ぽのちゃん

ぽのちゃんと、自分の境い目がないような気がしてくることがある。

ぽのちゃんとは、言葉を交わしたことがない。私はいつも話しかけて、ぽのちゃんは目で応える。私を見つめる。いろんな表情をする。けどぽのちゃんは生まれてから一度も日本語を発したことがない。

子供の頃も今と同じ犬種のゴールデンレトリバーを飼っていて、それはそれは聡明で温かな大きな心を持った優しい犬だったので、人生にものすごく影響を与えてくれたし、長い時間が経った今もそれは続いている。その犬とも心が近すぎて、ある日突然、「え、そういえばヴィッキーちゃんと言葉でお話ってしたことないんだっけ」と気付いた瞬間とてもびっくりした。

小学生の私は、「そうか、なら言葉って、ほんとにたいしたことないじゃん」と思った。言葉をしゃべれない存在が、こんなに大きな存在ならば、言葉を交わさなくてもこんなに繋がっているのなら、言葉なんて別にだな、、と深く腑に落ちた感覚を覚えている。

今、ヴィッキーと似たかたちをしたぽのちゃんは、いつも笑顔で、私のそばにいてくれて、私たち同士にしかわからない感覚を共有していて、一緒に生きている。たまにけんかもするけど、くっついてると、たまにどっちがどっちかわからなくなるぐらい、大好き、というか、自然な存在だとお互い思っている。姉妹とか友達のような女の子同士の感じもある。ぽのちゃんの中にも私がいて私の中にもぽのちゃんがいる。
境界線がないのは、ぽのちゃんが余計なことを言わないでいつも静かに深い愛をくれているからかも。私が何か悲しいことがあると急いで飛んできてただ何も言わずにそばで寝てくれる。ふぅ〜と犬特有の深いため息をついて横になり、寝息と呼吸のお腹の上下でリラックスをくれる。
いつもおしゃべりな私は沈黙を味わいながらぽのちゃんを触る。言葉じゃない繋がりは時空も超えるので、ぽのちゃんの中にもヴィッキーちゃんがいるのがふと感じられる気がすることもある。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?