七夕

命の炎を静かに消して
私は魂だけで窓から抜け出した
まだ誰も気づいてないみたい
こんな真夜中に旅立つなんて
ちょっと卑怯だったかな
いや もうどうだってよかった

都会ではあまり星が見えなかった
周りが明るすぎて騒がしすぎて
まだ眠らない街を上空から眺めて
悲しく微笑んで通り過ぎた
プラネタリウムで見た星空も良かったけど
やっぱり この土地の空が綺麗

虫の鳴く田畑は
深い闇夜に沈んでる
灯りになるのは星と月
まるで宇宙にいるみたいで

私が愛した貴方に
別れを言いに来たんだ
古びたアパートの部屋
枕元に座り込んだ

胎児のように眠る貴方の
頬を指でそっと撫でた
透き通る風のように
美しくて愛おしい

月明かりは私に影を作らない

貴方との約束を果たせずに
私の命は闇の餌になった
もう感じることも出来ない温かさも
共に刻み込んできた記憶も
すべては私の肉体と共に燃え尽きるけど
まだ私を消し去らないで
日が昇るまで貴方を愛し続けていたいから

貴方との未来は夢の中で続く
肉体も燃え尽きたら夢も見れないのか
でも貴方の記憶から消える時までは
貴方の肉体でこの世を感じとれる
だから不幸の報せを受け取っても
あまり泣かないでいて
星空が貴方と出会わせてくれるはずだから

命の炎を静かに消した
雲ひとつない夜に
短冊に願い事は書かなかった
私が川を渡ることは知っていたから

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