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命と向き合うということ:プロフェッショナル 仕事の流儀「空と大地と羊と共に〜羊飼い・酒井伸吾〜」

プロフェッショナル 仕事の流儀は毎回見ているわけではないけれど、興味がある職種が登場した時には見直すことがある。今回は、全く知らない業界?だったので興味がわいた。「羊飼い」だ。日本に専業の羊飼いはそれほど多くないのだろう。酒井さんは、モンゴルで修行してきた本物だ。今では三つ星レストランが仕入れる極上の羊肉を出荷するプロの羊飼いだ。

酒井さんの、羊飼いとしての人生から、良い意味で期待を裏切られ「命と向き合うこと」の意味を学べた。

「命と向き合うこと」の意味

この番組を見る前は羊飼いっていうのは、羊が好きでしょうがなくて、一匹一匹を可愛がっている動物好きのおじさんというイメージだった。なんとなく動物園みたいなイメージがあったんだけど、酒井さんを見て衝撃を受けた。酒井さんは、徹頭徹尾、羊を「商品」と見ている。愛情をこめて育てて、それを美味しいお肉にすることに情熱をかけているのだ。

コロナ禍でレストランでの需要が激減し、せっかく生まれた子羊を出荷する先がなくなった時、酒井さんも悩んだ。そして「この命をちゃんといただいてほしい」から切ないと訴えていた。また、死にかけた子羊を生かすために必死になっている最中も「もちろん、経済動物としてどこまで手をかけるか(コスパ)は考えていますよ。」と述べる。羊の体重検査の際に、丸々と太った子羊を抱き上げ「これは美味しそうだな」とつぶやく。

あれほど、手をかけて愛情をこめていると、羊を殺すこと(手放すこと)も辛いのかと思いきや、その辺は本当にドライなのだ。酒井さんが飼育しているのは300頭の羊。そして、母羊からは毎年200頭以上の子羊が生まれる。そして、この子羊を出荷するのだ。

酒井さんは、羊毛を生み出し、美味しいお肉を提供してくれて、まさに自給自足を実現させてくれる羊という存在が大好きなのだ。単にペットのように愛情を注いでいるわけではない。命を生み出し、それをいただくことの意味を本当に知っている。たぶん、私なら「と殺」現場を見たら、もうお肉を食べられなくなるかもしれないが、それは一種の欺瞞だよね。

命と向き合うプロっていうのは甘くないと実感した。何でもプロっていうのはそうかもしれない。感情に流されすぎる自分はプロとしては手ぬるいなあと感じたよ。そのうえで、学んだことをいくつか述べてみたい。

目の前の羊と相談する

酒井さんの口癖は「羊と相談」だ。何をどうするか、決めかねた時は、いつも羊と相談する。例えば、普通は羊に与えた飼料は乾燥させたものだ。しかし、酒井さんは飼料にあえて水を加えている。水を加えると腐敗も早くなるので、ノーマルな方法ではないが、羊の様子を見ていると乾燥した餌を食べるとむせていることに気づいたのだ。

マニュアルで決められた通りやっている人は、これまでとは違うことが発生した場合に応用が利かなくなる。酒井さんは、目の前の命に目をそらさずに向かい合えば、必ず教えてもらえることがあると分かっている。酒井さんの、そのポリシーが活きているのは、羊の出産時だ。通常、羊は出産時15%くらい死産するものらしい、しかし酒井さんのところでは死亡率は5%だ。それは、酒井さんが徹底的に目の前の羊に向き合っているからだ。

手を貸すタイミング

酒井さんが羊の出産に手を貸すことは少ない。ギリギリまで羊が自分の力で出産できるように環境を整える。しかし、命が失われる一線を越えようとした時にはすかさずに介入する。酒井さん曰く「命というのは、はかないけれども強い」ものなのだ。一度、「生きる」方向に傾けば、驚くほど生命は強い。だからこそ、危うい時に酒井さんは「生きる」方向にそっと後押しをする。

出来得る限り羊の生命力を信じつつ、手を貸すタイミングが絶妙だった。実際、今回も双子の子羊が母羊の胎内で絡みあってしまった兆候に気づき、酒井さんは素早く介入していた。何でもかんでも手を出しすぎる私にとっては、酒井さんの判断力に学べる点があった。羊じゃないけど、人を扱うのも同じかもしれないなぁって。

羊飼いのプロの仕事を見て改めてプロのすごさを感じた。



大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq