見出し画像

己に恥じない生き方を「杉原千畝・スギハラチウネ」主演:唐沢寿明

予備知識ほとんどゼロで見始めた映画。Amazonプライムビデオだからこそ見た映画だ。見終わった感想から言えば、第二次世界大戦開戦直前~戦後までの世界史が一通り頭に入っていないと、スッキリ楽しめない感じはした。(それなりに関心はあって、年表なども買って読んでいるんだけど、まだついていけない感じだった。そして、かなりの部分が英語で字幕だった。)

杉原千畝のことを日本のシンドラーと呼ぶ人もいるけれど、彼がどんなことを思い、ユダヤ人とどのように関わったか歴史の1コマとして学習できたのは収穫だったかな。

杉原千畝・スギハラチウネ(あらすじ)

1939年に杉原千畝(唐沢寿明)はリトアニア領事館に赴任することになる。千畝はポーランドから亡命してきたペシュと共に、諜報活動を行い、ヨーロッパ情勢を分析して日本に送り続けていた。
やがて、第二次世界大戦が勃発するとナチスの勢いは増し、ナチスはユダヤ人を迫害し始め、ユダヤ人は国外に避難しようと日本大使館にビザの発給を求めて押しかける。千畝は日本政府の了承を得ないまま、ビザの発給に踏み切り数千人ものユダヤ人の命を救う決断をする。

海外から見た戦前・戦中の大日本帝国

杉原千畝の活動に関しては諸説あるらしく、私は知識がないので何とも言えないんだけど、海外に赴任していた外交官の目から見た戦況は興味深かった。日本にいると見えないものが、海外にいる人たちからは見えていたのだと分かるシーンがある。

千畝が駐ドイツ大使と本音で話し合うシーン。千畝が諜報活動の末、必死でつかんだ情報(ドイツがソ連との不可侵条約を破って戦争を行う)を日本政府は重視しない。落胆した千畝は、戦争がどうなっていくかを予告する。「ドイツがソ連と戦争することになれば、ドイツは日本を守る余裕はなくなる。日本がアジア進出路線を変えなければアメリカと戦争することになるだろう。そうなれば日本は負ける。たくさんの死者が出ることになる。」

だいたい同じ時期に、同じような情報をつかんでいたスウェーデンの外交官・小野寺氏も、同様の予測を立てていたのが興味深い。彼も外交官とは表向きの顔で諜報活動に励んでいたのを思い出す。

また、この時期に日本で戦争を食い止めようとしていた白洲次郎や吉田茂なども、海外にツテがあったからこそ、アメリカと戦争をするのがどれほど愚かなことなのかが分かっていた。

参考:プリシンプルを追い求めた男の群像【NHK】ドラマスペシャル「白洲次郎」
参考:戦後の日本復興を創った男の外交力【NHK】負けて、勝つ、吉田茂

戦争に巻き込まれている日本の中で、世界の中での日本の立ち位置を正確に見極めることができていた人は多くはなかったかもしれない。客観的な視点の大切さを学べる。

己に恥じずに生きる

杉原千畝は自分の特権を活用して、ユダヤ人にビザを発給した日本経由でアメリカに行けるようにしたのだ。日本政府に問い合わせ返答が来るわずかのスキマを縫い(領事館が閉鎖になる間際だった)2000枚以上のビザを発給したのだ。戦時の混乱に乗じてという感じだけれど、目の前の人を助けるために、決断に踏み切った姿は潔い。

千畝が領事館で働いていたドイツ系リトアニア人と交わす会話が印象的だった。「世界は車輪のようだ。今はヒトラーは上にいるけれど、全く状況は変わるかもしれない。車輪が回った時に恥じない選択をしたい。」うむ、、、世界は車輪か。覚えておきたい名言だ。驕る平家は久しからず。栄枯盛衰。状況が変わった時にも、人として大切なことを守り続けた人として知られるなら、どれだけ意味のある人生だろうか。

諜報活動の相棒だったペシュも別れ際にこう言う。「あなたは最低の外交官だ。でも最高の友達だ。」そんな風に言われたい。

感想まとめ

杉原千畝が救ったユダヤ人は4000人以上(6000人とも言われる)、そしてその子孫たちが4万人以上いるという。目の前の命に向かい合った人として尊い生き方をした千畝。しかし、救ったユダヤ人の科学者たちが亡命先のアメリカで原爆開発に携わり、その結果数万人の日本人が死んだ。これもまた事実。それもまた皮肉なことだ。戦争における勝者ってのはいないのだ。

千畝は、世界を救いたいと考えていた。日本が戦争に巻き込まれるのも防ぎたいと考えていた。彼もまた、時代に翻弄された一人の人だった。個の力では抗えない波もある。せめて、車輪が回った時に恥じない生き方をしたいと思うのみだ。

#唐沢寿明 #小雪 #映画 #戦争映画 #スギハラチウネ #杉原千畝

大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq