きっかけはドラゴンボール?旅するお葬式"旅葬"誕生秘話 後編
座席の側にお棺を安置することが出来る専用バスを使って、想い出の地を巡る新しい葬儀サービス「旅葬」。
果たしてこのサービスをお客様にお選びいただくことは出来るのか!?選ばれたとして、ご満足いただくことは出来るのか!?全く新しい「旅葬」という葬儀サービスについて、NOTEでご紹介していきます。
今回は、旅葬の発案者であり、めもるホールディングス代表取締役である村本へのインタビューの後編です。
プロフィール
株式会社めもるホールディングス 代表取締役 村本隆雄
1972年7月生まれ
祖父が創業した葬儀社に入社後、葬儀部・生花部などに携わる。
2011年代表取締役就任
前編はこちらからお読みください。
きっかけはドラゴンボール?旅するお葬式”旅葬”誕生秘話 前編
ーー旅葬というサービスを開発するにあたって、はじめに着手したことを教えてください。
村本:まずは、座席の横にお棺を安置する場所を備えたバスを作れるかな?っていうのを、うちがお世話になっている霊柩バスの会社を訪ねて相談したのがスタートだよね。そういうバスを作れるか、作れないかというところから。
ーー北海道の一般的なお葬式で使われている霊柩バス(バスのトランク部分にお棺を納めることができるバス)を使おうかなという発想は全く無かったんですか?
村本:無いですね。なぜかというと、故人が床の下に入っちゃうから。そんなバスではちょっとだめだよね、っていうのがあって。
ーー社長以外の誰かが旅葬を思いついたとしたら、既存のバスでやろうとする可能性があるのかなと思います。
というのは、ウィズハウスを立ち上げた時の社長の思いをお聞きしたからかもしれません。社長は葬儀の際、ご家族が色々と忙しくされていて、故人様とゆっくりお別れができないということに対して、「それじゃあだめなんじゃないかな」という思いを持ってウィズハウスを作ったとお聞きしました。
※めもるホールディングスが運営する『ウィズハウス』は、故人様と一緒に過ごす時間を大切にしていただくための家族葬ホールです。
社長のお話をお聞きしていると、「故人様とご家族が一緒に過ごす」ということについて、常に心を砕いていると感じます。
それはやはり、葬儀の現場で働いていたから培われた感覚なのでしょうか?
村本:多少なりともそれはあるよね。あるね。
ーー私はめもるホールディングスに入社するまで、全く葬儀に関わらずに人生を歩んできました。そのせいか、亡くなった人と「一緒に過ごす」ことの意味があんまりわからなかったんですよ。
でも去年父が亡くなって、その時に初めて、最期の時間を一緒に過ごしたいという感覚を実感しました。
社長はそれまでにどなたか大事な方を亡くしてそういう感覚があったのか、そうではなくて職業として携わっていたからそれを見てきたからなのか。どちらだと思いますか?
村本:自分の両親はピンピンしてるから、そういった意味では仕事を通じてだよね。
ーー葬儀担当者としてお客さんの様子を見ていて、ということでしょうか?
村本:仕事として葬儀に関わりながら、自分の親が死んだ時とリンクさせて、想像して、「こういう風にやるべきだよね」とか「本当はこんなの遺族さんは望んで無いんじゃないの?」とか考えていた。
そう考えていたからウィズハウスができた。以前のお葬式は故人さんそっちのけで家族はめっちゃ忙しい。これで本当にいいの?みたいな感覚があって。じゃあわずらわしいことは無くしちゃって、ウィズハウスみたいなのでいいじゃんって。
ーー社長はご自身のご両親を送ることまで想像して、葬儀の仕事をされてきた。誰かにそうしなさいよと言われたわけでもないのに。でもビジネスなので、利益も上げなければいけない。
「お客様のためになるように」という思いと「利益を上げないといけない」という思いの間で、葛藤を持ったことはないですか?
村本:ありますよ。
ーーその葛藤にはどう対処していたのですか?
村本:経営する立場になってからは、理想と現実のバランスを取ることを意識しています。現場にいた頃もどちらも考えてはいたけれど、どちらかと言うと理想の方を意識して仕事をしていた気がするんだよね。
やっぱり葬儀屋さんのモチベーションって、お客様から最後に「ありがとう」っていう言葉をいただくこと。ただ、たいがいの葬儀って「ありがとうございました」って言ってもらえるんですよ。クレームとか、よほどのことが無い限りは。なんだけど、その「ありがとう」の向こう側はどうなのかと。お客さんは「葬式ってこういうもんだ」と思ってるから、「ありがとうございました」って言ってくれるけど、僕からするとお客さんみんな忙しい思いして、ヘトヘトで疲れてるのに、葬儀屋さんに「ありがとう」って言ってる。ん?って思うんですよ。「本当に満足してくれてるのかな?」って。
ーー満足されていたとは思いますけどね。
村本:してるんだよ、してるんだけど、こっちから見ると、やっぱりいろんな葬儀の中で、みんな忙しい思いして、故人さんそっちのけで時間が過ぎて行って、それでも「ありがとう」になってるから。これさ、やり方を変えたら、みんなで「良かったね」って言い合える葬儀に変わるんじゃないかなって。そういう感覚。
でもそれってお客さんも経験したことが無いから。やってみてはじめて良いと思う。家族葬が8割、9割に増えちゃったっていうことは、そういうことだと思うんだよね。
ーーそういう思いを持ちながらお仕事をされてきて、今回旅葬を立ち上げたいなって思われて。ただ新サービスには失敗するリスクがあるわけじゃないですか?
村本:僕はリスクをリスクと思わない。リスクって僕にとっては栄養なんですよ。モチベーションになるんだよね。これがうまくいくかどうか全くわからない。周りの人に相談しても、「やめとけ」とか言われる。その「やめとけ」と言われることが栄養なんですよ。
例えば10人に相談して9人が「やめとけ」と言うってことは、9人はそこに挑戦しようとしないということだから、ある意味チャンスなんですよ。その逆で9人が「めっちゃいいじゃん!」って言ったら、この人たちみんな挑戦するなと。
ーーそういえば、新しいアイデアを出した時にみんなが賛成するものはだめだって言う説を、何かで目にしたことがあります。
ではもし、「旅葬やります」って言って「いいですね!」ってみんなが賛成したら、社長はどうしたのでしょうか。
村本:モチベーションは下がっていただろうね。だからやめようとはならなかったかもしれないけど、モチベーションは下がってた。
ーー反対されたことで、「よしやろう!」とモチベーションが上がったわけですね。
旅葬が始まって、実際に数組施行されました。お客様の感想をお聞きになってどう思われましたか?
村本:ほらね?って(笑)。
ーーみなさんやっぱりすごく満足されてるんですか?
村本:満足はしてくれてるし、満足の次元が違うと思うんだよね。
葬儀って、故人を送るためのもの。旅葬は故人と一緒に過ごすためのもの。同じ満足でも、「いい葬儀で送ってあげることができた」という満足と、「いい時間を一緒に過ごせた」っていう満足って違うと思うんですよ。葬儀ってもちろん、亡くなった人を送るためのものなんだけど、同時に、自分達の為のものでもあるんですよね。
座席のかたわらにお棺の安置場所を備えたバス「巡輪偲」で、想い出の地を巡ったり、会いたい人を訪ねたりすることができる旅葬。詳しくはホームページをご覧ください。
「旅葬」公式ホームページ
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