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あなたの声がメルカリをつくる。UXリサーチがメルカリに反映されるまで。

こんにちは、メルカリのUX ResearchチームでUXリサーチャーをしている上田(chanu)です。

これまで「Mercari Design」ではお客さまの言葉にならない声を聞く。メルペイを支える、リモートUXリサーチについて。メルペイデザインチームでリサーチャーとデザイナーがコラボしやすい3つの理由という記事で、何度かUXリサーチについて取り上げてきました。

今回の記事では、お客さまの調査から得られる知見や課題が、どのような社内連携を経てメルカリのプロダクトに反映されているのか、お話ししていきます。

メルカリのUXリサーチ

メルカリでは、普段どのようにUXリサーチ(以下:UXR)が実施されているのでしょうか。

リサーチは大きく分けて次の2タイプに分かれます。
1.プロジェクトに伴走しながら行うリサーチ
2.既に見えている課題に対する仮説を検証するためのリサーチ

UXRチームとして関わっているリサーチのほとんどが、1のタイプに属します。

1のタイプは、PMからの依頼や必要に応じて、開発を進めるプロセスの中にリサーチを組み込み、その際に得られたフィードバックや分析結果を施策に反映させていくというものです。比較的短い期間の中で、状況に応じたリサーチ方法を選んで実施し、素早いアウトプットを現場に渡します。こちらに関しては後ほど、実際に行った機能開発とリサーチの進め方についてお話します。また、すでにリリース済みのサービスや機能に関して、お客さまがどう感じているのか調査を行うこともあります。

2に関しては、組織として解決したい課題や、それに対する解決策の仮説を検証するために行うリサーチです。デプスインタビュー(1対1の対話形式で、お客さまの行動や思考、その背景について深堀りして潜在的なニーズを探る方法)や訪問調査、ユーザーテスト等を組み合わせて、1よりもやや長めの期間をかけて実施することが多いです。

UXRを行う上で大切なこと

私自身、リサーチャーになる前はもともとPM(プロダクトマネージャー)だったこともあり、リサーチをやってみて初めて気付いたこと、見えてきたことが沢山ありました。

数値を見てどこが課題なのかを分析しても、実際にお客さまがつまずいているポイントは他にあったり、便利だと確信を持ってつくった機能が全然響かなかったり……。こういった状況は往々にしてあります。そうした「生」の発見は、調査が終わってすぐ、まだ感覚が新鮮なうちにPMやデザイナーと共有して認識をすり合わせ、ターゲットや施策の見直し、サービスの改善に活かしていくことがとても大切です。

リアルなお客さまの声をどこまでプロダクトに反映できるかは、リサーチャーとプロダクトチームのコンビネーションの見せどころ。また、定性と定量をいかにバランス良くリサーチに活かすことができるかという部分も、アウトプットの質を大きく左右する要と言えます。

さらに忘れてはいけないのが、ただ調査して結果を共有して終わりではなく、「実際に意思決定に使うことができるリサーチのアウトプットを生み出す」という心がけです。この意識を持ってUXRに取り組むだけでも、組織に貢献できるバリューの大きさがかなり変わってくると感じています。

PMとリサーチャーの連携について

先程説明したリサーチの2タイプのうち、PMとの連携が特に重要になってくる1のタイプについて、実際にどのような形で連携を進めているのか事例を交えて詳しくお話します。

※尚、こちらの記事で事例としてご紹介している機能は現在、iOSをお使いの一部のお客さまにしか開放しておりません。また、告知なしに機能を改変する/閉じる可能性があり、機能の利用条件に関する問い合わせにはお答えできませんので、ご了承ください。

1.リサーチ計画の作成
まず、PMが施策の大枠を決め、その開発プロセスの中にリサーチが必要であると判断した段階で、計画を立てていきます。具体的には、どのような層のお客さまに何を訊きたいのかをPMとシンクしながら、適切なリサーチ方法やターゲットを絞り、スケジュールを立てていきます。

私が以前担当したプロジェクトでは、調査結果からお客さまの多くが「商品の説明文を書くことに苦労している」という課題が見えていました。この課題を深掘ってみると、どうやら、「出品したことがないカテゴリーの商品について、どんな説明文を記載すればよいのか迷っているお客さまが多い」ということが分かりました。結果として、お客さまご自身に、説明文にどんな情報を記載すればよいのかを調べていただいているという状況が発生しており、お客さま体験を非常に損なってしまっていることが明らかになったのです。

このような背景を踏まえて

・お客さまが出品経験がない領域の商品でも、説明文として何を入力すればいいかわかるようにし、抵抗なく出品できるようになる
・説明文を入力する手間を減らし、楽に出品できるようにする

上記2つをゴールとして提供できる施策を、実際にお客さまに意見を伺いながら磨き込んでいこう、ということになりました。

2.ターゲットの絞り込み
リサーチの結果をより精緻なものに落とし込むため、必要に応じてターゲットを絞るためのお客さまアンケートを、PMと協働して作成します。協力者をどのように絞り込んでいくかは非常に重要なパートであり、リサーチ結果にも大きな影響をもたらします。したがってこの過程はPMと認識のズレがないか細心の注意を払いながら進めていく必要があります。

先程の事例でいうと、アンケートでは

①メルカリで出品経験がある
②出品の際に説明文で何を書けばいいかわからず苦労した経験がある

と回答していただいた方を中心に、他の回答内容も加味しながら調査依頼をさせていただました。

3.リサーチの設計
調査当日、どのような流れでお客さまと実際にコミュニケーションを取るのか、リサーチの内容を設計していきます。検証したい仮説をPMと出し合い、それを明らかにするにはどうやって質問をすればよいのか、モックアップをどう使うかなどを打ち合わせます。

今回の場合でいうと、インタビューとユーザビリティテスト(実際にプロトタイプを操作してもらいながら、使いやすさ、課題がないかを調査すること)を組み合わせた形のリサーチを設計することになりました。

ユーザービリティテストでは、デザイナーに協力してもらい、出品する際に表示される画面、購入する際に見える画面など複数パターンのモックアップを用意しました。お客さまが実機を操作する際に、
・機能を理解してもらえるか
・問題なく操作できるか
・実際に使ってみたいと感じるか
・(逆に自分が購入者だったとき)新機能を使って出品された商品の情報を見て買いたいと思うか
…など、事前にテスト時間内でどのようなチェック項目を押さえて検証するかPMと話し合った上で設問項目を作成し、当日の台本に反映していきました。

チェック項目の確認は30分程度で済みますが、この部分の認識合わせをすることによって、ユーザビリティテストの質がかなり高いものになるといつも感じています。

4.実査
モデレーターと書記で役割を分担し、実査を行います。基本的にリサーチャーはPMをアシストする形で実査に入るので、お客さまとメインでコミュニケーションを取るモデレーターはPMが担当することが多いです。インタビューなどの基本的なテクニックのインプットが必要な場合は、事前にリサーチャーからPMにサポートを行います。また、実査当日にデザイナーやエンジニアがリサーチの状況を中継で観察することもあります。

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今回の場合は、インタビューとユーザビリティテストを組み合わせた、お客さま1人あたり2時間のかなりボリュームのあるリサーチになったので、2名体制で交代しながら実査を2週間程度の期間内に行いました。インタビューは体力勝負なところもあり、いかに効率よく集中してサイクルを回していけるかというのも、プロジェクト伴走型のリサーチでは重要なポイントになってきます。

5.ラップアップと速報の作成
実査のまとめ方はチームによりけりですが、可能な場合は実査終了後すぐに感じたことや気付きなどをPMとリサーチャーで軽く共有します。またリサーチに参加できなかったメンバーのために、簡単に実査の内容をサマライズしてSlack内で速報を共有します。結果を踏まえて、場合によってはターゲットのセグメントを微調整したり、追加のリクルーティングを行ってもう少し課題を深堀りしたり…と、プロジェクトのスケジュールと相談しながら実査を進めていきます。

今回の事例で取り上げた説明文の入力に関する機能の検討では、インタビューを行ったお客さまの人数が比較的多かったため、終わってから全員分をまとめるのでは効率が悪くなってしまうと判断し、実査ごとに都度ラップアップを行う形式で振り返りを行いました。

また、リサーチ期間中に何度かモックアップや設問項目の修正・追加を行い、徐々に狙うべきターゲット層が絞り込めるようになってきました。お客さまに見せる写真や情報、文章ひとつで、得られるフィードバックは大きく変わってくるので、この部分は根気よく微調整を重ねる必要がありました。


6.まとめの作成
実査の区切りの良いタイミングで、速報よりも詳しいサマリーを作成します。目的としてはプロダクトチームのメンバーがより詳しくリサーチ結果を知るためと、今後、過去にどんなリサーチが行われたかを他のメンバーが知るための資料をストックするためです。必要に応じてここから、リサーチ結果をさらに分析することもあります。

おわりに

ここまで見てきたように、メルカリのUXRチームではプロジェクトと伴走しながらでPMと協力し合ってサイクルを回しています。

リサーチャーとしての仕事は日々発見と学びの連続です。そして調査で分かったことをいかに形にして世の中に送り出すことができるのか、というのはまさに現場との連携にかかっていると言っても過言ではないでしょう。今後も、リサーチひとつひとつの質を高めるための取り組みを行いつつ、引き続きプロダクトチームとの協力を深めながら、より良いサービス作りにUXRチームとして貢献していきたいと思います。

執筆:chanu
編集・図版作成: crema
編集: taiyo