こころをダイジェスト 2話 夢

注:本 noteはNetflixオリジナル作品「こころをダイジェスト」の解説になります。そのまま読んでもいいですが、一度作品を見てからの方が楽しめると思います。レビューはこちら

導入

古来よりあらゆる文化で夢は神の予言や警告であると考えれられてきた。
そのための夢の内容を解釈する夢占いが長い間、広い地域で定着していた。
夢は何のために見るのだろうか、夢に意味はあるのだろうか。

夢を見ている時の脳はどうなっているのか?

昔は夢は起きた瞬間にできるものだと考えられていた。
だが現在では、夢は起きた瞬間ではなく、寝ている間の体験であることが わかっている。

眠りに落ちる際、ニューロンが激しく活動し、ランダムな脳波を作り出す。
次第に眠りが深くなるにつれ、その波も穏やかになっていく。
しかし、1時間半もすると再び脳が活性化しだす。
脳波は眠りながらも覚醒時と同様の、運動や会話の信号を示す。
だが、脳幹の(pons)は静止しているため、運動の信号は体には伝わらず、目以外は動かない。裏を返すと目だけは動いており、瞼を閉じた状態でも 目玉だけは高速でギョロギョロと動いている。
その様子からRapid Eye Movement Sleep 略してレム(REM)睡眠と呼ばれる。

レム睡眠の間は、夢の中の状況通りに目が動く
球技の夢を見ているなら、球を追いかけるように目が動き、
階段を登っている夢なら上へ上へと目が動く。
まれにレム睡眠中も脳橋が働く人がおり、目だけではなく、
体が動いてしまうという病気がある。(レム睡眠行動障害

注:本作では触れられていないが、夢遊病とはまた別の病気である。
夢遊病はノンレム睡眠、つまり深い眠りの間に起こるため、名前とは異なり意外にも夢を見ながら行動しているわけではない。

レム睡眠状態の脳は、起きている時や寝ている時の、どの状態とも異なる。
まず論理的思考を担う前頭前皮質が休止しているため、論理的な思考をすることができなくなる。
逆に感情を担う内側側頭葉は起きている時よりも激しく活動する。
そのため夢の内容というのは往々にして目茶苦茶になりがちである。

夢を好きに操る方法

夢は通常、制御不能だが、自分が夢の中だと気づくことができると、映画のインセプションのように、好きなように夢を操ることができる。
この状態の脳は前頭前皮質が覚醒し、論理的に思考することができている。

やり方だが、まず見た夢を日記に記録し、夢の傾向や性質を把握する。
そして今の状態が、夢か現実かを自分に問いかける。普段から今が夢か
どうかを考えることをにすることで、夢の中でもこの問いかけをすることができる。

夢を見ない、もしくは覚えていないという人が居ると思う。
夢を見ないという人でも、実は睡眠の20%の時間は夢を見ているのだが、ただほとんどの内容を忘れているだけなのである。
夢の内容を覚えていたい人は、寝る前に水をたくさん飲むといい。
夜中に目が覚めるため夢の内容を覚えている機会が増えるだろう。

夢に意味はあるのか?

長い間、夢の内容は予言のようなものだとと考えれられてきた。
だが、1899年にそれまでの定説を覆す2つの研究が発表された。

一つはサンティアゴ・ラモン・イ・カハールが発表した脳の基本単位は
ニューロンであるという説である。
ニューロン内の情報の伝達は電気信号によるものであり、後の研究で脳に 電気を流すと、突然ビジョンが見えるという実験が行われた。
それは、ランダムな電気信号の嵐が見せる夢と同一であると考えられ、
夢とはランダムな脳波が見せる無作為で無意味なものだ、という説である。

一方でジークムント・フロイドは、夢は潜在意識の欲求を表していると主張した。夢の中で見たものは、自分が潜在意識で求めているものであり、共通のシンボルをデータベース化し分類することで夢診断ができると考えた。
ちなみに、フロイド曰く性的な意味合いを持つシンボルが多いそうだ。
カール・ヤングもフロイドの説を支持したが、共通のシンボルが持つ意味は、フロイドの言うような性的な意味ばかりではないと主張した。

しかしながら、夢の中のシンボルに共通の意味があると言う理論は、現在 では支持されていない
だが、この考えは夢はお告げである、という考えから大きく進歩し、
世界中で夢の内容に関する調査が行われ始めた

その結果、夢の内容の多くは覚醒時の記憶と深い結びつきがあることがわかった。テトリスを長い時間プレイすると、夢にもテトリスが表れやすい、という研究がある。また、記憶障害の人にテトリスをプレイさせ、プレイしたことを忘れていても、夢の中にテトリスが登場したと言う報告もある。

夢の未来

夢は今後、学習にも利用できるようになるかもしれない。
被験者に迷路を解かせた後に睡眠を取らせ、夢を見ている間に起こすと、 迷路の夢を見ている人が幾らかいた。その状態で再度迷路を解かせると、 迷路の夢を見ていた人は、夢の途中で起こされず、ただ睡眠していただけのグループに比べ迷路を解く能力の向上が見られたのだ。

夢は記憶を補強するだけでなく、忘れることにも関わってくる。
レム睡眠中は脳内の不要な情報を消す作業も行われており、過去のトラウマや辛かったことを忘れる助けにもなる。

レム睡眠の間は脳が夢という物語を作り出す。夢は論理に縛られない自由で新しい発想をもたらしてくれるかもしれない。

まとめ

・夢を見ているのはレム睡眠で、論理的思考は休止し、感情は起きていると時よりも激しく働く。

・明晰夢を見るには夢の傾向を把握し、今が夢か現実か常に問いかける。

・夢は深層心理を表しているかもしれないが、共通のシンボルがあるわけではない。むしろ夢は深層心理よりかは、記憶と密接に関係している。

・勉強中に寝てしまっても、夢で勉強してました、と言い訳できるかもしれない。

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