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新人さん

看護師一年目、新人さんと呼ばれる頃。
右も左も分からない私は本当に何もできなかった。
透析室のドドリアみたいなナースが怖かった。患者さんと何を話せば良いか分からず、コミュ障を発揮しまくっていた。病棟の全員が敵だと思っていた。

ある日、緊急入院からの緊急オペとなり病棟は慌ただしく、何もできない自分は何をすれば良いか分からず立ち尽くしていた。

「剃毛ならできる?!右側剃ってな」

先輩に言われて、オペの準備をする。
私は忙しいとパニックになりやすいが、落ち着いて患者さんの頭を剃った。痛くなら無い様に、毛が残らない様に。


剃っていたのは左側だった。


絶望した。流石に自分にドン引きした。本当に右も左も分かってなかった。

焦りすぎて、バレたらクビになると思って急いで右側を剃った。気がつけば全剃毛になっていた。


幸いなことに、その患者さんは元々頭の毛が薄かった為誰にも気づかれなかったし患者さんも笑って許してくれた。(多分あんまり状況が分かってなかったと思う)先輩に報告したら大丈夫、大丈夫!って言われた、絶対大丈夫じゃないやろって思った。その先輩は黙ってくれていた、大好きになった。

少しずつ出来ることが増えてきて、右と左はたまに時間がかかる時もあるけど流石に分かる様になった。病棟にフリーザのような敵は居るけど、味方もいると思える様になった。コミュ障は治らないけど雑に話しても許してくれる優しい人がいた。

もうすぐ四年目になる、やっぱり話すのは苦手で特に後輩との会話は気を使うけど、新人時代の気持ちを忘れずに、好きな先輩なように優しいひとになりたい。


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