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IRIAMのバーチャル握手会がなぜエモかったか

昨日、AKIBAカルチャーズ劇場で行われた「イリラジ大感謝祭」に行ってきました。VTuber(Vライバー)配信アプリのIRIAMが、ラジオ日本で『IRIAM バーチャルラジオ営業所』という番組を毎週放送しており、そのお祭りというイベントです。

イリラジのパーソナリティは週ごとの担当制ですが、このイベントで(現在欠員になっている)4週目のパーソナリティを決めることになっていて、私の主な目的はそれを見ることでした。候補者6人の中に、よく配信を見に行っている桜もち羽吹呂ピカソがいたからです。

ブロマイドiriam

桜もちはIRAIMでトップクラスの人気ですし、ピカソも今年後半にデビューした新人の中では人気がありますが、IRIAMはわりと閉じた世界なので、VTuberファン一般への知名度はまだ低いでしょう。地上波ラジオのメインパーソナリティをレギュラーで務めるということは、一生履歴書に書ける実績であり、今後よりメジャーになるための足掛かりになりえます。そんな人生の転機に立ち会いたいという気持ちがありました。

審査方法は、まず昼の部でのクイズ対決が予選、次に夜の部のしりとり対決が決勝で、その様子を見て会場の観客が投票するというものです。観客は、メインパーソナリティの3人のファンが多いように見えました。あと、ゲストのアイドルの佐武宇綺さんのファンも一定数いたようです(ファン一同がフラスタを出していたので)。そんな、候補者のことをあまり知らない人達に対して、クイズやしりとりのリアクションだけでアピールすることに難しさはあったでしょう。でもフェアではありました。

結果は、ピカソは決勝に残れず、桜もちは決勝進出したものの、パーソナリティには選ばれませんでした。私は二人の思い入れやがんばりを見ていたので、とても残念な気持ちになりました。昼の部には行っていないので、ピカソは見ることもできなかったし。

ステージイベントが終わった後は、「バーチャル握手会」の時間です。IRIAMはそのための専用アプリを開発していて、iPadの画面のVライバーと対面して声で会話しながら、タッチパネルで頭をなでることと、握手することができます。下の動画は時間が短いですが、実際は1分間話せました。

私は桜もちとピカソの握手会に参加しましたが、まず桜もちは、終始ガチ泣きでした。「せっかく会いに来てくれたのに、こんなでごめんなさい」と言いながらずっと泣いているので、頭をなでながら、「もちちゃんは良かったよ。がんばってたよ。」と慰める会になっていました。終わった後のツイートで、「こんなに悔しい思いをしたのは初めてです。正直、こんなに泣くほど本気だったのかと、自分自身に驚いてます」と書いていました。

一方、ピカソはこのイベントに人一倍入れ込んでいるように見えたので、落胆していたはずだけれど、握手会では元気に振舞っていました。私はそんな彼女に早口で、「僕がピカソを応援してるのは、夢のために頑張ってる様子に心打たれたからだよ。ピカソが僕を動かしたように、多くの人が動かされるはず。君はその力があるから、今後いくらでもチャンスがあるよ」といったことを話したのですが、それを聞いて泣きそうになった様子が伝わってきました。

終わったあと、結果が発表されたときの後味の微妙な感じは消し飛んで、よかったな、エモかったなという気持ちで胸が一杯でした。

VTuberと1体1で話せるイベントは何回か経験していますが、こんな気持ちになったことはありませんでした。相手は私のことを知ってるわけではないし、特別に聞きたいことも実は無く、言葉を交わすことが目的なので、思えば当たり障りのない話をしていました。

今回はどうかというと、パーソナリティの座を掴むためにがんばる様子を見ていて、その夢が(今回は)叶わなかった直後だったので、当然その話になります。相手も私が応援していたことは知っているので、そこで心が通うわけです。当たり障りのない会話では得られない部分で。

VTuberの魅力として特徴的なのは双方向性・相互関係性だということは、にじさんじCEOの田角さんや、REALITYの荒木さんも言っています。双方向性は、コメントを読まれることだったり、Twitterに反応があったりなどですが、普通は「他愛のない内容だけれど、反応があればそれだけでうれしい」というものですよね。つまり「言葉の双方向性」です。

今回は、そのVTuberさんの人生の転機(かもしれない)に関われたということで、極端に言えば「人生の双方向性」です。お互いがお互いの人生に影響を及ぼすという。実際にはそんなことなくても、そんな気分になれたから、エモかったわけです。

Vtuberの因幡はねるのエピソードを思い出しました。以前にnoteの記事にしましたが、彼女はAKBの中野郁海の大ファンで、デビュー前はライブや握手会によく通っていました。ある時のAKB総選挙の後の握手会で、中野郁海は落ち込んでいて、因幡はねるはそんな彼女に泣きながら話したそうです。1位にしてあげられなくてごめん。私はこれからVTuberになって、自分の夢に向かってがんばるから、いくみんもがんばろう、と。中野郁海はそれを覚えていて、AKBを卒業した後に、なんと因幡はねるのチャンネルに出演して応援してくれたのでした。

これは究極に双方向な例で、なかなかこんなことは無いし、私は因幡はねるほどの熱心なファンでは無いですが、でも今回、その片鱗を体験した気分でした。こういうイベントの直後の握手会は、なるほどこういう気持ちになるんだなと。

もちろん、イベントで勝ってそれを共に喜べるのが一番良かったけれど、これはこれで、リスナーとの絆を深めたはず。着実に前に進んでいるので、これからもがんばって欲しいし、これからも応援したいと思いました。

IRIAMに限らず、配信アプリは配信者をイベントで競わせることをよくやりますが、それには「応援したい」と思わせる効果を狙っての部分があるでしょう。ただ大抵のイベントは、投げ銭をいくら集めたかという勝負になります。今回はそうではなく、その人の力量を直接見ようとしていたし、多くの中立的な第三者が審査員だったし、ガチなオーディション対決の空気がありました。それも、握手会も含めていろいろエモくなった理由の一つでしょう。今回のイベントには、いろいろなヒントがあったように思いました。

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