見出し画像

自社の強み弱み分析が根本的に間違っている件(理解編)

どうも、荻窪に住むネコです。

大手小売で新規事業開発や構造改革プロジェクトなど経営回りの泥臭い仕事をやってます。実体験から学んだことを発信したいと思います。1つでも世の中の為になったら幸いです。

この回は、社会人なら一度は経験のある「自社の強みと弱み分析」についての正しい理解についてです。就活生でも訪問企業先で「御社の強みと弱みは何ですか?」って質問しますよね。

ちょっと待ってください。
そう言われて、すぐに「当社の強みは、ブランド力です。」とか「顧客の数です」とか「商品力です」
とか答えてませんか?

よく挙がる回答を並べてみます。
認知度、ブランド力、土地、顧客、データ、人材、著作権、キャラクター、歴史と伝統、資金力、顧客接点、営業ノウハウ、組織マネジメント、ビジネスモデル、収益性、ポジショニング、などでしょうか。

これってなぜすぐに「強みだ」とか「弱みだ」って言い切れるんでしょうか。会社で役員やらマネージャーやらが大集合して議論したところで、大抵の場合、これによって戦略が決まることもなければ、営業活動が変わることもなく、なんとなく勉強会っぽく終わってしまっていませんか?


強みと弱みの分析が空中戦で終わってしまうワケ

 結論から言います。自社の強みと弱みを考える時には「前提条件」を揃えることがめちゃ重要なんです。

強みと弱みの議論の前に前提条件を決めておく

とても大事なので2回言いました。

どんな会社/事業を目指すかによって、その目標に必要なリソースは違ってきます。

例えば、従業員数が多い会社。
「当社の強みは豊富な従業員数です。」って言いがちですよね。
もし、労働集約型ビジネスを目指すなら、その通り従業員数の多さは強みになるでしょう。世の中は人手不足ですから、他社が採用難で苦しんでいる中、素早く活用できる充分な労働力があるので早期に売上規模を拡大させることができますよね。
しかし、なるべく人件費をかけないビジネスモデルを構築したいのなら、リストラもできない無能従業員を多く抱えるお荷物会社ってことになりませんか?
つまり、従業員数は対売上人件費比率の増加を引き起こす「弱み」ということになります。

もう一つ例を挙げます。
例えば、ブランド力
 知名度や伝統がないと信用の問題から顧客がつかないビジネスをする時にはとても強みになる一方で、ハイリスクハイリターンな新規事業をやる上ではレピュテーションリスクが足かせになって身軽には動けません。レピュテーションリスクとは、何か問題が起きた時に企業としての評判が失墜するリスクのことで、例えば、「メガバンクがいの一番に仮想通貨事業に乗り出して、ハッキングで数百億円失いました。」となれば、金融市場での株価暴落は避けられないでしょう。良くも悪くも信用を売りにせざるを得ない歴史ある大企業は特に知名度があるが故、たとえ大きなリターンが見込めそうな新規事業であっても、そうしたリスクが内在しているのであれば、なかなか手が出せません。ここでも強みと思っていた資源は、やりたいことによっては弱みになるということがお分かりいただけたと思います。

 更には「目指す先」つまり、戦うマーケットにおける競合プレイヤーの存在によっても、強みと弱みの考え方は変わってきます。

 例えば、自社保有の土地をたくさん持つ小売業者が不動産事業へと転換したいとあらば、競合は大手ディベロッパーになりますし、デジタル小売を強化したいと言うならアマゾンやソフトバンクグループ、メルカリやZOZOなどのマーケットプレイスが競合となるでしょう。
すると、前者においては、小売業者の中では土地を自社で多く保有していたことが強みでしたが、大手ディベロッパーと比べたら弱みになるほど土地資産規模は見劣りしますし、後者においては、デジタルリソースが不足していることが弱みということになります。

 という感じで、その会社が何を目指し、誰と戦うか?によって、自社の強みと弱みの解釈は大きく変わってしまうのです。

 もうお分かりでしょうが、強みと弱みを考える時って既存事業の環境と経営状況がそのまま継続することを前提に考えるので、顕在化している強い弱みに視点を置きがちです。
 しかし、強みと弱みを分析する時は、大抵の場合、経営や事業に変化や改革を起こしたいタイミング、つまり、戦略立案のための情報整理が目的ですから、まずは会社をどうしたいのか、そのためには誰と戦い、何を身に着けなければならないのか?という前提が重要になるのです。


自社の強みと弱みを理解しなければ、戦略は作れないという人の大きな誤解

 そこで恐らくこんな反論があるはずです。
自社の強みと弱みが分からないのにどうやって会社の未来を決めるのか?」という正論のような問いかけです。
分からなくもありません。自分自身に置き換えれば、「持ち前の性格や積み上げてきたスキル、考え方の価値観などと向き合う自己分析をやって、どんな職に就くかを考えなさい」と言われてきました。転職活動でも同様に自己分析を通じて自分を売り込みますよね。それを会社経営でも同じだと思うのは無理もないでしょう。
そして、この問いが正しい時もあります。例えば、市場環境の変化量が少なく、既存事業の構造はほとんど変えず、営業レベルで戦術の変更などをする場合は、自社が保有するリソースと不足するリソースから議論をスタートさせて、資源を最大活用してやれることを考える、いわゆるプロダクトアウトに近い考え方が有効だったりします。
 しかし、この変化の激しい時代において、企業の多くは大きな転換もしくは柔軟な戦略変更を求められています。そんな環境変化に対して果たしてプロダクトアウト的思考で考えられた強みと弱みは機能するのでしょうか。私は難しいと考えています。
つまり、強み弱み分析は環境認識と目指すべき方向性が優先され、補助的に考えられるべきものであると思うのです。

いかがでしたでしょうか。
皆さんの会社でも似たような状態になってしまってはいませんか。
これでなぜ強み弱み分析がうまく機能しないのか?が理解できたと思います。
次回続編では実践編として、どうやって強み弱みを分析していくのか?のフレームをご用意しております。是非参考にしていただければ幸いです。

それでは、また。

vol.5

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?