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成り行きの人生哲学【NHK】最後の講義「大学学長 出口治明」

各界の第一人者が人生最後に伝えたいことを若者たちに伝える講義形式のドキュメンタリー「最後の講義」に、読書家なら知らない人のいない出口治明氏が出演した。私も出口氏の本は何冊か読んだことはあるが、講義を聞くのは初めてだった。学生になったつもりでノートを取りながら聴いた。

出口氏と言えば、60歳でライフネット生命を起業し、70歳で立命館アジア太平洋大学(APU)の学長になった人だ。相当の読書家としても知られ、これまでに1万5000冊を読破し、多忙な中でも月40冊を読むこともあるという。映し出された書斎は本の山だった。

成り行きの人生哲学

出口氏の華々しい経歴を聞くと、高い目標を立てて一心不乱に走ってきた人のような印象を持つが、話を聞くと印象が180度変わった。出口氏いわく「川の流れに流されるような」人生だったとのこと。

大学時代に友達に誘われて司法試験を受けようとしたが、たまたま滑り止めで日本生命に勤めることになる。やがて還暦になってライフネット生命を起業するのだが、これも偶然声をかけられたから。APUの学長に至っては、推薦されたので面白いで受けてみたので受かっちゃったのだそう。ただ、流されて、ここにやってきたのだからと、そこで全力を尽くすのが出口流だ。

その哲学の背後には、影響を受けた本ダーウィンの「種の起源」がある。進化論は、出口氏に言わせると「何が起こるかわからへんで」という説なのだ。分かりやすすぎるw 強いものが勝つのでもなく、賢い者が生き残るのでもなく、すべては「運と適応」なのだ。

どこに流れていくか分からない(運)が、その場、その場で全力で自分にできることをする(適応)。そんなことをしているうちに、気がついたらAPUの学長になっていたという。流されるままというと、だらしない感じだけれど、その背後に、出口氏のプリンシプルがあったことに気づいた。

まずは「イエス」から始める

出口氏の人生の転機は、すべて人からもたらされた。出口氏の「人脈」にあこがれる人もいるだろう。いったいどうやって「いい人に出会うのか」。そんなこと誰も分からないと、出口氏は言い切る。ただ、流される出口氏が大切にしていることがある。それは誘いを断らないこと。どんな誘いも、まずは受けてみる。YESから始めるのだ。

行ってみて、つまらなかったら「お腹が痛くなりましたんで」と帰ってくればいいという。まさに、このスタンスで、あらゆる人と会い、あらゆる本を読みまくる。ちなみに、出口氏はジャンルを問わず何でも読むけど「最初の10頁」の関門がある。

出口氏の著書に面白いエピソードが出てくる。

「サラリーマン時代に、上司から「これを読め」と言って、本を薦められたことがありました。しかたなく「最初の 10 ページ」を読んでみたら、まったくおもしろくない。「最初の 10 ページで判断する」のがマイルールなので、僕はその本をすぐに閉じました。」

「後日、上司から「どうだ、読んだか? おもしろかっただろう」と聞かれたので、「少し読みましたけれど、おもしろくないので読むのをやめました。おもしろくない本は読みたくありませんので……」ときっぱり答えると、それ以降、本を押し付けられることはなくなりました。」

何でも受け入れるんだけれど、面白いか、面白くないかの軸はぶらさない。面白くなかったら、すぐに切り捨てるのだ。この思い切りがすごい。流されて生きているようで、決して流されない強さもある。なんでもイエス!から入るのだけれど、ノーの言える日本人なのだ。

世界を見る3つの視点

講義の中で印象的なのが、この世界を読み解く時の3つの視点だ。

タテ:歴史
ヨコ:世界
算数:ファクト(事実・数字)

実例として、夫婦別性に関する議論が取り上げられた。タテ:歴史を見ると、日本は過去には夫婦別性の国だったことが分かる。ヨコ・ファクト:世界を見ると、夫婦別性を頑なに守っているのは日本「1国」しかない。この3つの仕方で一つの論議を見ると、本質的な議論ができるのだという。

話は日本のGDPの低下に移り、障害を持つ人の社会進出・ダイバーシティに及び、腰が重い企業の存亡について語られる。とっさの質問にも、ファクト(数字)を使って、巧みに論じていく様は、さすが教養人という感じだった。一般公募からAPU学長に選ばれたのも分かる。

熟成される知識

70歳を越える出口氏の言葉は重みがある。話を聞いている若者たちは20代初めくらいだろうか。若い時代も、いろいろなことを考えて勉強をするものだけれど、やはり人生経験には重みがある。たとえ1年であっても、学ぼう・成長しようとしている人は大きく進歩する。ましてや、60年以上、本を読み続けてきた出口氏である。

「最後の授業」には、これくらいの重鎮が出てくれると学びごたえがある。これまで、出口氏の本は何冊か読んでいたけれど、この機会に改めて読み直した。すると、出口氏の語り口調で脳内で本の内容が再生されて、スラスラと読めたし、読むだけでは腑に落ちなかったことがストンと落ちた。これも、また面白いね。

本+映像+本で学ぶ楽しみも味わってしまった。

NHKの番組は、Amazonプライムで見られるぞ!(最後の講義は時間が経つと消えてしまうので、今は見られないけど再放送に期待したい)

NHKオンデマンド(Amazonプライム)


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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq