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サピエンスという種の消滅は近い ETV特集:「サピエンスとパンデミック 〜ユヴァル・ノア・ハラリ特別授業〜」

NHKのこの手の番組(知の巨人へのインタビュー・講義)は好きで見てしまう。今回は「サピエンス全史」を書いた歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリが高校生の質問に答えつつ、彼の理論をもとにしながらパンデミック後の人類の発展の可能性について語る。高校生たちは、皆、彼の著作(漫画版)を読んで予習してきていた。

正直なところを言えば、コロナ危機のさなかで、具体的な情報(解決策)には乏しい講義だと感じたんだけれど、名前だけはよく聞くユヴァル・ノア・ハラリ氏の主張を短い時間で知ることができて良かった。

ストーリーを信じること

身体的な能力の点では秀でたところがない種であるサピエンスが地球を支配するようになったのは、大人数で協力することができるようになったからだ。チンパンジーは1000、1万、1億頭集まっても、集団で協力して何かを成し遂げることはできない。しかし、人類は共通の理念を持ち、それをもとにより合わさることができる。

互いに協力することができるようになったきっかけを、ハラリ氏は「認知革命」という言葉で表現している。人類はフィクションを信じることができる力を手に入れた。それは目には見えないものを信じる力。例えば、神の存在。~~を行わなければ神罰が下るというストーリーを信じ、それに沿って協力するようになったのだ。

この世界を結び付けているのはストーリーなのだ。ハラリ氏はお金でさえストーリーだと説明している。今や流通しているお金の90%はコンピューター上にある単なる数字だ。しかし、それに価値があるというストーリーを皆が信じているからこそ、世界は経済活動において一致しているのだ。

もっとも、コロナ禍の中で、これまで信じられてきたストーリーの粗が色々見えてきているので、人類は新たなストーリーを選ばなければならない転換点にいるのかもしれない。

人類は「神」で「動物」

この地球において、絶対的な支配権を持つという意味で人類は「神」だ。動物たちの命をどのようにも操作できるようになっている。しかし、人類は、自分自身が持つこの力に無自覚だった。無責任にその権力を用いることにより、生態系を破壊してきた。感染症でさえ、人類が環境を破壊し、野生動物と人類との不必要な接触が生んだ悲劇なのだ。人類は自分たちが持つ力と、その影響力を自覚しなければならない。

同時に、生態系の一部において人類は「動物」であるということを忘れてはいけない。生態系と人類の存在は結びついているのだ。自分たちの持つ絶対的な力を自覚しつつ、自分たちがこの地球に住まわせていただいている存在であることを忘れぬ謙虚さが必要なのだ。

サピエンスという種の消滅

ハラリ氏は2100年までにサピエンスという種が消滅するというシナリオを予言する。2種類のシナリオを予測することができるだろう。

1つは、人類が暴力的な兵器を乱用することで、自らを滅ぼしてしまうという結末だ。核兵器に代表されるように、人類は自らの存在を脅かす兵器を作ってしまった。使えるものを使わないで済むほど、人類はセルフコントロールのできる存在ではないのだ。

先日、流し見していた映画。世界の終わりを描く4つのシナリオ。最後のオチは、科学実験によって作り出したブラックホールに地球が飲み込まれるというものだった。前項のように、まるで神のような力は持つのに、先を見通すだけの知恵がないというのはブラックジョークじゃすまない。

とはいえ、ハラリ氏は、人類が絶滅するより現実的なシナリオがもう一つあると説明する。そもそも、ハラリ氏は「絶滅」という言葉を使ってはいない。サピエンスという種が「消滅」すると言っているのだ。

そのシナリオとは、人類が新たな「種」になるというものだ。科学技術、AIの発達、および生物工学の進歩により、人類は自らを新たな種に作り替えるのではないかとハラリ氏は考える。100年後の子孫たちは、今の人類とは異なる見た目、機能を持つ種として、新たに地球に住まうことになるのだ。半分、機械のサイボーグみたいなものかね。

もちろん、ハラリ氏は予言者ではない。人類史を研究してきた歴史学者として、人類の未来の展望を述べているだけなのだ。実際には何がどうなるかなど、誰にも分からないのだから。

感想まとめ

うん、あんまりコロナ禍、パンデミック関係ないなと思ってしまった。ちょっと哲学的過ぎるというか、抽象的であまり響かない講義だったのだけれど、ハラリ氏が述べた次の言葉だけは、けっこう響いた。

「人類の愚かさを決して見くびってはいけない」

これまで、人類は多くの危機を経験してきた。様々な選択をしてきた。そして、その都度、致命的な過ちを犯してきたという。ちょっと救いようがない結論だけれど、これが人類歴史学者の達観なのである。

どちらかというと、BS1スペシャルの「コロナ危機・未来の選択」の4人の学者の話のほうが現実味があって面白かった。

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq