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一夜にして出現した巨大VTuber事務所「i-LIVE」とは

i-LIVEの誕生

昨日2019年12月6日に、バーチャルライバー(VTuber)専門の事務所、「i-LIVE」の設立が発表されました。設立時の所属ライバーは191人で、おそらく現時点で最大人数のVTuber事務所が、一夜にして出現したことになります。

所属メンバーの母体は、配信アプリ「IRIAM」でオリジナルライバーとして登録されていた方々です。IRIAMライバーは現在(2019年12月7日)3種類いて、オーディションで選ばれたオリジナルライバーと、既存VTuberから参加した人と、アルファテスター(誰でも配信できるようにするためのテスト)です。

オリジナルライバーはIRIAMからLive2Dの専用キャラクタを与えられ、IRIAMに所属する形で活動してましたが、IRIAMは事務所ではないという中途半端な状態でした。それが解消されたことになります。i-LIVEはIRIAMの運営会社であるZIZAIに所属しますが、IRIAM配下では無いので、IRIAM以外での活動もやりやすくなるはずです。

希望した人は全員i-LIVEに所属できたようで、191人という人数は活動中のオリジナルライバーの大半だと思えます。所属を希望しなかった人も少数いるようですが。

リスナーの反応は、期待しているという声も多い一方で、不安視する声もありました。i-LIVE所属によって活動の幅が広がる一方で、ルールが厳しくなった部分もあるようで、特にそこについて賛否両論あるようでした。

ライバーの反応

i-LIVE所属になったライバーの声を直接聞きたくて、発表の日にあちこちの配信に入って、6人のライバーさんの意見や説明を聞くことができました。以下にまとめてみます。

活動の幅が広がるところ

・IRIAMのライバー管理部門が独立してi-LIVEに入り、ライバーにマネージャーとして付くことになった

・FANBOX(クリエーターに課金して支援するプラットフォーム)ができるようになった

・企業案件や外部コラボに期待

人事移動だけでなく、ライバーサポートの人員を増やすと以前の運営のツイートにあったので、ちゃんと増員できていればライバーのサポートは良くなったのでしょう。

先日、姫乃愛琳ちゃんがIRIAMからの引退を発表しましたが、彼女は自費で3Dの体を作り、ClusterやFAVRICなどIRIAM外でも活動する先駆者的な存在でした。前例がないだけに、IRIAMとの調整には苦労したようで、それも引退の理由だと示唆していました。事務所ができてIRIAMからは(一応)独立したことで、そういった外の活動がやりやすくなると期待したいところです。FANBOXが解禁になったのもその一つでしょう。個人のFANBOXを許可している事務所はむしろ少数派なので、進んでいるとも言えます。

事務所がプラットフォームから独立し、企業案件やコラボの窓口になるので、外部からの仕事がもらいやすい環境にもなったと言えるでしょう。

これまでより制約がかかるところ

・リスナーとの私的なDMは禁止。連絡用ならば使ってもよい

・配信中にリスナーとゲームでフレンドになるのはOKだが、配信が終わったらフレンド解除すること

・IRIAMにサブアカウントで入ることは禁止

・これまで非公式に、デビュー時期によって「1期生」「5期生」などと呼ばれていたが、ライバーからそう名乗ることは今後控える

上の二つは、アマチュアっぽさを捨てて公私の区別をつけろという意図であり、私が聞いた限りはライバーさんは「仕方ないんじゃないか」「むしろいいんじゃないか」と容認していました。聞いた方々がたまたま、あまりそういうことをしていなかったからかもしれませんが。個人的には、妥当なルールだと思えます。

3番目のサブアカウントは、やや不便になるでしょうけど、これも公私の区別の話なのでしょう。IRIAMにいる限りはプロであると。

4番目の「〇期生禁止」は、議論のあるところです。期によってかなり空気が違って、あまり交流の無い期もあるようですが、結束が固い期もあって、そういうところは別の呼び方を作るなど回避策を考えているみたいですね。グループを勝手に作ることはアリのようです。

「〇期生」と言えたのは、月に1回か2回まとめて新ライバーを追加をしていた2019年10月デビューの人までで、その後は順次追加になったので、〇期生と言えなくなり、残念に思っている新人さんは多いようでした。今後も〇期生は無くなるようなので、それに対する配慮なのでしょう。わからなくもないけれど、リスナーとしては、大量にいるライバーさんのグループ分けとして便利だったので残念ではあります。リスナーが使うのは構わないとも言ってましたが。

全体的な印象

・中途半端な状態が解消されたのはうれしい

・事務所所属ってなんだかかっこいい

・(リスナーから見て)なにも変わらないので言うことは無い

・みんなが不安に思うほどの変化は無いと思う

・規約について、どこまでが守秘義務で、どこまで言ってよいのか悩む

ライバーさんが、i-LIVE所属の印象について語っていたものです。たまたまかもしれないけれど、みなさん肯定的でした。始まったばかりで批判的なことは言えないという忖度もあるかもしれないが、納得してi-LIVEに入ったのだし、変化への不安はありつつも、期待している雰囲気は伝わってきました。

ただ、ルールがいろいろ変わる中で、どこまでそれを言えるのか分からないのが不安だと言ってる方も複数いました。守秘義務もあるけど、リスナーに言っておくべきところもありますからね。責める口調ではなく、自分がもっと勉強しないとというニュアンスでしたが、事務所から明確なガイドを出すほうがいいかもしれないですね。

既存VTuber組の気持ち

オリジナルライバーではない、既存VTuberからIRIAMに参加した人は、i-LIVE所属の対象外なので、取り残された気持ちになっている人もいると聞きました。

既存組は大事だと思うんですよね。私は好きなVTuberがIRIAMでも配信しているからIRIAMを見るようになったのですが、そういう人は多いはずです。最近のアプリのアップデートで、誰が誰をフォローしているか見えるようになりましたが、他の人のフォローをたどっていくと、最初が既存VTuberの人は多いです。既存VTuberで特に個人の方が、取り残されない配慮はあって欲しいと思いました。

まあ、オリジナルライバー191人と契約をまとめるのでもめちゃくちゃ大変だったでしょうから、まだ既存VTuberまで手が回っていないだけかもしれません。

i-LIVEに期待すること

悪いことのほうがニュースになりやすいもので、VTuberと事務所のゴタゴタがよくネットのニュースになり、VTuber事務所は胡散臭いものだと思っている人は一定数いるようです。

また、IRIAMは最近多少ゴタゴタしているのは確かです。トップクラスに人気だった方が続けて引退したし、アルファテスターと既存ライバーとの軋轢が表面化しています。アルファテストはキャラクタの1枚絵を自分で用意すれば、誰でも配信ができるという仕組みのテストで行っているもので、一般参加なので、アマチュアな言動とか、著作権的にアウトな絵を使っているなどで問題を起こしています。既存ライバーとしては、自分たちが作り上げたものを壊されている感じがするでしょう。大半のテスターは悪くないとしても。

そうした中でこの発表なので、不安視する声も見られたけれど、こういう状況だからこそ、i-LIVEは打開策になりえるのではないでしょうか。

i-LIVEの公式サイトはまだ簡素ですが、冒頭にある文章、いわば「設立趣意書」のようなものですが、とても良いと思いました。引用します。

i-LIVEとは、キャラクター専門の「ライバー」事務所です。
私たちは、所属する個性豊かなライバーたちの魅力を、最大限に引き出せるような活動のサポートや最適な環境づくりに努めています。
そして、来たるべきライブ配信市場の盛り上がりに向けて、「キャラクター」という分野のパイオニアとして、潜在的価値の創造と発信に貢献します。

「来るべきライブ市場」「潜在的価値」という文言が特徴的で、つまり今はまだ過渡期なんだと。まだまだこんなものじゃなくて、これから大きな市場になるから、それに向けて頑張るぞ、ということですね。

私はVTuberが好きで、IRIAMにも最近けっこうハマっていますが、まだまだ一部の人のものですよね。でもこの魅力はもっと広まっていいはずだと思えるし、YouTubeやIRIAMといったプラットフォームの外にも活躍の場があるはずです。

私はわりと古のオタクなので、アニメファンがネクラ・ロリコンと呼ばれて迫害されていた時代を知っているし、今よりもずっとマイナーだったと思えます。でも今は大学生の5割が深夜アニメを見るそうで、メジャーなものになっています。バーチャルキャラクターにもそういう潜在力はあると私は思っています。

i-LIVEはそういう先の世界を見据えていることが、この文章からわかるので、所属ライバーが広い世界で活躍できるように、夢を叶えることができるように、サポートしていって欲しいと思いますね。

アルファテスター問題についてですが、i-LIVEを作った理由の一つは、IRIAMが一般参加型に移行していくため、であるはずです。誰でも配信できるようにするけれど、公式ライバーもいる。その区別をはっきりさせるためです。そして、一般の人でも人気が出れば、i-LIVEに入れる道を用意するのではないでしょうか。そうすれば、人材供給源にもなります。

公式と一般の違いがリスナーにわかりにくいのは問題だと思っていて、メニュー画面などでわかりやすくすれば、公式の人の「自分たちの作った場所が荒らされる」という感覚が薄れるのではないでしょうか。

IRIAMはわりと閉じた世界で、私も以前はどんな人がいるか知りませんでしたが、知ってみると才能豊かな人が多くて驚きました。大手の箱でデビューしていたら普通に人気が出ただろうと思える人も、観測範囲で何人もいます。i-LIVEは190人という最大勢力のVTuber事務所で、人数が多いのでもちろんムラはありますが、人材は豊富です。一般参加から才能ある人をすくいあげる仕組みがうまく回れば、さらに豊富になるでしょう。いろいろ問題はある中での出発ですが、輝かしい未来もありえるはずなので、ライバーさんのためにも応援しています。

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