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「生活者」のゆくえ

「『消費者』は止めて『生活者』と言おう!」みたいな話を聞いたのは、もう何年も前だった。私たちは消費するだけの存在じゃない、日々を営み、暮らしを大切にしている「生活者」なんだ──。そういう主張を掲げている人たちを見た、遠い記憶がある。だけどあれ以来、「生活者」という言葉が浸透したという話は聞かない。

そもそも、この単語は辞典に載っているのだろうか。疑問に思ったので、いくつか引いてみる。

いま手元にある旺文社の国語辞典(第10版)だと「生活苦」の次が「生活習慣病」で、「生活者」は載ってない。

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旺文社国語辞典は既に第11版が出ているらしいので、そっちは載っているかも。

今度は電子辞書に頼ってみる。デジタル大辞泉。こちらは以下の通り。

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いまのところ

・広辞苑(最新版)、デジタル大辞泉→「生活者」表記あり。
・明鏡国語辞典(第2版)、旺文社国語辞典(第10版)→なし。

という感じで、つまり「生活者」という言葉は「大型の国語辞典を引けば載っているレベルの、あまり使われていない単語」という印象。

広辞苑にしろ大辞泉にしろ、特に「『消費者』という単語に代わって出てきた言葉」とは書いていなかった。シンプルに「生活という視点から見た、人」のことを指すらしい。

「消費者」という単語を忌避する傾向はいろんなところにあって、ツイッターで「生活者 消費者」で検索すると、こんなつぶやきも出てくる。

あるいはnoteで、こんな記事も ↓ 。

「消費」は経済を回す視点からしか人間を見ていなくて、それに代わる言葉が必要だ──というニーズ自体はあるように見える。

「生活者」という言葉、これから浸透するんだろうか。いまのところ明らかに「消費者」の優位だけど、単語の力関係が逆転する日は来るのだろうか。「生活者」のゆくえやいかに。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。