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究極のミニマリスト【感想】BS世界のドキュメンタリー「365日のシンプルライフ」

フィンランド・ヘルシンキの26歳の青年、ペトリの壮大なじぶん実験を映像化した作品。物が多すぎる生活に辟易したペトリは、本当に大切なものを見極めるために、部屋の中の物品を一つ残らずレンタル倉庫に移し、1日に1個ずつ必要なものを取りに行くという実験を始める。この実験のルール。

1:持ち物はすべてレンタル倉庫に預ける
2:1日1個だけ取りに行ける
3:新たな物は買わない
4:実験の期間は1年間

本当にゼロからのスタートを切るために、真っ裸で何もない部屋にたたずむペトリの姿がオープニングだ。真っ裸でレンタル倉庫に走るペトリ(スクリーンショットにもなっている)、さすがにジョークだろうとは思った。この姿は、なすびの「懸賞生活」を想起させた。1日1個で365個を部屋に戻していく。いったい、ペトリは何を感じ取るのだろうか。

本当に「必要」なもの

1日目に、ペトリが持って帰ってきたのは「コート」だった。なにせ、裸なんだから、まずは身体を覆うものが必要。何もない状態からスタートするとはいえ「裸」からスタートするとは思わなかった。そうなると、当然、最初の2~3週は、ほぼ「服」などの身体を覆うものになってしまう。次の日、その次の日と、靴、ズボン、シャツなど服を持ってきた。まあ、人間は裸では生きられないというのが分かる。

横で見ていた妻が「アホだねぇ」とつぶやいていた。同感だ。

その後に、ペトリが持ってきたのはマットレスだ。毎日、硬い床の上で寝ていたが、マットレスを持ってきたペトリは幸せを感じながら眠りに落ちた。物が何もない状態になると、幸せの「閾値」が下がるのが分かる。ちなみに食事は、この実験に協力してくれる弟のユホが定期的に届けてくれる。冷蔵庫はないので、できるだけ冷気のあるところに食材は置いておく。冷蔵庫がやってくるのは数か月後のことだ。

この生活を数か月続けたところで、ペトリは物欲がほとんどなくなっている自分に気づいていく。本当に「必要」なものを集めると、だいたい100個で十分だったそうだ。その後、生活を豊かにするものを選んでも200個。それ以上のものはいらないということに気づく。やがて、ペトリは1日1回、物を取りに行くのも面倒になってくるのだ。

愛おしくも面倒くさい

1年の実験の間にペトリには彼女ができる。彼女と時を過ごそうとすると、さすがに、様々な物が必要になる。社会性を全く排除し、一人きりで生きていこうとすれば、物は大して必要ないかもしれない。でも、誰かと一緒にいようと思えば、やはり相手に合わせて必要?と思える物が増えていく。人間関係というのは愛おしくも面倒くさいものなのだ。

私も、基本的に物には頓着しない性格だけれど、結婚してからは、何でもいいわけじゃなくなった。妻も、それほど物を増やさないほうだけど、こだわりのあるタイプだから、お互い折り合っていくと、どうしても物は増える。じゃあ、面倒くさいから一人がいいかというと、またそれは違う。だとしたら、パートナーとの関係を結び付ける物は「必要」なものではないか。

サバイバルと必要なもの

ペトリの一年の実験。幸せになるには、物は必要ないという、まあ、ありきたりの結論で終わったようなんだけど、いまいち、スッキリしないのは何でなんだろう。本当にゼロからのスタートだったけど、食料は届けてもらっているところとか、服やマットレスがそろった、かなり早い時点でマックブック(PC)を持ってきているところとか。テレビがなくても、ネットがあれば楽しめるしね。

厳密に言えば、追い詰められていないというか余裕のある実験に見えたからだろうか。そういう意味で言えば、よくあるテレビの「企画」にも見えてきて、その辺はちょっと冷めるようなところがあったかな。
なぜなんだか、ペトリの実験を見ていて、さいとうたかおの「サバイバル」を思い出していた。無人島で一人投げ出された少年にとっての「必要」なものは、本当にわずかしかなかった。

無人島で、本当にゼロから生きていくことになれば「必要」なものっていうのは「生きていく」ためのものだろう。まずは食物、あらゆる手段で食物を得ることに尽きる。食物を得るための仕掛けを作ったり、武器を作ったりが最優先。服は二の次だ。そして寝ぐらを作ること。これがあれば便利・・というような「ほしいもの」は、ほとんどなくなるだろう。あのリアル感がよみがえった。

それと比べると、半裸でマックブックをいじりながら暮らすペトリの姿は切迫感を欠いていた。しかし、発想は面白い。よく、使わないものを箱に入れて1年使わなかったら捨てるというライフハックがあるけど、それを、そのまま生活実験にしてしまったアイデアは秀逸だ。そういう意味ではもうちょっと撮り方とか、編集の仕方とか、工夫次第では面白くなるのかも。

海外ドキュメンタリーって、つながりが全然わからないカットが入ってきたり、いろいろな人のコメントが五月雨式に入ってきたり、筋を追いづらいよねぇ。NHKの丁寧(すぎる?)ナレーションに慣れ過ぎているからなのかもしれないけれど、面白そうな番組の設定の割には期待外れだった(本音)。

まあ、本当に「必要」なものって何だろうって思いながら見たけどね(それが制作者の狙いだから、それでいいのかも。)

#ミニマリスト #BS世界のドキュメンタリー #365日のシンプルライフ #NHK  

大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq