コロナワクチン開発は終わりじゃなく始まりの理由、そしてハイテクグロース並に成長するワクチン関連分野の誕生。

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また本noteは投資を勧めるものではありません。
投資は自己責任で宜しくお願い致します。

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このnoteでは下記2点について、僕の考えを述べていきたいと思います。
①コロナワクチンを開発さえすれば、問題は全て解決するのか?
②これから大きく成長する分野、銘柄は?


①コロナワクチンを開発さえすれば、問題は全て解決するのか?

コロナによる感染爆発が始まってから1年が経とうとしています。
この1年の間にCOVID-19の遺伝子配列は特定され、治療薬もワクチンも続々と開発されてきており、科学の進歩を感じます。

とりわけファイザー(PFE)とバイオンテック(BNTX)のワクチン開発状況は素晴らしいと思います。
BNTXはまだ世界で前例のないmRNAワクチンの開発を行い、その薬効(抗体価を増やす)と低副作用(軽い発熱レベル)を第一相臨床試験、第二相臨床試験で示し、現在は大規模にワクチン接種して効果あるかを第三相臨床試験で確認の最中であり、近日効果を発表予定です。


では、このmRNAワクチンが成功した場合、私たちはコロナを克服することが出来るのでしょうか?

僕の結論は「少なくとも3年は克服出来ない」と考えています。
こう考えるに至った理由は「世界のワクチンの製造能力が足りないから」と判断したためです。


まず「克服」をとはどういう状態を指すでしょうか?
僕は、克服とはコロナ感染爆発前の状況に戻る、もっと言えば人々がマスクやSocial distanceを気にせず日常生活を送れ、運悪くコロナに罹ったとしても風邪あるいは最悪でもインフルエンザレベルの感覚で対応出来るか、ということだと考えています。

このインフルエンザレベルで対応可能になるためには2つを満たす必要があると思います。

A) 有効な薬が複数存在し、医者に行けば治療出来る。
現在最も有効とされているコロナ治療薬はリジェネロンの抗体カクテルですが、これは30万dose/年しか製造できず気軽に誰でも摂取出来ません、また重症患者には効果がないことが確認されました。
またギリアドのレムデシビルは入院日数を数日短縮する程度には効果がありますが、有効な治療薬とは言えず、さらに重症患者には効果がないようです。
その他の開発に期待したいと思いますが、現時点では有効で、大量生産可能な薬はないと言えます。

B) ワクチン普及によりコロナ感染自体が稀になる。
ワクチンの普及によりコロナ患者が大幅に減少することは理論上可能だと思います。
(ただコロナは肺などに後遺症を残すともいわれており、ワクチン接種しても感染することはあり得るため有効な治療薬がないとワクチンがあっても安心できないというのが実情になります。とは言ってもワクチンがあるだけでだいぶ脅威は減るとのは事実だと思います。)
ワクチンで増やした抗体価は時間がたつと減少されることが確認されており、またウイルス変異も問題になると思います。
これはより多くのワクチン製造能力が必要になることを意味します。

つまり、僕は克服のためにはワクチンが必須であり、また開発に成功してもワクチンの製造能力が足らないことが問題だと考えています。


本当にワクチン製造能力が足りないのか?を考えていきたいと思います。
まず、現状ワクチンはどのくらい作られる計画でしょうか?

先日のnoteで詳細に検討しましたが、PFEとBNTXは2021年に最大13億doseのワクチンを製造出来ると言っております。
その他の企業がどうでしょうか?有名どころを列挙してみます。
・ジョンソン・エンド・ジョンソン:年間10億dose以上の製造を目標としグローバルに製造能力を拡大中。
・アストラゼネカ:インド血清研究所と20億dose以上の製造を契約。
・シノバック:商業用ワクチン製造工場の建設中、年間最大1億doseの製造を見込む。
・Novavax: インドのSerum Instituteにて2021年から年間20億dose以上の製造能力に拡大予定。
・武田薬品:Novavaxと提携し、チェコのPraha Vaccines社を買収、10億doseの製造を目標。
・モデルナ: Lonza社と提携し、年間10億doseの製造を目標

有名どころを数えてみると、年間で71億doseを作ろうと計算できます。
仮に全て成功して年間71億dose供給出来たとしても、抗体価減少やウイルス変異問題によってコロナ撲滅は難しいとは思いますが、71億doseというのは大きな数字だと思います。

PFEのmRNAワクチンは1dose当たり19.5USDですので、仮に71億doseに適用するとその合計金額は1,384億USD(=約14.5兆円)になる計算です。

ちなみに現在の世界のワクチン市場は420億USDですので、3倍以上の数字になります。

もちろん、上記71億doseのほとんどはmRNAワクチンではないので、単価は全然違うものになり総額も間違えているとは思います。

ただワクチンは細胞培養法により製造することは共通しており、つまり現実的に考えて既存設備では420億USD程度を製造する設備しかなく、これらをフル活用しても71億doseの製造は不可能ということになります。

足りなければ増やせば良いと思うかもしれませんが、医薬品製造工場の立ち上げはかなりの時間がかかります。
厳格な製品品質を担保出来るレベルであることを証明するためにはGMPという認証を得る必要があり、そのためには承認申請を行う国の当局(アメリカならFDAなど)の査察・承認を受ける必要があります。
しかしこの査察業務がコロナのせいでかなり停滞しております。
通常当局の査察を受けてからGMP認証を受けるまでかなりの時間がかかりますが、今回は緊急事態のため迅速に承認を得られるかもしれませんが、GMP施設を運営することは難しく、また技術スタッフの数も既存の3倍あるかもしれない状況では圧倒的に不足していると言わざるを得ません。

結論:①コロナワクチンを開発さえすれば、問題は全て解決するのか?
ワクチンが仮に成功したとしても、コロナの脅威がなくなるためには大量の設備投資と人のトレーニングを行う必要があり、僕の医薬系工場の立ち上げ経験から言っても少なくとも3年は満足できるワクチン量は製造出来ないというのが僕の結論になります。
(先進国人口分だけなら既存設備で賄えるようになる可能性はあります。)


②これから大きく成長する分野、銘柄は?


投資家として①の結論を言い換えるなら、ワクチン関連市場というのは今後数年間にわたって大きな投資が見込まれ、市場の拡大が想定されるということです。

ワクチン開発には当たり外れがありますが、ワクチン製造するには欠かせない資材があります。

その代表的な資材の1つに、使い捨て(シンプルユース)のバイオリアクターがあります。
このバイオリアクターおよそ100,000USD/個とそこそこ高価なのに使い捨てします。
通常の使い捨てしないリアクターを使用するとコンタミリスクが高く(=雑菌が侵入する可能性が高く)、コンタミした場合、リアクター内の全てのワクチンをダメにしてしまいます。また今回のようにリアクターを洗浄する時間すら惜しい非常事態では通常リアクターの使用を極力避け、使い捨てバイオリアクターを使用すると思われます。

ではこのバイオリアクターはどの程度必要なのかを考えていきたいと思います。

まず、1dose当たりの有効成分含有量は通常30~100μg 程度ですので仮に50μgが平均とします。
1つのバイオリアクターを使用して培養法で有効成分を増やし、ワクチンを製剤化するのに最短でも4週間かかり、また1回につき多くても5g(=5,000,000μg)しか有効成分を製造出来ません。
1年間で71億dose(=355,000g)のワクチンを作るためには71,000セットのバイオリアクター含む一連の設備が必要になります。

1回のバイオリアクター費用は100,000USDであり、71,000個のバイオリアクターの総額は71億USDになります。
先ほど71億doseが19.5USD/doseだった場合総額1,384億USDと計算したので、71億USDのバイオリアクター費は製造コストの5%を占めることになります。

バイオリアクターの市場規模は現在44億USD程度であり、ワクチン用途は半分の20億USDです。
つまりワクチン用バイオリアクターの需要が3倍以上に伸びることになります。

では主要なバイオリアクターはどこでしょうか?

バイオリアクター市場のトップリーダーはSartorius Stedim Biotech Groupであり、最近ダナハーのバイオリアクター含む関連部門を買収しています。ここも良い投資対象だと思いますが、残念ながらここはニューヨークに上場しておらずフランクフルトに上場しているので投資対象にはなり辛いです。

2位はThermo Fisher Scientific(TMO)です。
ここの強みは使い捨てのバイオリアクターにあり、2017年から買収や投資などでアメリカ、中国、スコットランドでバイオリアクター製造能力を拡大させています。
加えて、Thermo FisherはQ3決算で下記のように報告しています。

20 億ドルの COVID-19 関連収益を創出した
欧州におけるウイルス輸送媒体の大規模な生産能力を拡大した
中国・蘇州に使い捨てバイオリアクターを製造するバイオ生産工場を新設した。

つまり、Thermo Fisherはバイオリアクター含めて既にコロナ向けに大きな販売実績を出しており、かつ多角的な商品があります。
僕はここがとても大切なポイントだと考えております。
なぜなら医薬機器は医薬品の規格・品質に大きく影響を及ぼすため、途中での変更がほぼ不可能だからです。仮に変更する場合、多くのデータを取り直す必要があり変更ハードルが極めて高いためことが理由に挙げられます。
多くのワクチン開発企業は既存メーカー以外からコロナワクチン製造機器を購入することが出来ず、且つThermo Fisherは既に大きな実績があり、幅広い商品をそろえていることは今後数年間に渡り強みになります。

下記はThermo Fisherの決算売上報告推移です。

画像1

2020年Q3は85億USDの売上でY to Yで+36%成長でした。
このうちバイオリアクターなどのLife Science Solution Segmentがコロナ関係で20億USD増えたとのことです。
この増え方がワクチン成功後に爆発的に加速すると考えています。
バイオリアクターの需要は数年満たせず、Thermo Fisherはさらにバイオリアクターの製造能力に投資をしながら順調に、そして加速度的に売上を伸ばしていくと思います。
特筆すべきはバイオリアクターは使い捨てであり、且つ変更が難しい商品と言うことです。
したがってまるでサブスクビジネスのように、毎月継続して順調に売上を積み上げていくことが容易です。

結論:②これから大きく成長する分野、銘柄は?
コロナ需要は複数年にわたって継続、使い捨てバイオリアクターで業界トップ、既に大手に採用され、幅広い関連商材を持つThermo FisherはあらゆるSegmentで追い風。この数年間化学企業とは思えない、ハイテクグロース企業並みの成長率を誇る企業に変貌していく可能性あり。

僕は長期にわたってThermo Fisherを買い増ししていこうと考えています。

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