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【Weekly SELECK】軍事コンセプト「NCW」とweb3時代の組織論

みなさま、こんにちは!SELECK編集部の吉井です。

4月からSELECKの週報として、「Weekly SELECK」をお届けすることが決定いたしました🙌

担当記事へのコメント、記事中に出てきたワードの解説、そのときどきの旬の話題を編集部メンバーが持ち回りでお届け🎉

今回は、4月13日に公開した記事、情報のネットワークを育てる。アトミックデザインに基づいた、Web3.0時代の組織論について、

①ワード解説:「NCW(ネットワーク中心の戦い)」とは?
②記事に入れ込めなかったお話:今話題の「DAO」について

の2つをテーマにお届けします!✏️

①「NCW(ネットワーク中心の戦い)」とは?

モノバンドルさんは、2021年の6月に創業し、NFTのインフラサービス「Hokusai」を展開されている企業さんです。

CEOの原沢さんは、創業時から自社の組織を「情報化時代の組織」と称し、グローバル規模での非同期的なコミュニケーションを前提とした、合理的で生産性が高い組織を実現されています。

具体的には「NCW(ネットワーク中心の戦い)」とよばれる軍事コンセプトをベースに指揮命令系統を整え、さらにUIデザインなどで活用される「アトミックデザイン」の考え方を活用し、業務の効率化を図っているというお取り組みなのですが…聞き慣れないワードがたくさん出てきましたね😢(笑)。

そこで、記事中であまり補足できなかった「NCW(ネットワーク中心の戦い)」について解説いたします!

防衛白書では、NCWについて以下のように記載されています。

NCWでは、偵察用の衛星や無人機などの情報収集システムを駆使して収集された敵部隊などに関する情報は、ネットワークを通じて共有され、遠隔地の司令部からであってもきわめて短時間に指揮・統制が行われ、目標に対して迅速・正確かつ柔軟に攻撃力を指向することが可能となる。これは、戦場空間における戦場認識能力のさらなる優位を獲得するとともに、より効率的な戦力運用を目指すものである。

平成26年版 防衛白書 第6節 軍事科学技術と防衛生産・技術基盤をめぐる動向

記事本編でもお伝えしましたが、簡単にまとめると、
①情報収集システムを駆使しながら、
②指揮命令系統を守りつつ、情報がリアルタイムに組織に行き渡るような仕組みによって、情報優位を創出し
③意思決定スピードを上げる(=戦闘の優位を確立する)
という考え方のことを指します。

なんだか、言っていることがわかるようでわからないような…
もう少し、歴史から遡ってみましょう。

NCWは元々、「NC(ネットワーク・コンピューティング)」のコンセプトを軍事システムに応用したものです。

インターネットが普及し始めた90年代、インターネット上の情報が増加したことを背景に、情報共有を推進する動きが各国で生まれていました。

またこの時代、インターネットのシステムが、かつては集中型だったものから分散型のCSS、さらにネットワークを中心としたものへと移り変わります。

そうすると、情報がサーバーに限らず個人のPCにも分散するので、いかに効率よく情報を掘り起こしてビジネスサイクルを短縮させるか、についての議論がなされるようになりました。そのような状況下で、複数のコンピュータを用途に合わせて有機的に接続した「複合型システム(=ネットワーク)」を中心とした利用形態として、NCが提唱されるようになったとされています。

参考文献:森 伸正・森 啓倫・吉岡 正壱郎・宮寺 博男(1996).「ネットワークコンピューティング時代におけるデータシステムの展望」

NCWというワードが初めて使われたのは1998年。米海軍のN6(宇宙・情報戦・指揮統制部長)の配置にあった、アーサー・セブロフスキー海軍中将が最初だと言われています。

冷戦が終結し、1990年代に入ると情報通信技術(ICT)が大幅に進歩して一般の人々でもインターネットを利用できるようになり、経済や社会、そしてライフスタイルまで大きな変化を及ぼしていました。

この影響は、軍事分野においても例外ではありませんでした。なぜ軍事分野? と思われたかもしれませんが、軍事は国家の死活的な問題であり、それに対する「効率」を求めたからで、兵器の開発にとどまらず、組織体制においても効率化がなされてきたとされています。

そしてICTの発展を背景に、そもそも「情報自体が強力な武器」として戦闘力を向上できるのではないかという可能性が示唆され、さまざまな研究が行われた結果、工業化の時代において主流の戦い方であった戦車・艦艇・航空機といったプラットフォーム中心の戦い(PCW:Platform Centric Warfare)から、ネットワーク中心の戦い(NCW:Network Centric Warfare)へと戦い方が変化してきたとされています。

このような軍事技術の発展は、ICTの発達が軍事に影響を与える以前から「RMA(Revolution in Military Affairs:軍事における革命」として概念化されています。(今ではあまりこの言葉は積極的に使われていないそうですが。)昨今では、AIやロボット技術の発展によって新たな軍事兵器が登場しているものの、安全保障や倫理的な観点からさまざまな議論がなされていとのことです。

参考文献:佐藤 仁(2018).「アメリカにおける冷戦後のRMAの歴史的変遷と新たなRMAとしてのキラーロボットへの懸念」.21世紀デザイン研究

最近、個人的にインターネットの歴史について興味関心があったのですが、軍事と密接に関わっている話は本当に興味深いですね。そして、仕事(取材)を通じて新しい言葉や概念に触れさせていただけること、本当に恵まれた環境だなと思います(笑)。

②「DAO」ではなく、「情報化時代の組織」という表現をしている理由は?

そして最後に、取材の裏話を少し🤏

すでに記事をご覧いただいた方は、モノバンドルさんの組織が、今話題の組織形態「DAO(Decentralized Autonomous Organization)」に近いものだと感じられたのではないでしょうか。

DAOとは、「自律分散組織」と訳され、株主や経営メンバーなどの中央管理者が存在せず、組織に所属する人々によって、ミッション実現のために自律的に運営される組織のこと

情報のネットワークを育てる。アトミックデザインに基づいた、Web3.0時代の組織論 - SELECK

原沢さんのnoteでもDAOについて触れられていたので、そのお考え方を聞いてみました!

原沢さん:まず前提として、web3もDAOも概念が広すぎるため、今はまだ三者三様の受け取られ方をされるワードだと思っています。なので、DAOという言葉は使わず、「情報化時代の組織」という表現をしていますね。

DAOがそもそもどのようなものかというと、情報がすべて透明化されていて、ログも全部わかるような組織のことで、要するに「デジタルネイティブな組織」だと思っていて。

このような仕組みがあると、一人ではなく複数人の合意によって資産を運用できるようになるので、CFOが横領したり、社長がいつの間にか高級車を購入するといったことがなくなる(笑)っていうのが、簡単にいうとDAOなんですよね。結局、DAOも手段でしかないので、その組織体系を生かして何をするかということが大事だと思います。

キリスト教やPTA、組合といったものがすでにDAOに近いものですし、株式会社なのにDAOを謳っている時点で、それはもはや「DAC(=Decentralized Autonomous Company)」ですよね。

「キリスト教もDAOに近いものだよね」というお話を取材中にお伺いしたときは、「なるほど〜!」と目から鱗(笑)。DAOという言葉を使うから新しい概念のように聞こえるけれど、実はシステムとしては元々存在していたようなものなのですね。

今後、より身近な存在になっていくであろうDAO。とはいえ、DAOは既存の法律で捌くことが難しく、未だ多くの国で法律が追いついていないともいわれており、今後の動きに期待の分野でもあります!(個人的には今最もアツいネタです)

国内外関係なく、DAO関連の取材はどんどん増やしていきたいところ…!

なので、ぜひ面白い取り組み知ってるよ!という方は吉井までお気軽にご連絡(@mel_xlxlxler)いただけると嬉しいです〜!カジュアルにお話させてください!

ということで、今回のWeekly SELECKはここまで!季節の変わり目、かつ気温の変化が激しい時期が続きますので、みなさま体調にはお気をつけくださいね🍵もうすぐ5月!頑張っていきましょう!!!🔥

それではまた来週〜!☺️

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