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メロンとスモークサーモンのサラダ ヨーグルトソース

果房 メロンとロマンがメロンを使ったお家で楽しめるレシピを発信する企画、「メロンのレシピノート」。

第16回は果房 メロンとロマンが位置する東京・神楽坂「HASABON」のつくるレシピ。日本茶と日本の四季折々の食材を用いたフレンチベース料理を、自身の経験や感性を存分に活かしながら提供し人々を魅了するシェフ、小坂孝弘さんが一緒に考えてくださいました!

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小坂さんにこれまでのお話を聞きながら、メロンをつかったレシピについて教えてもらいましょう。

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↑店名の「HASABON」とは禅語の「破沙盆」に由来する。壊れたすり鉢の意味だが転じて「円熟した境地」というよい意味で用いられる言葉。お店では、日本茶をテーマに、四季折々の料理のほか、日本各地の作家による陶芸作品のギャラリーや日本文化を感じるワークショップを楽しむことができます。

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➖お店ではどのようなメニューを提供していらっしゃいますか。

日本茶と日本の旬の食材をつかってフレンチベースの料理を提供しています。それに合わせてワインや日本酒のペアリングも楽しんでいただけます。

➖「HASABON」との出会いについて教えてください。

ここに来る以前働いていたお店にお客様としていらしたのが、「HASABON」オーナーの宮下さんでした。ちょうどお店をオープンする時期で、シェフとして誘っていただいたんです。

➖小坂さんが料理人を志したのはいつごろだったのでしょうか?

高校生のころでした。もともとじっと座っているのが得意ではなかったので「オフィスワークは自分には合わないかな」と思っていたんです。そこで何か手に職をつけなければ、と考えた時に思い浮かんだのが料理人でした。

中学生のころに記念日に近所のフレンチのお店に親に連れていってもらったことが記憶に深く刻まれていました。ぼくは新潟県出身なんですが、当時フレンチのお店はとても珍しくて。初めてフレンチをいただいた時に、こんなに美味しいものがあるのか!と感動したのを今でも覚えていますね。その出来事もありフレンチの道に進もうと思いました。自分の通っていた高校はいわゆる「進学校」だったのですが、同学年300人のうち、大学へ進学しなかったのは自分のほかにもう一人だけ。それでも料理の道に進もうと思って専門学校に進みました。

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➖お料理はいつからしていましたか?

料理人になろうと決めてからは少しずつ家でやるようになりましたね。包丁くらいは使えるようになろうと思って、切り物をしてみたり独自で勉強して研いでみたり。

あとは、小学生のころ親子で参加できる料理教室に連れていってもらったことがあって、秋刀魚の三枚おろしもやりましたね。初めてなので、完璧に、とまではいきませんでしたが、それなりに上手くできた覚えはあります。

➖当時からお料理の才能が垣間見えるエピソードですね。

小さい頃から食べることが好きなんです。フレンチに初めて出会った頃から「もっと美味しいものを知りたい!」という思いが強くて、それを実現するならもっとも食が身近な世界に自分の身を置くのが一番良いと思ったのも、料理人になった理由でもあります。
ただの食いしん坊ですよ。今も料理しないで、ずっと食べる側でいたいくらいです。(笑)

➖フレンチの料理人になられてから、日本料理も学ばれたとお聞きしました。

学校を卒業して、いくつかのフレンチのお店で働きました。朝4時に出勤して仕込みをして、というめまぐるしい毎日だったのですが、10年ほどたったある時、「フレンチって季節感のある料理があまりないな」ということに気付いて。日本料理には四季を感じられる料理がたくさんあるのにどうしてだろう、という思いから日本料理を学びたいと思うようになりました。

さらには過去にフレンチと日本料理、どちらの道に進むか正直迷ったこともありました。日本料理には高い技術が必要というイメージがあって、自分には無理だと諦めたのが何となく心残りだったのも原因かもしれません。

ちょうどその時、知り合いの日本料理のお店の料理長が声をかけてくれて、日本料理も学んでみようと思って1年ほど働くことになりました。

➖フレンチにずっと携わっていて、その後に日本料理の考え方や技術に触れてみて、どのような印象でしたか。

面白いなと思ったのが、日本料理の「良い素材をシンプルに、素直に際立たせる」という構成。これは、ぼくなりの想像なのですが、フレンチは身近にある食材を美味しくいただくにはどうしたらいいか考えた末の方法として、さまざまな食材を組み合わせて、重ねるという手法が編み出されている。たとえば魚介類のマリネ。これは魚の生臭さを抑える手段としてビネガーやその他の食材を用いています。食材を重ねる=合わせることですべてをおいしくいただけるようにつくられているんですね。一方、日本料理はひとつひとつの食材をシンプルに美味しく食べてもらうにはどうすればいいのかを考えている。一番驚いたのが魚の扱いで、頭や内臓をとって、洗う手順ひとつとっても、水に必要以上にさらさないようにしたり、どう包丁を入れたら美しく見えるかまで気を配るんです。これは熟練の技術がないとできないことで、その技術があるからこそ、お刺身は素材の持つ味を楽しむことができます。

シンプルに食材の美味しさを追求するか、素材を組み合わせて相乗効果を狙うか。対極的な料理への態度がとても面白いと思いました。

今では日本料理の影響を受けて季節感のあるフレンチを提供する料理人も増え、シンプルに仕上げる方も多いですね。

そこでぼくが思うことは、フレンチと日本料理、双方の良いとこどりをする方が面白いんじゃないかということ。一つ一つの素材の味を理解し、無駄にすることなく重ね合わせることで新しい味を作ることができる。ぼくは新しい組み合わせでお客さまに楽しんでいただくのが好きなんです。日本料理を学んでからはそういう味を目指したいと考えるようになりました。

➖過去の経験があって、今のスタイルにたどり着いたのですね。
今回、考えてくださったメニューについて教えてください。

はい、メロンとスモークサラダ、ヨーグルトソースをあわせてみました。

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今回、メロンレシピを考えることになって、成分を調べてみたんです。するとメロンには旨味成分が豊富に含まれていることが分かったんです。特に旨味成分の一つであるグルタミン酸とアスパラギン酸が多くて、前者は昆布や野菜など、後者はアスパラに豊富に含まれる旨味成分です。

➖メロンに旨味成分があるとは意外です!

はい、ぼくも驚きました。
このレシピは、メロンの旨味、特にグルタミン酸に注目して構成を考えてみました。

このグルタミン酸を最大限に引き立たせるには「イノシン酸」という肉や魚介に含まれる別の旨味成分を合わせると相乗効果が得られるんです。昆布と鰹の組み合わせもこれと同じです。

➖そこで、イノシン酸を持つサーモンを合わせたのですね。

サーモンはイノシン酸に加え、魚介にしては珍しくグルタミン酸も含んでいるので、イノシン酸を含む食材中でもメロンに最も合うと考えました。生臭さが際立たないよう、サーモンは生よりもスモークしたものがおすすめです。

➖その他のレシピのポイントについて教えてください。

乳酸には味をつなぎ合わせる作用があります。今回はメロンとサーモンの組み合わせにヨーグルトソースが加わることで料理全体の一体感を強め、立体的な味わいに仕上がりました。同時に、白い色が入ることでメロンの青とサーモンの赤が際立ち美しく見せる効果も狙っています。

仕上げには煎茶パウダーを使いました。煎茶はグルタミン酸と非常に構造が似ているテアニンという旨味成分が入っているので、メロンやサーモンのもつ旨味の構造と少しだけ違う要素を合わせることで相乗効果を狙いつつ、味に奥行きを持たせました。

あとはメロンの皮に近い部分の青い香りと、お茶の青い香りもよく似ているので相性が良いです。同系色の食材同士は、栄養素をよくみてみると必ず共通項が見つかるんですね。なので、相性が良いことが多いです。

➖レシピの食材一つ一つにすべて意味があるのですね!

はい、レシピを考える時には意識している点ですね。最後に、メロンは種の周りの中心部はより甘く、皮に近い部分は青みがより強いですよね。今回はあえて中心部分と皮に近い部分、両方の果肉を使っています。そうすることで一皿でメロンの味の変化を楽しんでいただけますよ。

➖最後に、こちらのレシピに合うお茶を是非教えてください。

旨味の強い、玉露やかぶせ茶がおすすめです。これらのお茶は被覆栽培と言って、日光を遮ってつくっているためテアニンという旨味成分が豊富に含まれています。通常、お茶は日光に当たるとカテキンという苦味成分が強くなるのですが、被覆栽培のお茶は日光を遮って栽培するため苦味が少ない分、旨味の強いまろやかな口当たりのお茶ができるんです。是非お茶とのペアリングも試してみてください。

HASABON・小坂さんが教えてくださったレシピ:

メロンとスモークサーモンのサラダ ヨーグルトソース(1人分)

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材料
メロン(青肉)…1/4玉
スモークサーモン…1/2本
サラダリーフ…適量

ディル…適量
ケッパー…適量
レモン汁…適量
オリーブオイル…適量
ピンクペッパー…適量
煎茶パウダー…適量

(ヨーグルトソース)
無糖ヨーグルト…50g
牛乳…10g
生クリーム…5g
はちみつ…4g
白ワインビネガー…3g

事前の準備:煎茶パウダーを作る。煎茶の茶葉をミキサーでパウダー状にする。ミキサーがない場合はすり鉢で擦ってもOK。残った茶葉を茶漉しなどでふるい、細かくなった茶葉を使うことでも代用可能。

つくりかた:

1.ヨーグルトソースを作る。ヨーグルト50g、牛乳10g、生クリーム5g、はちみつ4g、白ワインビネガー3gをボウルに入れ、しっかりと混ぜ合わせる。

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2.8分の1にカットしたメロンを丸くくり抜く。くり抜き器がない場合はお好みのサイズに乱切りでもOK。

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3.2.にケッパー、ディル、オリーブオイルをそれぞれ適量入れてあえる。この時にボウルに残った汁はとっておく。

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4.皿に盛り付ける。ヨーグルトソースをしき、サーモン、メロンをのせる。この時サーモンに3.で残った汁をかける。

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和えた後の残り汁をかけるとよりメロンとサーモンの一体感が増します!

5.ピンクペッパー、サラダリーフ、煎茶パウダーをそれぞれ適量加え、完成!

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HASABON(ハサボン)

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〒162-0831
東京都新宿区横寺町30
神楽坂茶ノ木テラス101
tel  03-6427-5448

[火〜金]
11:30~14:00
17:00〜23:00(コースL.O.21:00)

[土・日]
11:30-23:00(コースL.O.21:00)

定休日
月曜日、月2回(隔週金曜日)ランチ営業休み

※営業時間が変更となる場合があります。
詳しくは店舗(03-6427-5448)にお問い合わせください。

photo:Takashi Sato

text:Mayuki Tsujihara
(果房 メロンとロマンのディレクターとして働きながら、ライターとして日本の島々をはじめとして、地域と食をテーマに取材を行なっております。好きなメロンはタカミメロン。)



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