【読書感想文】「with you」恋愛を主軸に今の子ども達の現実を見つめる
おはようございます。
イラストは「みんなのフォトギャラリー」から使わせていただいています。ありがとうございます。
今回は昨年の中学課題図書のひとつ「with you」を読んだのでそのことについて書こうと思います。
「お母さんも読んでみて」
中2の夏の宿題で読書感想文が出ており、子ども達と本屋さんに探しに行った時に長男が選んだ本です。
「お母さんも読んでみて」と言われてから、かなり時間が経ってしまいましたが、梅雨が来る前にエアコン掃除を業者さんに頼み、作業をやっていただいている間に読了しました。
基本的に子どもにしないで、と言われたことはしません。
そして「やってね」と言われたことには真摯に向き合いなるべく実行するのが私のポリシーです。
あらすじ
主人公は高校受験を控える柏木悠人。
両親の不仲、別居、出来のいい兄との確執、そして母の愛情が兄に傾いていると思っている悠人は、家の中での居心地が悪くなり、部活を引退してから走るのが日課になっている。
ある時学区から外れた、小さいころ兄をしたってついて行った記憶のある公園と足を運ぶ。
そこにいたのは朱音だった。
自分がいなくなっても困らないという気持ちの悠人と、わたしはいなくなることが出来ないと感じている朱音。
悠人は古い団地に住んでいて、朱音は高級マンションに住んでいる。
自分とは違う世界の人間だと思う彼女がどうして夜の公園にひとりたたずんでいるのか。
距離が縮まって、彼女が抱えている問題を悠人は知る。
彼女の母親が突然倒れ、通っていた私立の学校を転校し、小2の妹の面倒をみている。父親は遠くに単身赴任中だった。
悠人は知れば知るほど朱音のことが放って置けなくなり。
感想
現役中学生を持つ親としては主人公の悠人を始め、登場する子達は、みんなしっかりしているなと思いながら読みました。
朱音の場合は、彼女の置かれた立場からそうせざるを得なかったのだろうと思うし、誰にも相談できないまま、出来ないことに対して罪悪感を持ってしまう部分などは、すごく「共感」しました。
私自身も中学の時に母が働きに出て、家事の一部を担っていたからです。
朱音と比べたら私がしていたことは対したことではないけれど、それでも自分のことが疎かになることがあり、将来に対する希望を持つことが出来ませんでした。
この本の中では、ヤングケアラーという立場に自分がなった場合、どうするべきかについて「大人に相談をすること」としています。
朱音の場合は父親にきちんと状況を話し、理解してもらうこと。そして、学校の先生や学校に来ているソーシャルワーカーに相談することを提示され、全て解消される訳ではないですが、少しずつですが状況が良くなっていきます。
ただ、現実的に考えると、ヤングケアラーの当事者は自分がしなければいけないものと思い込み、相談するところまで至らないのではないかなと思いました。
また、子ども達は自分が信頼していない相手には本心を明かしません。
学校が相談場所の一番身近な窓口ではありますが、小中学と子どもを9年通わせていて、親として思うのが、仕事量が多すぎて、気持ちに余裕がある先生が少ないのではないか、という事。
先生方がどんなに頑張っても目の届かないことが多すぎるし、子どもの個々の事案を全て把握するのは無理があるかなと思います。
また児童生徒のプライバシーを保護する観点から、どこまで先生同士で情報を共有するのかという問題もあります。
小さい子供たちの居場所は確保されているな(足りてない場所もあるけれど)と思いますが、高学年からは親同士の交流も少なくなり、子ども達の状況が見えにくくなります。
子ども達が「行ってもいい」と思える居場所を、いくつか作ることから始められたらいいのかなと思います。
信頼や安心することができる居場所があれば、子ども達は自分の力で将来のことを考えることが出来て、勉強ややりたい事に結びついていくのだろうと思います。
「with you」の中では朱音にとっての居場所は悠人でした。
朱音の立場や気持ちを、何とか理解して支えようとする悠人の姿は立派すぎて言葉になりません。
でも、本来なら大人がきちんと子どもを支える世の中であってほしいと思います。
そのためには問題を抱える親にも相談できる場所や支援が必要になると思います。
そして、この本を全体を通して読んで感じるのは子どもが親からの愛情に飢えているという事。
親側としては年齢相応の距離感が必要と思い、本人の気持ちを尊重するために任せていて、子どもに対する気持ちはずっと変わっていないのに、子どもにはその親の思いが上手く伝わっていない事が丁寧に描写されています。
中高生の親子関係ではあるあるな部分です。
悠人は気づこうとしていなかった母や兄、そして父の愛情に少しだけ気づく片鱗が後半に出てきます。
愛していることは思っているだけでは伝わらない、コミュニケーションが難しい年ごろでも親は子どもに「思いがあること」を伝える必要があるし、子どもにとって一番相談できる相手になれるよう努めなければと読み終えて改めて感じました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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