印象残欠

 ひたひたと水が半分ほど満ちた白い部屋に、わたしは滑空して訪れる。はばたけない身でありながら滑空で訪れる理由は知るべくもない。水が海水であること、そこが入り江の岩場であることは知っているが、なぜそこにこのような白亜の――グランドピアノさえある世界が――広がっているかは杳として知れない。
 そして潮が満ちる。行き場を失って溺れるところで目覚めた。

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