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マインドフルネスによる創造性向上は思考と学習に影響を与える:生徒の創造性を育むマインドフルネス

 「”判断しない、瞬間瞬間の気づき”の状態」と定義されるマインドフルネスは、創造性を向上させることがあきらかとなっており、海外では教育現場への応用について議論されることが多くなっています。
 この記事では、「Mindfulness and creativity: Implications for thinking and learning:マインドフルネスと創造性:思考と学習への影響(参考・引用1)」をもとに、マインドフルネスが教育現場に対してどのような影響を与えるのか、今後どのような教育現場になることが望まれるのか、その最新の知見を紹介します。

■ マインドフルネスは創造性を高める

 マインドフルネスには、リラックスさせる、集中力を高める、批判されることへの恐怖を減らすなどの効果が認められています。

マインドフルネスは、人の集中力を高め、批判されることへの恐怖を減らし、回避的な自己意識による思考を減らしながら、オープンマインドな思考を高めることが研究で実証されている。

 一方で創造性を高めるには、高い集中力や広い視点をもつことが必要となります。上述したように、マインドフルネスは創造性を高めるために必要な能力を改善させるため、結果的に創造性を高めることにつながると言われています。

マインドフルネス・トレーニングによって促進されるスキルの多くの側面が、創造性を高める。例えば、マインドフルネスは、共感とオープンマインドを広げることによって、視点を変える能力と関連している。また、創造性の核心である非習慣的な方法で状況に対応する能力も高まる。マインドフルネス・トレーニングには、判断への恐怖を軽減する効果があり、ワーキングメモリを向上させる効果もある。
マインドフルネスは創造性を支えるスキルや在り方を構築することで、創造性を改善・向上させる効果が期待できる。

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■ マインドフルネスが生徒の学習・創造性に与える影響

 創造性を高めるために最も障壁となるのは、不安や失敗への恐れなどのネガティブな思考です。それらの障壁を壊すことで創造性をより高める効果が期待できるため、マインドフルネスは有用と言われています。

 一方で、新たなアイデアを発言する際に、批判されることや変な目で見られるたりすることを恐れている学生が多いと報告されており、学生たちはプレッシャーを感じていると考えられます。そのようなプレッシャーを軽減する方法の一つとしても、マインドフルネスは有用であると言われています。

創造性を阻む最も顕著な障壁は、恐怖心か判断力、あるいは判断力に対する恐怖心であり、これは学校環境にある学習者にしばしば見られる。創造性は本質的に社会的なリスクをもたらすものであり、人々はしばしば、批判されたり、奇妙に思われたりすることを恐れて、新しいアイデアを提供することに不安を感じると報告している。K12や高等教育における学生の社会的プレッシャーを考えると、創造的な環境は、判断に対する恐れや不安を軽減することが重要である。マインドフルネス瞑想の無批判の気づきは、それを支える重要なスキルである。

 実際に、高校生を対象として研究により、マインドフルネストレーニングを行なった生徒のほうが、そうでない生徒よりも創造性が高いことが示されています。

マインドフルネストレーニングプログラムに参加した高校生と、そうでない対照群からなる実験グループを用いた。10週間のマインドフルネス介入(週1.5時間のトレーニング、毎日30分の瞑想)後、Torrance Testの結果、介入群で創造性のレベルが有意に高いことが示された。

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■ 現状の教育現場における課題

 ここまで、生徒の創造性を育むために、マインドフルネスが有用であることを紹介しました。しかし、現状の教育現場においてマインドフルネスを活用していくには、まだまだ課題が多いようです。

 伝統的な教育現場の多くは、失敗のリスクを嫌っています。そのため現状の教育現場では、創造性という概念はあまり扱われていません。

 また創造性を育むには、正解のない課題に取り組むことが必要になります。しかし、現場の教師は正解のない課題を生徒に課すことに不安を感じているようです。

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■ マインドフルネスにより生徒の創造性を向上させるために必要なこと

 前章で、現状の教育現場でマインドフルネスを活用することにはまだまだ課題が多いことを紹介しました。では、教育現場でマインドフルネスを活用し、生徒の創造性を育むためにはどんなことが求められるのでしょうか。

 考えられる方策として、教育者に対してマインドフルネスが有用であることの啓発活動が挙げられます。より具体的な効果や方法について啓発することで、実際の教育にマインドフルネスをどのように活用し、それにより生徒に対してどのようなメリットがあるのか、教育者がイメージしやすくなります。

教育者にとっては、マインドフルネスと創造性に関する研究が、実世界の文脈、特に学習環境に組み込まれることが極めて重要である。これは、これらの構成要素の交わりをその場でより深く理解すること、つまり、研究室やテストの状況を超えた「野生の」マインドフルネスと創造性をより強固に理解することにつながるだろう。

 またマインドフルネスと創造性の関係はとても複雑であり、まだまだ明らかになっていないことも多いのが現状です。研究者には、教育者が具体的にイメージできるように、実際の教育現場に近い環境でのさらなる実証研究が求められます。

異なる役割や異なるモデレーターを十分に理解することに関して、文献にはギャップがある。マインドフルネスと創造性を実践的な教育現場に適用するためには、より持続的で応用的、継続的な研究が必要である。

■ まとめ

 ここまで、マインドフルネスが生徒の創造性に与える影響と現状の教育現場における課題、その解決策について紹介してきました。経済や文化を発展させていくためには、高い創造性が不可欠です。また創造性を学生のうちから高めるような教育をすることは、学生の未来を広げるためにもとても重要ですよね。その創造性を高める一つの方法として、教育にマインドフルネスを活用が有用であることが示されています。教育現場におけるマインドフルネスの活用についてはまだまだ課題が残りますが、研究と実践がさらに進み、学生に対する教育がより良いものになっていくことが期待されます。

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参考・引用文献:
1:Henriksen D, et al. 「Mindfulness and creativity: Implications for thinking and learning」, Thinking Skills and Creativity, 37, 2020.

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