45才以上の編集者に共通する属性は

 編集者というのはほんとうにタフな人たちだ。編プロ時代にわかったが、35才以上の編集者はみな仕事ができる(そうでないとこの年齢まで生き残れない)、45才以上の編集者はみな頑健(同上)。この定義に外れている人は周りにひとりもいない。
 編集者のすごさは、予定外の状況になった時にわかる。非常事態に滅法強く、慌てることなく的確に動いていくのだ。

宅急便を追跡

 数年前の年末だ。ある編集者から校正紙を送ってもらう手はずだっただが、予定時間になっても宅急便が来ない。その少し前にわたしは引っ越しをしたのだが、当該編集者にはまだ新住所を知らせずにいたことを思い出した。今ごろ行方不明扱いとなったゲラはどこかの配送所にひっそりと置かれており、明日送り主に戻す予定になっているに違いない。だが明日から、その会社は1週間の年末年始休暇に入るのだ。年明けにゲラをもらうのでは遅い。どうしよう。
 まずは編集者に連絡を取る。事情説明をして謝ると「分かりました。これから荷物を追跡しますのでお待ちください」という。
 それから数時間、「ピンポーン!」と元気よくドアホンが鳴る。待っていたゲラが無事に届いたのだ。後から聞いたところによると、伝票番号で追跡し、新住所を伝えてできるだけ早く届けてもらえるように手配してくれたとのことだった。ほんとうにありがたい、いや申し訳ないことだった。

「やむなし!」

 別の社で、若手ゆえに本作り以外のさまざまな雑用に日々追われ、自分の仕事が進まず部署で唯一残業と休日出勤が連続しても、誰に当たることもなく「やむなし!」とにこにこ笑っている人もいる。

「地面につきそうな膝を再度伸ばしつつ」

また別の社で、制作能力ナンバーワン、社内最年少で取締役に昇進した編集者がいる。毎日部下の管理に忙しく、というと聞こえはいいが、実態は部下の尻拭い。謝ってばかりで、ご本人いわく「(頭を下げすぎて)地面につきそうな膝を再度伸ばしつつ」日々過ごしているという。

ミスした人を守る

 本の発行後にミスが発覚して執筆者チームに責められ、ミスをした担当者を切るように詰め寄られながらも、頑としてそれだけは同意しなかった編集者もいる。

ゲラを抱きしめて

 校了前夜、どうにもならない事情があって初校のときの10倍以上の朱字のはいったゲラがあった。無理を承知で組版チームに修正を戻しつつ「自分だけ寝るわけにいかないでしょ」とビジネスホテルに泊まり、「何かあったらすぐ電話して」と組版担当者に伝えて文字通りゲラを抱きしめながら寝たという。
 もちろん、翌朝どうということもない顔で焦りひとつ見せずに出勤し、校了させていた。

信頼を裏切らぬよう

 こうしたタフな人たちにお世話になっているわたくし。少しでも役に立てるよう、迷惑をかけぬよう、何よりも信頼を裏切らぬよう、ミスを落とさぬように、できることをきちんと積み重ね、少しずつ仕事を進めていく毎日を続けていこう。

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