見出し画像

麺屋武蔵の語る飲食業界の今後 〜緊急事態宣言から150日を振り返る

新型コロナウイルス(COVID-19)が日本でも猛威を奮い始めてから約半年。緊急事態宣言が東京都で発令された4月7日からこの記事を公開した9月4日でちょうど150日が経過しました。

私が代表を務めます麺屋武蔵は1996年に先代が青山に1号店を構えてから拡大を続け、現在は都内に15店舗を展開しております。都内で展開をしていることもあり、緊急事態宣言以降の経営への打撃はあまりに大きなものでした。

今は徐々にお客様も戻ってきていただけるようになり、創業以来常に掲げている「上質な食事体験を提供する」という企業理念をこれからも実践していきたいと考えております。その中でこれから何よりも大事なのは「お客様の安心と安全」です。
ラーメン界の先駆者でありたいとこれまでも様々な試みを行ってきましたが、今後はお客様の安全と感染拡大防止を徹底した「新たな日常」の先駆者にならなければと考えております。

飲食業を経営する一人の人間として、これから私たちは何をしていかなければいけないのか、また飲食業界はこれからどうなっていくのか。こうしたことを私の所感を交えて記させていただきます。

画像5

緊急事態宣言以降 飲食店の悲鳴

「前年の売り上げの1,2割しかないよ」
こうした言葉は特に緊急事態宣言中に多くの飲食店経営者さんから出ていました。
包み隠さずにお話するならば、私たち麺屋武蔵も同様です。私たちはもう少し売上をキープできていましたが、それでも前年比でお客様の数、売上共に3割ほどまで落ち込みました。

飲食業というのは当たり前ですが借りている店舗があり、雇用している従業員がいて、仕入れている食材があります。これらはどれも毎月の支出として出ていくものであり、それを賄えているのはお客様が来てくれているからです。売上が減ってもコストは同様に減るわけではないので、その分は赤字となって経営にのしかかります。

政府からの雇用助成金などを活用し血の流れる速度を緩めることはできましたが、余力のない飲食店さんなどは泣く泣く店舗を閉じざるを得なかったところもあります。そうした悲鳴が様々なところで上がったのがこの半年でした。

営業時間の短縮が起きると従業員の雇用にも影響が出ます。麺屋武蔵では雇用助成金を活用して交代で休んでもらう働き方になりましたが、それでも働く時間が短くなるために手取り額が減ってしまうスタッフもいました。

経営を任されている身として何よりも考えなければいけないのは、まずはもちろんお客様、そしてスタッフと取引先の皆様を守ることです。
「お客様に安心・安全に来ていただける環境を作り、上質な食事体験を提供すること」「営業を止めず、スタッフの雇用と取引業者さんの営業を守ること」をこの半年間は考え尽くしました。

新たな試み どうしたらお客様が安心できるか

今回の苦難を受けて、麺屋武蔵でも新たな取り組みをいくつか行いました。
通信販売やデリバリーの開始、テイクアウトの開始、店頭でのお土産ラーメンの販売などが例に挙げられます。

実は麺屋武蔵は今まで通信販売などを行なっていませんでした。
私の著書「麺屋武蔵 ビジネス五輪書」でも社員に向けて何度も伝えているのですが、麺屋武蔵にとってラーメンはあくまでツールだと考えています。お客様がお店の暖簾をくぐってからラーメンを食べ、気持ちのいい気分で店を出ていくまでの一連の上質な時間・空間を提供していくのが私たちの目指すところです。
そのため、ラーメンだけを通信販売で売るというのは、実は私たちの目指すところではありませんでした。気持ちの良い接客や過ごしやすい店内。ラーメンが美味しそうに見えるライティングなど、店内にはお客様に満足してもらうための仕掛けがいくつもあります。

画像1

画像2

しかし緊急事態宣言以降は「お店に来ていただくこと」が不安・負担に感じられるお客様も増えてきました。現在のお客様のニーズ第一位は「安心して食事ができる」ことになると思います。そのため「上質な食事体験を提供する」という企業の理念は変えずに、いかにご自宅などで私たちのラーメンを楽しんでいただくかを考えて、今回の取り組みをスタートしました。

実際にこれまで遠方から来てくださっていたお客様、出張の際に立ち寄ってくれていたお客様などは、家でも麺屋武蔵のラーメンが食べられるのは嬉しいと満足の声もいただけています。そうしたお声もあるため、この先コロナウイルスの影響が無くなったとしても、こうした通信販売やデリバリーの仕組みは継続していくつもりです。

安心できるお店作り

また、こうした時期にあっても来店してくださるお客様には感謝の念が絶えません。
不安な気持ちもある中で「美味しいものを食べたい」「飲食店を応援したい」という理由でご来店くださっている方がたくさんいらっしゃいます。

お客様を守るため、麺屋武蔵は店内も少しずつ変わっていっています。
・入り口でのアルコール消毒・マスクの着用のお願いの徹底
・卓上アルコール消毒液の設置
・カウンターへのパーテーションの設置
・小包装の割り箸・卓上調味料を撤去し、ご希望のお客様へ申告制で提供
・席数の減少と席間の距離の確保
などを行なっています。

画像3

画像4

その他の改善案として、店内設置の券売機を新しいものに変更し、お客様からの食券預かりを無くす方法も進めております。

また、ピークタイムの「密」を避けて来店されるお客様も増えているように見受けられることから、SNSなどでお店の混雑状況を発信していくことも考えています。
実は先日麺屋武蔵の全店舗でTwitterの運用を開始しました。お客様にどういった情報が求められているのかを試行錯誤しながらですが、様々なツールを使って安心できるお店作りに取り組んでいきます。

コロナウイルスに対して「絶対に安全」と断言できない以上、お客様のご協力をいただきながら少しでも安心できる店づくりをしていくしかないと考えております。新たな日常においてお客様に支持されるお店になるためには、コストを惜しむべき時ではないと思っています。

逆にお店側だけではコロナウイルス対策はできません。お客様にも前述のアルコール消毒の徹底とマスクを外しての店内での会話、大声での会話を避けることをお願いしております。
また、どうしてもこういった他のお客様の不安になってしまう行動をされる方には、お店として最悪の場合入店をお断りするなどの対応も必要になってくるのかと思っております。
こうした対応はもしかすると短期的にはマイナスの評価を受けるかもしれません。しかし、より多くのお客様に安心いただける環境作りは麺屋武蔵の目指す「上質な食事体験の提供」に欠かせないため、中長期には皆様にご支持いただけるものと信じています。
お客様にも何卒ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

今後の飲食業界の動き

あくまで個人の考えですが、これから1年〜1年半は今の状態が続くと考えております。コロナウイルスに対するワクチンの開発・確保などはニュースでも時々話題になりますが、飲食を取り巻く環境がコロナ前の水準に戻るのは早くても来年夏、遅いと2022年後半頃になるのではないかと考え、長期戦の覚悟を持っています。

そしてこれからは「お客様に何を求められているのか」を本当に考え抜いたお店しか生き残れない時代に入ると思います。残念ながら、今後立ち行かなくなるお店も出てくると思います。もし行きつけの応援したい飲食店がありましたら、まさに今来店してあげてください。お客様からのそうした応援が励みになると同時に、みなさんがちょっと足を運んでくれただけでとても助かると感じる経営者さんは多いはずです。

ただ、同時にこれはチャンスだとも考えています。今はまさに会社一丸になって「お客様に安心してもらうためには何をすれば良いか」「どうすればもっと良いお店作りができるか」というアイデアを出し、素早く実行できています。
このコロナ禍を乗り越えた時、麺屋武蔵は一段強くなれているし、明るい未来が待っていると確信しています。

画像6

麺屋武蔵はこれからもお客様に提供するコアな価値は変えるつもりがありません。ラーメンを通じて「上質な食事体験」を提供していくことが麺屋武蔵の目指すところです。ただ、これまで以上に「安心・安全で上質な食事体験」を提供していくことを今は考えています。お客様からのご意見・ご要望などは積極的に取り入れていきたいと考えています。

また、それだけではなくラーメン史の新たな扉を開けるようなチャレンジにも積極的に取り組んでいきたいと考えています。現在進めているのは「前代未麺」プロジェクト。まさに言葉通りの商品を開発しようというチャレンジです。商品以外でも「働き方」や「サービス」など様々な形で「業界初」にチャレンジしていきたいと考えており、お客様の満足に向けて妥協なく突き進んでいきます。
こうしたネガティブなニュースも多い時期だからこそ、食事の場から皆様に笑顔を届けていきたいと考えております。

上海蟹つけ麺

最後に

長文となりましたが、ここまでお読みいただいた皆様に改めて感謝致します。

飲食業界は今苦境に立たされています。少しずつお客様にもお越しいただけるようになりましたが、コロナ前と比べるとまだまだ差は歴然としています。
あなたの好きな飲食店も実はいつ無くなってしまうかわかりません。もし皆さんに余裕がありましたら、早いうちに来店して応援してあげてください。まさに今がお店を続けていけるかどうか、店長さんたちが悩んでいる瞬間だと思います。そうしたときにお客様が来てくれて、応援の言葉を届けてくれれば、もう少し頑張ろうと思えるお店も多いはずです。

また、お店側のこれからの責任は「美味しい」だけではなく、「安心・安全」で「上質な食事体験」ができるお店を作っていくことだと思っています。こうした企業理念を20年以上積み重ねてきた私たちにはこれは自然な考えでした。こうした取り組みを外食産業全体が徹底して、新たな日常の中で「外食に行こう」とお客様が以前のように思っていただけるようになれば嬉しいです。

これからも麺屋武蔵をご愛顧いただければ幸いです。皆様と一緒にラーメン界の発展に寄与できれば本望であります。
マスク着用のご来店、入店時のアルコール消毒。他のお客様のご迷惑となるような大声の会話などは改めてご配慮をお願い致します。


最後になりますが、麺屋武蔵では店舗の情報などをTwitterやinstagramの各種SNSでも発信させていただいております。お客様からのご意見などもお聞かせいただければと思いますので、フォローやコメントなどいただければ嬉しいです。

また、遠方の方や「まだお店に行くのはちょっと」とお考えの方は、ご自宅でも麺屋武蔵の味を楽しめる通販も行なっております。是非一度ご覧ください。

 麺屋武蔵 公式Twitter
https://twitter.com/mennya634

 麺屋武蔵 公式Instagram
https://www.instagram.com/jiroyatogi/

 麺屋武蔵 公式通販サイト
https://menya634.thebase.in/

画像8

これからもどうぞよろしくお願い致します。

株式会社 麺屋武蔵
代表取締役 矢都木二郎

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?