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データ分析初心者向けおすすめ本のご紹介 〜第2弾・分析設計力編〜

こんにちは。メルカリAnalyticsチームの@tomoyaです。

今回は、データ分析初心者の方向けのおすすめ本 第2弾として「分析設計力」に関する本の紹介をしていきたいと思います。

「第1弾・データ分析基礎力編」は下記をご覧ください。

おすすめの本を@suwachanさん、@tsugutoさんに聞いてみました。
@suwachanさんはProduct Analyticsチームで主に商品検索機能の改善に向けた分析を担当しています。
@tsugutoさんはInsight Analyticsチームに所属しており、市場動向の分析やリサーチの実施を通じて、プロダクト/マーケティング施策改善や戦略立案に生かしています。

前回同様、駆け出しのデータアナリストの方だけでなく、PM・マーケターなどでデータ分析を学びたい方や、データアナリストと仕事をする方にもお役立ちできるような記事となっております。

はじめに 〜分析設計力の重要性について〜

実データを集計したり可視化したりする前に、事前に筋道を考えることが非常に重要です。たとえば、分析のそもそもの目的・問いを定めたり、その問いを解くためにはどのようなロジックを構築するのかを考えたりすることです。そのような検討をすっ飛ばしてやみくもにデータ分析を始めてしまうと、目的からずれた分析をしてしまい、手戻りが発生し大切な時間が無駄になってしまうことが往々にしてあります。

今回は、「問題設定力」と「問題解決力」の重要性と、その身に付け方を学べる書籍を紹介していきたいと思います。

これらのスキルを手に入れて実践し続けることで、意思決定に資する「価値のある」データ分析を行うことができるようになると考えています。

1. 『論点思考』

@suwachanさんおすすめ1冊目の本がこちら。主に問題設定に関する書籍です。今から1年前、分析に近い職種に就いてから5年目くらいの時期に読んだそうです。当時のことをsuwachanさんに聞きました。

Q:この本を読んだきっかけは何でしたか?

suwachanさん:メルカリに入社してすぐ、とある調査プロジェクトにアサインされました。そのプロジェクトを推進する上で、問題設定を正しく行う必要性を感じ、実践的に学びたいと思って本を探していました。学びたいことと書籍のタイトルがドンピシャでマッチしていたので、この本を読むことにしました。

Q:当時、どのような課題を感じていたのでしょうか?この本を読むことによってその課題は解決できましたでしょうか?

suwachanさん:アサインされた調査プロジェクトは、目的こそありましたが、かなり抽象的で遠い目的だったんです。そのため、納期である四半期の間に答えを出せるよう、論点(=解くべき/答えるべき問題)を具体的にし、絞り込んでいく必要がありました。その過程において、考え方の拠り所となるものがほしいと思っていました。

進め方が何通りもある中で、道しるべとなってくれたのがこの書籍でした。担当プロジェクトの内容を、書籍に記載されている具体例に当てはめてみたりしながら試行錯誤しましたね。プロジェクトの論点や進め方を整理するのにかなり役立ちました。特に役立ったのが、第4章の「論点を構造化する」という箇所です。関係者から「◯◯の数値が気になる」「◯◯と比較してみたい」といったいろいろな意見が出てくる中で、その論点は何かを考えて構造化し、全体像を把握できるようにしました。それから必要な調査を設計/実施しました。

Q:この本を読むことによって業務になにか変化はありましたか?

suwachanさん:ありました。論点を考えるというのは、どんなシーンでも役に立つと思います。
よくあるのは、カウンターパートの方からちょっとした分析依頼を受けるとき。言われた集計をそのまま実施するだけでなく、そもそもの目的に立ち返って論点整理を行うようにしています。そうすると、カウンターパートの方が当初イメージしていたものと提供する分析のアウトプットとのズレがなくなり、手戻りをなくせているのではないかと思います。

例えば「17歳〜19歳の方のデータをください」と言われたとき、まず目的を確認します。それが「成人年齢の引き下げによるお知らせをしたい」という目的であった場合、論点は「本来は誰に送付すべきなのか」「親御さんには送らなくてよいのか」「いつ送付するのか」「どの時点で該当年齢となる人に送るのか」などいろいろと出てきます。この大小の論点を整理しつつ、抽出要件を固めていきます。もし依頼のまま集計した場合、年齢だけを条件にすると誕生日の関係で成人年齢変更の対象とならない人も出てきてしまうので、ズレてしまいます。これはシンプルな例ですが、複雑になればなるほど論点の整理は必要になると感じます。私も論点思考力はまだまだなので、今後も改善していきたいです。

「17-19歳のデータをください」という依頼が来たときの状態。「そもそもの問い」が必ずある
「17-19歳のデータをください」という依頼に対し、論点を構造化した図

Q:どんな課題をもっている方におすすめですか?

suwachanさん:そうですね、「分析によく手戻りが発生してしまう」とか、「分析に付加価値を付けられていない」と感じる方におすすめです。前者に関しては、分析の目的を正しく捉えて、その論点を構造的に整理すると、依頼者とのズレを少なくできると思います。後者に関しては、論点を構造的に整理すると「これについても考えるといいかも?」と依頼者の方が見えなかった部分が見えるようになり、価値を付け加えることができるのではないかと考えています。

<編集後記>
イシューからはじめよ」という書籍もあわせて読むと、より問題設定の重要性・考え方が身に付くのではないかと思います。

2. 『仮説思考』

@suwachanさんおすすめ2冊目の本がこちら。問題設定・問題解決両方に関係する書籍です。今から約半年前、1冊目に紹介した論点思考のあとに読んだそうです。当時のことをsuwachanさんに聞きました。

Q:この本を読んだきっかけは何でしたか?

suwachanさん:仕事において「仮説」という言葉はよく使われますが、人や場面によって使っている意味合いが異なっているのではとぼんやり感じていました。そこで「仮説」という概念・種類を正しく理解した上で、「良い仮説」の立て方を学び、問題解決力の向上を図りたいと考えてこの本を読みました。

Q:当時、どのような課題を感じていたのでしょうか?この本を読むことによってその課題は解決できましたでしょうか?

suwachanさん:効率的に分析を進めるために、探索的なアプローチではなく、仮説を立ててから手を動かす必要があったときに読みました。この本では「良い仮説」が定義されており、その仮説の立て方を真似しつつ分析を進めました。ちなみに「良い仮説」とは、「掘り下げられている」「アクションに結びつく」の2つの条件が満たされている仮説です。本書内では具体例が書かれていたので、参考になりました。

Q:この本を読むことによって業務になにか変化はありましたか?

Suwachanさん:はい、仮説を立てて分析するというシーンに限らず、コミュニケーションにおいて変化がありました。本書では「問題発見の仮説」と「問題解決の仮説」を区別しているのですが、普段の議論の中でどちらについて話しているのかあいまいになり、非効率な議論になってしまっているときがありました。この2つをきちんと区別して議論することで、認識のズレを防げていると感じています。例えば、プロダクト・マネージャーと議論をしているときに、「仮説を持ってきてください」と言われたとします。これが「お客様の体験の中で何が課題となっているのか」という問題発見に対する仮説なのか、「それはどんな施策によって解決できるのか」という問題解決に対する仮説なのかを明確にする必要があります (あるいはそのセット)。この認識がズレてしまうと、「本当はどんな施策を打てばいいか知りたいのに、課題の話で終わってしまった」というような食い違いを生んでしまいます。

仮説の区別事例: 「出品してくれる人を増やす」という目的に対する仮説

Q:どんな課題をもっている方におすすめですか?

suwachanさん:仮説という概念の理解がふわっとしている方や、仮説が思い浮かばない・立てられない、という方におすすめです。「良い仮説」を立てるための実践的な方法が書かれています。

3. 『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』

@tsugutoさんおすすめの1冊はこちら。主に問題解決に関する書籍です。今から約2年前、メルカリに入社する直前にこの本を読んだそうです。当時のことをtsugutoさんに聞きました。

Q:この本を読んだきっかけは何でしたか?

Tsugutoさん:メルカリに入社する直前に読みました。前職で働いているときに、当時同じ部署にいた尊敬する先輩が開催してくださっていたリサーチに関する勉強会にて、この本を紹介してもらいました。

Q:当時、どのような課題を感じていたのでしょうか?この本を読むことによってその課題は解決できましたでしょうか?

Tsugutoさん:そうですね、基本的にはロジカルに物事を考えられていると思っていましたが、ロジカルシンキングを体系的には身に付けられていませんでした。また、前職ではPMをしていたのですが、事業を進捗させることを最優先するあまり、ときに思考をすっ飛ばしたり結論に早く辿り着こうとする癖があったなと感じていました(本来のPMにはあるまじき思考だったとも反省しております)。

Q:この本を読むことによって業務になにか変化はありましたか?

Tsugutoさん:はい、ありましたね。思考を整理するときに、ロジックツリーを書いて検討すべき観点として抜け漏れがないかであったり、正しいストーリーが構築できているかを確認する癖がつきました。また、人に何かを説明する際にも頭の中でロジックツリーを意識しながら話せるようになり、わかりやすく相手に物事を伝えるという能力も向上したと感じています。

Q:どんな課題をもっている方におすすめですか?

Tsugutoさん:そうですね、問題の構造化や原因と解決策の洗い出しが苦手な方、自身の文章や話がわかりにくいなと感じる方におすすめですね。僕もそうだったので、同じような方に勧めたいです。また、こういった類の本は、読むだけで終わってしまうと意味がなく、実践を繰り返すことではじめて身に付くものだと思うので、最終的にはそこまで意識してやっていただきたいですね。


業務のプロセスを①問題発見→②問題解決→③実行という3つに分けたときに、「論点思考」は①、「仮説思考」と「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則」は①②の両場面で主に役に立つ書籍です。3つの書籍で述べられていることを実践することで、有限の業務時間の中で効率的に事業により大きく貢献できそうだと思いました。あくまでデータ分析は、①②検討時に立てた仮説検証のための手段の1つです。

メルカリのデータアナリストはデータを集計・可視化するだけの作業者に徹するというよりも、カウンターパートであるPMやマーケターの方々とともに、解くべき論点やそれを解くための道筋を主体的に作っていくことが求められています。

自身も改めて問題設定力・問題解決力が身に付いてるかを振り返り、必要に応じてこれらの書籍を読み返して実践を繰り返していきたいと思いました。

第3弾は「データ集計力」に関する本をご紹介する予定です。ぜひ @mercari_data をフォローしてチェックしてください。お楽しみに。

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