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年の瀬 横浜散歩

運試しで申し込んだ桑田さんのライブ、横浜アリーナ追加公演チケットが当たった…!
久しぶりの横浜行き、ああ、胸が高鳴る。
ライブが楽しみなのはもちろんだけど、他にもいろいろ思い描いていた夢がある。

次に新幹線に乗る時は必ず…!と心に決めていたこと。
オーボンヴュータンの呪文を唱える。

素敵なお菓子が出てくる魔法の言葉。
車内販売のお姉さんがやって来たら言わなくちゃ!

「あ、あの…あの…オー…オー……」
「…………あ、オーボンヴュータンですか?今、載せてないんですよ〜。」 

機転を利かせ、ニッコリとお姉さんは対応してくれたが、肝心のお菓子は空振り!
う〜ん…、これは帰りの新幹線に賭けるしかない。
ともかく、まずはちゃんと言えるようにならなくては…。
全然言えなかったぞ?オーボンヴュータン。
…オーボン……。
お盆。
……ヴュータン……。
牛タン。

おっ!
お盆に牛タン!!
お盆に牛タンを食べる、よし!これで覚えられる。

そして帰路の新幹線で。
「お盆…!…お…お盆……」
…ああっ、お盆に…何を食べるんだっけ?!

「……オーボンヴュータンですね。すみません、ないんです。」

やはり言えなかったが、車内販売のきれいなお姉さんは優しい。
しかし…お菓子はGETならず…!!

諦めきれず、キルフェボンとメゾンカイザーのお菓子を購入。

小箱とは言え、これらのブランドの焼菓子を数百円で買えるのは新幹線の車内販売ならでは。

キルフェボンのバトンは食べごたえがあったし、
MAISON KAISERの大人のキャラメルクッキーはほろ苦な甘さで、小さくても満足感が高い。

さて、横浜では中華街のお粥を…なんて思っていたが、
高校生、大学生の若者で大混雑…!
謝甜記を目指すも貮号店はあいにく定休日、
本店は長蛇の列だ…。
いったんは並んでみたものの、周りではクシャミや咳をしている人も多い。
流行り病をもらって帰るわけにはいかない…。
早々に諦め、中華街を抜けて山下公園の方へ出ると、ホテルニューグランドが見えた。

ここでケーキセットをいただきたいと思っていたがこの際、奮発してランチ…しちゃおうかなっ!!

素敵なシャンデリアに出迎えられ、ホテルへ入るも
ランチのできるカフェは満席…。
一時間待ちと伝えられ、目の前が真っ暗に…。
ああ、これはもう…山下公園のベンチで肉まんを頬張るしかないか。
でもせっかくホテルニューグランドへ来たのだもの、大時計の階段を見ておきたいわ。

大時計に導かれ、シンデレラの気分で階段を上る。
そしてふと見ると…左手に舞踏会場のような部屋があり、扉の前にメニューが掲げられている。
…以前、まゆきちさんが食事をされたnote記事を読んだ。そうか、ここか!とピンときた。
しかし、それでも一見客が入って良い空間ではなさそうな雰囲気が漂っており、

「ここは、あの…食事ができますか?」と係の方に尋ねたら、
「もちろんです。」
笑顔で案内され、コートを預けることができて心底ホッとした。

ここはフェニックスホール。
不定期でダイニングルームとして使われているそうだ。
運良く開いている日で本当に良かった。

スープに続いて、熱々シーフードドリアが運ばれてきた。
きちんと作られた美味しいグラタンが食べたいと、ここ10年くらいずっと思っていた。
昔、食べたようなグラタンに出会える店は、なかなかない。
何か水っぽいのだ。
ベシャメルソースをきちんと作ったコクのあるグラタン…探していたものが目の前にある。
しかも…スプーンを入れると中には海老の濃厚なエキスたっぷりのソースまで!
シーフードだもんね。
ああ、望んでいた以上の美味。

優美な曲線の大きな窓にはフリルのついた厚いカーテン。
太い金のタッセルが掛けられている。
そこから山下公園の薔薇が点描画のように見え、その向こうに青い海と空が広がっている。
葉を落とした銀杏に小鳥たちが止まり、梢を揺らす。
…なんて平和な景色。
まるでこの世に悲しみなんてないようだ。
食後の珈琲をゆったりと愉しみながら、窓の景色を絵のように眺めていた。

こんなにも豊かで穏やかな満ち足りた気持ちになれたのは、数年ぶりかもしれない。
身内が次々と入院し、慌ただしい年月が長かった。
本当は今だって気を抜けるわけではない。だけど…。
このひと時だけは全てを忘れよう。
心地良い気分に身を委ねよう。
そう、こんな気持ちを味わいに私はこの年の瀬に新幹線に乗って横浜まで来たのだから。

快晴、空は青い。
心配事なんて一つもない。
そう、あえて言うならスマホの電池量だけが少し心配なくらい。
ああ、なんて軽い悩み…!

この日、窓から見た青い空と海の色を胸に刻もう。
ずっと忘れないでいよう。

…ん?
あれ?そう言えば…デザートが運ばれて来ないけど…。
デザートのことだって、忘れていないのよ?私。

コーヒーのおかわりを頂きながら係の方に尋ねると、
1階のカフェのランチセットにデザートがつくが、ここのセットにはつかないとのこと。
ならば…!
ええ〜い!プリン・ア・ラ・モードを追加しちゃう?!と前のめりになって、ハッと我に返った。
…ドリアをたいらげ、これ以上カロリーを摂るのか…?

冷静さを取り戻し、ケーキはまたのお楽しみ、ウォーキングがてら山下公園から桜木町駅まで歩き、散策を楽しんだ。

横浜の街は美しい。

横浜散歩にはサザンファンならではの意義もある。
桑田さんの曲には横浜を舞台にしたものが複数あり、
ライブで演奏される時、横浜の観覧車などのきらびやかな夜景が背景に映し出されるのだ。
この日のライブでもその演出があり、
ああ…お昼に歩いた場所だ…今頃はこんな夜景なんだなぁ…と感慨を2倍に味わうことができた。

ロープウェイに誘われ、橋を渡って行けば駅へと着いた。
自由で気ままな私だけの豊かな時間。
しかも夜には待望のライブが待っている。
幸せに浮き立つ、足取り軽く横浜散歩。



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