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おだまき蒸しと肉じゃが

日曜の昼は主人の実家で義母と一緒に三人で食事をする。

昨年の夏、義母は食べられなくなり、随分痩せた。
前年までは入院している義父の見舞いに、歩いて駅まで行き電車に乗り通っていたのに、義父が亡くなってからは家から出ることも少なくなり、足腰がすっかり弱ってしまった。
さらに家の中で転倒。骨折で腰が少し不自由になり、コロナ渦もあって益々引きこもる日々…。

「食べられない。食べたくない。
食欲がないねん。」

そう言う義母の言葉を丁寧に聞いてみると、
食べられない理由が見えてきた。

歯槽膿漏がひどくなり、歯茎が弱っていた。
歯医者へ行くと、歯を抜かれ総入れ歯にされるのでは…と恐れていた。
今の歯医者さんは簡単には抜歯しませんよ、と受診を促しても首を振った。
「猛暑で暑いから涼しくなってから行くわ。」

そう言われてしまうと、私もそれ以上強く言いづらい。
実家の親なら「何、言ってんの!行くで!!」と腕を掴んで歯科へ向かうのだが…。

心配しているうちに義母の痩せ方が顕著になり、訪問歯科に来てもらうよう、ケアマネさんを通じ手配してもらえ、数回の診察で歯茎の状態が改善された。

義母は嚥下には問題はなく、やわらか食なら難なく食べられる。
ところが食べられない問題は、まだあった。

手の震えや足腰の不自由さゆえ、炊事が困難。
以前なら何でもなかった洗い物さえつらく面倒なのだ。

…ヘルパーさんに入ってもらえば、この点は解決するのだが、本人が拒否する。

平日は義妹が、
そして日曜は、私達が行って食事をサポートする。

作りたての熱々を車で運び、テーブルに並べ、一緒に「いただきます。」
すると、義母は驚くほどの食欲を見せる。

献立に毎回、悩むが、
今回は肉じゃがと、茶碗蒸しにうどんが入っているおだまき蒸し。

鶏ささみと生椎茸、銀杏、カニカマを入れ、三つ葉を散らした。

作ってみると、茶碗蒸しは意外と簡単。
圧力鍋だと本当に早くできる。

茶碗蒸しの器セットは結婚した時、母が買ってくれた。
だけど、この30年余で茶碗蒸しを作ったことは一度か二度程度だった。
作ってみようという気持ちの余裕がなかった。

おだまき蒸しは、母が「これは御馳走なんやで。」と言って作っていたものだ。
卵液をふきんでこし、きゅうっと絞るのを覚えている。
私は使わなくなった茶漉しで卵液をこしてるけれども。
母にも作って持って行けば良かったなぁ。
きっと喜んだのに。

義母が美味しそうに平らげて笑ってくれ、私も嬉しい。
今年は阪神が好調で食卓の話題も明るい。

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