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20.02.08 Xデザイン学校ベーシックコース #10 オズの魔法使いと成果発表

一年間、名古屋と東京から通い続けたXデザイン学校大阪校。
最終回は課題を頂いていた企業の担当者様と浅野先生、佐藤先生を前に1年間チームで取り組んだアイデアの成果発表を行った。
企業であれば、新規事業を決裁者へプレゼンするシーン。この日に向けて1年間学び、準備をしてきた。
自分たちの発案したサービスは企業様のゲームチェンジにつながる一歩を提供できるのか?また、エンドユーザーの暮らしに寄り添うものを作れるのか?最後まで自信が無かったというのが正直な感想。9回目に先生より酷評を頂いたからというのもあった。

せめてプロセスを学ぶためやれるだけのことはしよう!と、メンバーで手分けしてリサーチ、アクティングアウトの動画撮影、オズの魔法使いの実演、UI作成、ハードウェアのモック画像作成など行い、アイデアを発表した。発表後、企業担当者様とマスターコースの先輩から講評や質問を頂き、先生からアドバイスを貰って拍子抜けした。自分たちが思っていたほど悪い反応ではなく、ピボットの余地があるご意見を頂けたからだ。

自信がないなら人に聞けばよかった

8回目の講義終了時点で、同時に2つのアイデアを悶々と検討していた。メインのアイデアの講評を頂く中で何が正解かわからず、自信がなくなり、根本的に変えないといけないと思っていたためだった。
結局、当初のアイデアで最終発表まで行くことにしたけど、上記のような評価を受けて、「なんでもっと早く人に聞かなかったんだろう」と感じた。
リーンスタートアップでも”顧客にソリューションに価値があるか尋ねよう”と言っているのに、なぜわたしたちは自分たちの頭の中だけでああでもないこうでもないとこねくり回していたんだろう。自信がないのなら尚更早く人に聞いてみればよかったんだ。
たとえ先生が「このアイデア最高!」と言ったとしてもユーザーや社会に受け入れられなければ意味がない。なぜ先生の反応ばかり気にしていたんだろう。

伝わるように伝えることの難しさ

最終的なサービスの形は最初のアイデアの頃からあまり変わらないものになった。
ただ、なぜそのサービスを企業様がやる必要があるのか?そのサービスは社会に受け入れられるものなのか?といった部分は回を重ねる毎に深められたように思う。9回目、アクティングアウトでサービスの流れを発表した際に「やっと君たちのサービスが何をしたいのかがわかったよ」と言っていただいた。
8回目までの情報では私達の意図を全て伝えることができなかったんだ。
オズの魔法使いやアクティングアウトのような大掛かりな仕掛けは、あまりサービス設計に詳しくない決裁者に向けてわかりやすく説明する手段だと勝手に思っていた。しかし、サービス設計に詳しい先生に対してでも、私達の伝え方が未熟だから伝わっていなかったことに気がついた。
伝え方が未熟な自分たちは大掛かりな仕掛けを使わないと伝わるように伝えることができないのだと学んだ。私達の頭の中をしっかり伝えることで、ピボットの余地を見出してもらえた。

HowではなくWhy

私達のアイデアはサービスのアウトプットだけ見れば「どっかで見たことあるサービスだね。」といえてしまうものだ。
しかし、何かのサービスに手段が似ていたとしてもいいと思えるようになった。なぜこの企業がこのサービスをやる必要があるのか?自分たちなりにWhyを定義できたからだと思う。
私はこの学校に通う前、サービスデザインはあっと驚くサービスの形を考えつくことに価値があると思っていた。今まで組み合わされることのなかった物や場所のパズルをカチッとはめたら面白いものが生まれるんじゃないか…?そんなHowにワクワクしていた。あのサービス面白いな!あのサービスの形を違う事業に転換したら面白くなりそうだな!そんな風に考えていた。
しかし、学校での学びを通してその考えは大きく変わった。初回くらいでリフレーミングについて学んだが、ビジネスの要素分解のためにやるのかななんて思っていた。しかし、Whyを知るためにリフレーミングが必要だったんだ。要素分解することで、企業やユーザーの価値観を知る。そこから生み出されたサービスを見つめ直すことで、はじめて自分たちのサービスに置き換えて考えることができるんだ。
そうしてWhyから作り出されたサービスはたとえ現時点のHowがイマイチだったとしても、繰り返し磨くことで価値や魅力を生み出せるはずだと感じた。

最終発表は始まりだったと気づく

懇親会でマスターコースの先輩が先生に対して「発表を通してビジネス視点で噛み合っている感じは受けたものの、本当にユーザーのインサイトを深められているか自信がない」といった話をされていた。私も同感だった。自分たちのアイデアはまだふわふわしていて、とてもユーザーに受け入れられるか本当に自信がない。
しかし、先生の返答は意外なものだった。「そりゃそうだよ。でもこのフェーズではこれでいい。実際の仕事はね、君たちが1年間やってきたこのプロセスを短期間で繰り返すんだよ。何回も何回も。最終的に形が変わることもある。」目からウロコだった。
そうか、今日やった成果発表は終わりじゃない。新規事業を決裁者へプレゼンする場。つまり、プロジェクトの一番始まりのフェーズだったんだ。
ここから予算がついて、プロジェクトを始めていく。まずは決裁者が「イケそう。」そう思える解像度でいいんだ。

解像度を上げていく作業の繰り返し

先生のスライドにあった「プロトタイピングの連続イメージ」は、ユーザー体験と操作・設計評価を何回も繰り返すプロセス表だったのが印象に残っている。
8回目のnoteに少しまとめているような形だ。

私はそれまで、サービス設計のプロセスとは「リサーチ>設計>評価>リリース>計測」というフェーズを1つ1つ確実なものにしてから次に進んで行くもので、一連のサイクルは1企画につき大きく1回回していくものだと思っていた。
しかし、「プロトタイピングの連続イメージ」のプロセスは細かく体験設計と評価のサイクルを繰り返す。少ないリソースで徐々に解像度を高めていくというもの。
まだ世の中にないものを作る、不確実性の高いプロジェクトだからこそ、大きくやらない。細かく細かくプロセスを回して焦らずに徐々に解像度を上げていく。それがなによりのリスクヘッジなんだ。
大きな1回のリサーチだけで自分の勘所が違ってしまう可能性は大いにある。常に過信し続けず、これでいいのか?細かく小さく確認し続けるのだと学んだ。

また、徐々に解像度を高めるという過程において他の利点もあると思った。
不確実性の高いものに対して、「きっとこれを作ったらなにかいいものになるはずだ!」という確信を持って前に進めるのは、真っ白なキャンバスから何かを作り出せるデザイナーだけ。サービスは一人では出来ないし、多角的な視点がないと世の中に受け入れられるものは作れない。
デザイナー以外の人間とも共働するなら、一緒に不確実性の高いチャレンジをしてもらうために、フォーカスを共有して小さく一歩ずつ前に進んでもらえる工夫をしないといけないと思う。そういう意味でも細かくプロセスを回すことは有用だと思った。

転職と引っ越し

Xデザイン学校在学中に転職と引っ越しをした。Xデザイン学校での経験は少なからず転職の意思決定にも影響していた。もっと事業に近い位置で体験設計をする。その打席にもっと立ちたい。そう思ってのことだった。

自己投資するということ

Xデザイン学校に通うことを決める前はあまり積極的に自己投資を意識してこなかった。しかし、スタートアップにてUXのロールモデルが不在な状況で苦戦していた当時、自然と藁にもすがる思いでUXと名のつくセミナーやイベントに足を運ぶようになっていた。そんな折、名古屋開催の「ゲームチェンジとサービスデザイン」のセミナーを聞いて、先生に悩みを打ち明け「そんなに悩んでるなら学校に来るといいよ。申し込み明日までだけど。笑」という一言で入学を決意した。
一日で決断するにはXデザイン学校の学費(+大阪への交通費・宿泊費)は安くはなかったが、自分の悩みを解決するには悶々悩み続けるより安いものだと思った。
実際1年通い、悩みが気づきに変わったと思ったら、また悩む…の繰り返しで、解決というより悩みの沼にハマった感じでではあるが、今まで本などで断片的に学んでいたUXの知識が体系化され、少しは俯瞰して見れるようになったと思う。
Xデザイン学校で学んで1年後には何者かになれるのかもしれないという期待も持って入学した私にとって、1年後のいまも何者かになれた気はしていないが、想定していなかった視点を沢山得られた。
1年経った今、何がよりよい体験なのか?サービスを通してどんな社会をつくったらいいのだろう?と、考え続けることが何より大切なことだと学び、また来年も通いたくなっている。
修了したけど達成感はあまりないという話を周りにすると、費用対効果はあるのか聞かれるが、私は何者かになれた気にさせる学校ではなくてよかったと思う。学び尽くしたなんて思ってしまったら、勘違いして本質的に考えることをやめてしまいそうだから。私はこれからもずっとユーザーのために、よりよい社会を作るために考え続けたい。
"7つの習慣"で応急処置に頼らず、本質的な体質改善が必要という教えがあった。つい手法やフレームワークなどの銀の弾丸に頼りたくなってしまうが、リサーチャーとして、開発者としての姿勢を学ぶ、本質的な体質改善の機会になったと思う。

無駄なことを経験する

雑談中、先生に「どうしたら現代の倫理観を捉えることができるのか?」質問をしたところ、「きみは役に立つことしかしたくないでしょ。無駄なことを経験をしないと。」と言われた。
確かに、私の行動の癖は自分の基準で「なにか学びになりそうだ!」と思える好奇心にある。学びにならなそうなことにはあまり食指が動かない。しかし、ひとの感情の機微には雑味が大きく関わっている。その雑味を感じ取るにはもっと”無駄”な回り道をしていきたい。

チームワークから得られたもの

今回一緒Aチームで一緒に悩んだメンバーは福岡、岡崎、名古屋(東京)、大阪といった遠隔メンバーだった。遠隔につきMTGはオンラインだし、お互いの進捗も見えづらく、ちょっと大変だった。でもオンラインだからこそ1~2週に1回はMTGを設定でき、沢山検討を重ねることが出来た。
また、メーカーと事業会社といった多様なメンバーだったからこそ、アウトプットでそれぞれの得意を活かせたり、多角的な視点が得られた。
個人的には、考え抜くことが辛くなり、手法を正しく扱うことに一所懸命になって本質的な課題に立ち戻れなくなったときに、メンバーに前提条件まで戻して貰えたことも多々あった。
こうした、志を共にし、お互いコミットできるメンバーからいろんな気付きや学びを得られたこともとても大きいことだった。
みんなで悶々悩んだからこそ、モチベーションが下がらずに1年学び続けることが出来たと思う。

さいごに

浅野先生、佐藤先生、課題を与えていただいた企業様、Xデザイン学校大阪校の皆さん、Aチームの皆さん、沢山の経験と学びをありがとうございました!これからも沢山考え、悩み続けようと思います!

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これからXデザイン学校に通おうと思われてる方へ
私にとってXデザイン学校は安全な場所で失敗をし、自分で気づきを発掘するところでした。手法よりも考え方、価値判断を身に着けれるところだと感じています。もし自己学習で行き詰まってるのであればぜひおすすめです。
あと、参加できるのであれば懇親会は積極的に参加して、先生方や先輩方とお話しするのをおすすめします。講義中で躓いたところや、会社での実践で困ったことなど、悶々としていたことに対するヒントが得られ、懇親会から学ぶところも大きかったです。

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