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好きと悲しみと優しさ溢れる小説

みなさん、こんにちは。メリアです。

今日はこちらの1冊を紹介いたします。

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私の大好きな江國香織さんのこちらの1冊です。


概要

こちらはデビュー作『桃子』を含んだ全21編を収録した作品となっています。

さまざまな内容が収録された本作。


『デューク』という作品では大好きだった愛犬が死ぬ。私は悲しみに暮れていた翌日、電車で出会った青年とプールに行き、美術館を訪れ、落語を聞く、そしてクリスマスのシーズンの街中でそっとキスをして消えていく。

その瞬間、その名も知らない青年が「デューク」であることを知った。


もちろん、他の作品にもふとした瞬間に江國さんの好きが描かれる場面に遭遇します。

ぶどう酒・さくらんぼパイ・梅ジャム・海鮮焼きそば

そしてそれらを人と共有する。

その優しさに出会うことができる作品です。


感想

やはり私は江國香織さんが好きだなぁと思い知らされる作品でした。

一つ一つの作品で感じたのは、「好き」「悲しみ」「優しさ」でした。

人との出会いも出来事も、その瞬間は永遠に思えても、いつ消えていなくなるかなんて誰もが知るよしはないのです。

それは世間では"負の感情"として捉えられがちですが、江國香織さんは決して"負の感情"という後味を残さないのです。


「デュークが死んだ」それはもちろん悲しい出来事だが、そっとキスをして消えていく少年。「今まで愛してくれてありがとう」という優しさを残して旅立ちます。

『草之丞』では幽霊だった父が突如現れ、一時を一緒に過ごす。のちに旅立ってしまうのだが、その3人で過ごした家族の時間は優しさそのもので、忘れることはないのです。


上記にも記したのですが、作品を通して江國香織さんの「好き」が少しずつ描かれています。そしてその「好き」を他人と共有することで、悲しさではなく、読者の心を優しさで満たしてくれるような作品なのです。


大好きだったデュークは死んだけど、デュークは「私」を大好きだった。『鬼ばばあ』では、時夫はおばあさんが好きだったし、おばあさんもまた、時夫が好きだった。『草之丞』では幽霊の草之丞も奥さんも息子もお互いを愛していた。

みんな優しい世界で生きていることを実感させてくれる作品でした。


「ものすごい感動」でもなく、「ものすごい悲しみ」でもない、そっと悲しみを誘い、そっと優しさで包んでくれる、そしてそっと消えていくような暖かな作品でした。


「好き」をありのままに表現できる江國香織さん、きっとこの方は、たくさん好きなものがあって、その分、好きなものを失う悲しさを誰よりも持った方なんだろうと私は感じました。

気になる方はぜひ調べてみてください。


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