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ウォルマートとオラクルが米国TikTok事業へ参画、米国政府は暫定承認

『戦略をアップデートする』は、競争戦略コンサルタントとしてGAFA×BATH等の米中メガテック企業をはじめ国内外トップ企業の動向をフォローしている田中道昭が、日々行っているこれら企業へのリサーチの中から、その内容をnoteでシェアするものです。

今日の『戦略をアップデートする』では、第34回で取り上げたウォルマート米国TikTok事業取得についての続報をシェアしたいと思います。

ウォルマートは、2020年9月19日にニュースルームで、「Walmart Statement About Potential Investment in and Commercial Agreements with TikTok Global(TikTok Globalへの出資、および同社との協業契約に関するウォルマートのステートメント)」とするリリースを発表しました。

同リリースによれば、ウォルマートは、新たに設立され12ヶ月以内の米国でのIPOを計画する「TikTok Global」の株式7.5%を取得すること、「TikTok Global」とEC、フルフィルメント、ペイメント、オムニチャネルなどに関する協業契約を締結することなどについて暫定合意したとしています。なお、マイクロソフトとの関係(第34回参照)については言及されていません。

一方、オラクルは、同日、「Oracle Chosen as TikTok’s Secure Cloud Provider(オラクルはTikTokのクラウド・プロバイダーに選定される)」とプレスリリース。その中で、TikTokシステムすべてがオラクルクラウドに移行されて運用されること、オラクルは「TikTok Global」の株式12.5%を取得することが明らかにされました。かねてからオラクルによる米国のTikTokサービスの取得は報道されていましたが、正式に発表されたのはこれが初めてです。

さらに、同日、ウォルマートとオラクルは連名で「Oracle and Walmart Announce Tentative U.S. Government Approval(オラクルとウォルマートは米国政府の暫定承認を発表)」(ウォルマート版オラクル版)とするプレスリリースを出しました。

ウォルマートとオラクルが「TikTok Global」の株式を合計20%を取得すること、「TikTok Global」は米国で上場しその株式は米国の投資家によって所有されること、TikTokシステムはオラクルクラウド上で運用されることなどの事業スキームについて、トランプ大統領がTikTokの親会社バイトダンスへ暫定承認を出したということです(TikTokのリリースはこちら)。これで、TikTokアプリの禁止措置はいったん延期となりました。

「米中新冷戦」の文脈では、米国が主張していたTikTok事業の完全売却ではないものの、新会社「TikTok Global」の米国上場により2社に加えて米国の投資家が新会社を所有することになる(しかも、バイトダンスの株式持分のうち半分は米国のVCであるセコイヤキャピタルとジェネラルアトランティックによるファンディングと言われている)、オラクルクラウドでTikTokの米国ユーザーの個人情報やプライバシーを保護することで、米国は折り合いをつけた格好のようにも思えます。

その一方で、ビデオ会議システム「Zoom」が多くのサービス部分をオラクルのパブリッククラウドへ移行する(オラクルの2020年4月28日付けプレスリリース参照)など、同事業を強化したいオラクル。そして、EC事業やオムニチャネルサービスをさらに強化し、「EC×店舗」でデジタルシフトをもっと進めたいウォルマート。両社の戦略上の観点からすれば、同スキームはメリットがあるように思えます。しかし、様々な要因や思惑がからむ本案件、引き続き注目したいと思います。

田中道昭

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