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フォルケホイスコーレってどんな場所?


さて、わたしが通ったフォルケホイスコーレ。
今日はその概要を振り返ってみたい。

帰国してから会う友達に
「デンマークで何してきたの?」と聞かれるたび
「いっぱい遊んだ!」と答えているわたし。

幼稚園での、子どもたちの遊びが学びなように、
わたしも遊びながらたくさんのことを学んだ。

そんな場所、フォルケホイスコーレ。

しかし、フォルケをひとつの言葉で表すのは難しいし、十人に聞いたら十通りの答えが返ってくると思う。

そこで今回は、2つのフォルケに通ったわたしの視点から、フォルケホイスコーレはどんな場所なのかを考えたい。

フォルケホイスコーレとは、北欧独自の教育機関です。
フォルケホイスコーレの特徴は、試験や成績が一切ないこと、民主主義的思考を育てる場であること、知の欲求を満たす場であることです。
加えて、全寮制となっており、全員が共に生活することなども代表的なフォルケホイスコーレの文化です。教員も各校数人は敷地の中に自宅があります。

一般社団法人IFAS HPより

17.5歳以上であれば入学できる

フォルケに来るタイミングは、高校を卒業してすぐ、大学を休学して、一度仕事を辞めて、など人それぞれ。

日本では、義務教育修了後に高校や専門学校、大学に進学し、就職する人が多い。わたしももれなくその道を辿ったが、他に道があるとは思ってもいなかった。(正確には、他の道もあると知ってはいたが、自分ごととして捉えていなかった、どこかの誰かの話みたいな)

しかし欧米の大学で活用されているギャップイヤーは、近年日本でも認知度が高まっていると感じる。

ギャップイヤーとは、高校卒業後や大学在学中、就職前などの期間を自己研鑽や社会体験に充てること。

実際フォルケに来ている人の年齢は様々であった。年齢が異なることが前提の場だからなのか、年齢を気にしないという文化なのか、自己紹介で年齢を言わず、後になって知ることもしばしば。
年齢というフィルターを通さないからこそ、まっすぐにその人を見ることもできた。(年齢を知っていても、そうでありたい)

それぞれのライフステージも異なるため、経験してきたことやもっている悩み、考え方も異なる。そんな人たちと、みんなでひとつのことについて思いや考えを交わしたり、色々な生き方に触れたりする時間がとっても楽しかった。


これからどんなことを学びたいのか、
どんな道に進みたいのかを見極める。
わたしのしたかったことって本当にこれだっけ?と一度立ち止まって考える。
今まで頑張ってきた自分を労わる。

様々な思いをもった人たちと一緒に生活しながら学ぶ場所は、新しい出会いや発見に溢れていた。

試験や成績が一切ない

フォルケには試験や成績がない。
つまり、試験や成績のために学ぶわけではない。

「ここテストに出るよ」
そんな言葉に背筋を正される思いになった学生時代。しかし、ここフォルケではそんな言葉は一切聞かれない。

わたしが思うフォルケの授業の特徴は以下の通りである。
・教科書がない
・座学が少なく、体験を通して学ぶ
・一方的に先生が話すのではなく、学生との対話で授業がつくられていく

学ぶ内容として、自分の生活や仕事などと重なる部分が多く、過去を振り返って考えたり、未来に想いを馳せたりする時間がたくさんあった。だからこそわたしは、どの授業も楽しく、夢中になって学んだ。

それぞれのゴールは学生自身が決める。
わたしが最初に通ったフォルケのA subject(メインの科目)では、初回の授業の宿題として「最終日に自分の中にあるもの」を掲げ、それを達成するために自分ができることや周りの人に望むことを考えた。

フォルケでどんな時間を過ごしたいか、どんな経験をしてどんなものを得たいかは人それぞれ。
一律に成果を測らずとも、それぞれが学びに向かっていく。

わたしも自分の心の赴くままに、興味のままに、全力で感じたり考えたりした。

全寮制

フォルケは全寮制であり、生徒はもちろん、教員も同じ敷地内に住んでいる。

家と学校が同じ場にあり、友達もみんな同じところに住んでいる。だからこそ、帰る時間を気にすることなく、いつまでも話し続けた。
日中の授業での気付きやもやもや、日頃考えていること、過去のこと、将来のこと、家族のことなど、話題は尽きず、毎日夜遅くまで対話をした。
その時間が大好きだった。
バックグラウンドが異なる友達から見える世界。対話を通して色んな世界を知っていくことができた。


(余談)
寮は1人部屋と2人部屋を選ぶことができ、わたしは2校とも2人部屋を選んだ。

面白かったのは、それぞれのルームメイト同士がどことなく似ている雰囲気だったり、共通点があったりして、「ああ、この2人ね☺️」と、同じ部屋になるべくしてなった、そんな組み合わせ。

でも、他者との共同生活はそんなに簡単じゃない。生活する上での許容範囲も人それぞれ。育ってきた文化が違えば、自分にとっての当たり前も当たり前じゃない。(同じ国出身でも、家庭ごとにそれぞれの文化がある、自分の心地よさに国籍は関係なかったりもする)
誤解したりされたり、頑張って伝えようとしたり理解しようとしたり、時には我慢しようとして、でも限界が来たり、、、そんな葛藤を経験する人たちもいた。
しかし側からその様子を見ていると、「あなただから乗り越えられたね」そんな風に思ったし、当人も「今ここでこの経験ができて良かった」と、ひとつ大きくなったような表情。

(お酒やドラッグ以外の)細かなルールがないからこそ、それぞれが心地よく過ごせるよう、自分たちでルールを、生活を、つくっていく。
そのためには、自分にとっての心地よさは何かを知っていることや、相手を思いやったりすることるが必要であり、その過程もすごく貴重な経験だなあと思った。

お気に入りの景色、寮の部屋の出窓

幅広い科目

教科は、文学、歴史、心理学、環境、IT、コミュニケーション、教育、音楽、演劇、スポーツ、アウトドア、ダンス、絵画、写真、環境学、哲学、政治学、国際文化など多岐に渡り、学校によってフォーカスしている分野は様々です。

一般社団法人IFAS HPより


フォルケには多様な科目が用意されており、その中から自分の学びたい科目を選ぶ。

・アウトドア、マウンテンバイク、シーカヤック
・サスティナビリティ、ガーデニング、きのこ栽培
など、自分の好きなものを毎日選ぶ人もいれば、
考える科目と体を動かす科目のバランスを見て選ぶ人もいる。

同じ学校に通っていても、オーダーメイドの時間割なので、そこで学べることは様々である。

わたしは、好きな科目はもちろんのこと、日本にいたら挑戦していなかったであろうことや、やりたかったけどなかなか手を出せずにいたことを経験でき、すごく楽しかった。
(具体的には、アウトドアやバンド、ダンス、版画など)

社会人になってから行ったからこそ、
自分の生活を彩る趣味が増えた、そんな気がした。


進路を決める前にフォルケに行っていたら、幅広い科目を通して、自分の好きなことや苦手なことを知る一助にもなりそうだなと。

対話による授業

フォルケの授業は対話でつくられていく。
先生の中に、ここは伝えておきたいというポイントはもちろんあるが、そのタームごとに生徒が違えば、授業の中身も違う。
その人のバックグラウンドによって、考え方も異なり、対話をする中で生まれる人と人との化学反応によって授業が進んでいく。

先生たちは、生徒が安心して自分の考えを表せるような環境づくりする。

あるテーマに対して、自分の考えだけでなく、わからないことやもやもやしていることも含め、ありのままの思いを伝える。
それを受けて、他の誰かが経験を引っ張り出して話が広がっていったり、一緒にもやもやしたり、新しい視点での考えを伝えたりする。何が正解かは分からないが、「こうなのかな?」と自分たちなりの結論を出そうとするプロセスが、それぞれのタームごとに色があるのだろうなと。結論に向かうまでの過程に、その時の生徒の経験が重なり合っている感じ。

そして先生も突っ込んで聞いてくれる。
「なんでそう思ったの?」「この言葉はどんな解釈で使ってる?」と。
自分の中でふわっとしていることに気付き、改めて自分自身で考えたり、深掘ったりしていく。

最初は、「ここでわたしが発言しても、みんなにとって意味があるのだろうか」と思ってしまい、浮かんできたことを飲み込むこともあった。
しかし授業を受ける中で、「(人それぞれ違う経験をしてきているから)この考えはわたしのオリジナル、みんなの中でどう生きるかは別として、素材のひとつとして入れてみよう!」そんな気持ちに変わっていった。



そんなフォルケでの学びは、
みんながみんな同じ体験をしないからこそ面白い。

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