉に救われ、喜ばれたコンビはたくさんいます。
「もっと、ウケてもよかった」
「おも...しろいですね」
「腹立つなあ、おもろいなあ」
「おもろい..!」
「優..秀ですよね」
「ほぼ完璧じゃないですか」
たくさんの、ほめ言葉がありました。

しかし、そんな中でも今年2019年、わたしは
「これがいちばん嬉しいんちゃうかな」
「これまでで、いちばんのほめ言葉じゃないかな」
と思った言葉がありました。

それは、1回戦の「かまいたち」の評でした。
「やっぱり、いいコンビやなあと思いましたね」

おふたりの掛け合いのおもしろさ、漫才の出来のことを評したのだとは思います。

ですが、「かまいたち」は昨年を最後に、今年のラストイヤーは出場しないつもりでいたコンビでした。
それでもやっぱり逃げずに挑戦した。
キングオブコントの賞も獲得し、バラエティにも出演が多い。他のコンビより圧倒的忙しさの中で挑戦したラストイヤーだったと思います。

「やっぱり」
というこの言葉に、「これまでのネタも含めて」「これまでの活躍も含めて」という意味合い、そして「今日改めて、漫才をするふたりを見て、」
「やっぱり、いいコンビやなあと思った」。
これは、かまいたちのお二人にとって、優勝は逃したものの、最高のほめ言葉だったんじゃないかなと思いました。

あったかい言葉やなあ。
そして、みんなおもしろかったなあ。

ちなみに、わたしが言われていちばん嬉しい言葉って何だろうなと考えてみたとき、
「やっぱり、めるさんの文章は読んでしまうなあ」
だとか、
「これからの仕事が楽しみ」
だとか、
「また一緒に働こう」
だとか、そういうことかなあとぼんやり思いました。

今日、そんな嬉しい褒め言葉を大好きな人から貰ったので、なんだか嬉しくてそんなことを考えていました。
明日でようやく仕事納め。
最後までやるぞ。

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