いるけどいない。いないけどいる。
みなさん、こんにちは。メリアです。
本日紹介する1冊はこちらです。
井上荒野(いのうえあれの)さん
東京都出身。1989年、「わたしのヌレエフ」で第1回フェミナ賞、2004年には『潤一』で第11回島清恋愛文学賞を受賞。他に『誰よりも美しい妻』『もう切るわ』『静子の日常』など有名作品が多数あります。
あらすじ
秘書として働く女性とお料理教室の講師として働く、2人の女性の物語。
愛する夫を急病で亡くした女と、夫が大っ嫌いになった女。
2人は『いる男』と『いない男』の間で葛藤を繰り広げる。
「わたしの方が可哀想に決まっている…」
2人の女性の孤独と冒険の物語…。
感想
まりには夫がいるものの、「そこにはいない」
普段の会話はほとんどなし。料理は呼び鈴で呼び出し。返事は相槌だけ。
そんなまりは「どうしてこうなったのだろう。いつからいなくなったのだろう」と思うのです。
一方の実日子は、心から愛していた夫を失い生活の中でその面影を無意識に追いかけてしまいます。
「私が忘れないかぎり、あなたはいるのよ」
真逆の2人が描かれていますが、私はまりが破壊へと、実日子は一歩踏み出すような感じがしました。
"どちらが不幸か"というと、基準はそれぞれだと思います。
作中には何度も孤独と戦う姿が描かれ、この作品自体が『孤独』を主体とした作品であるのだと感じました。
その孤独から逃れるために自分自身とどう向き合うか、他人を"利用"することで自分を保とうとすること残酷ではないと感じました。
しかし、共感できる部分もあります。
感情を持つ人間なので寂しさ、孤独を感じることは多々あります。
それぞれの女の感情を引き出す井上さんの感性にドキドキしましたし、タイトルが絶巧だと思いました。
共感したり、孤独の怖さを感じたり、理解できなかったりなど、さまざまな感情になりました。
他の作品も読んでみたいです。
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