聞きなしonomatopoeia
友人との会話の中から「聞きなし」という言葉が出て、
それはフランス語オノマトペの日本語だと知った。
長く生きてきて初めて聞いた言葉で嬉しくなった。
Cock-a-doodle-dooという発音はできるだろうか。
日本ではコケコッコーである。
Chif-chaffはホーホケキョ、Oink oinkは豚のブーブー、
Bow-wowはワンワン。
カチカチと当たる音はclick-clack、
鐘のカーンカーンはDing-dong、
パタパタと叩くのはflip-flopとなる。
日本語の方が言語的で英語は音のままを文字化している。
どうしてこうなるのか?
日本語と英語の母音と子音の使い方から右脳、左脳の処理が
異なることを角田忠信博士が発見した。
博士が海外で行なわれた学会に参加したとき、
会場の周りで盛んに鳴く虫の声が気になり、
周囲の外国人に訊いてみるとそんなの聞こえないという返答に
ビックリした。
自分だけに聞こえているというオカルト感覚に陥ったに違いない。
これが切っ掛けで日本人の脳の特殊性の研究を始めた。
日本人は子音・母音とも左脳で聞き取り、外国人は子音を左脳、
母音を右脳で分けて聞き取る。
虫の声を聞くとき日本人は言語を司る左脳で聞くので言葉として捉え、
外国人は音楽や騒音を捉える感覚の右脳で聞くので、
言葉として認識できない。
虫の声は単なる雑音だから聞こえないように
認識レベルをグッと下げてしまう。
日本人は難なくチンチロリンは松虫、リンリンは鈴虫、
蝉はミーンミン、ジージー、ヒグラシはカナカナ、
ツクツクボウシはオーシンツクツクと聞き分ける。
雨の音も風の音も波の音も言葉にできるから
文学的に感傷に浸ることもできる。
世界にはアルファベット様の言語の人がほとんどで、
日本人の他にポリネシア人がこの超特殊なタイプということらしい。
画像:谷岡ヤスジ「谷岡ヤスジ傑作選天才の証明」実業之日本社
1999年 378~379ページ