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2020年6月の記事一覧

どん、と花を置くように。

どん、と花を置くように。



‪子ぐまに‬
‪#お洒落なオカマのキツネ が言った。‬

‪あんたね、‬
‪愚直であることは大事よ。‬
‪愚直に美しいものに憧れ、‬
‪愚直に愛す。‬

‪愚直の前に‬
‪半端な知識や技術はひれ伏すの。‬

‪生きてりゃ‬
‪こころはくしゃくしゃになるわ。‬

‪でもね、‬

‪白いテーブルクロスに‬
‪どん、と花を置くように‬
‪愚直に生きなさい。‬

いらいらするこころを。

いらいらするこころを。

‪うさぎの女の子は‬
‪いらいらちくちくひりひり‬
‪するこころを‬
‪奥の部屋で寝かしつけた。‬
‪タオルケットと本棚と‬
‪好きな絵のある静かな部屋。‬
‪ドアを閉め、‬
‪そうじをし、仕事にでかけた。‬
‪夜、帰ってきて‬
‪食事をつくり、シャワーを浴び‬
‪奥の部屋で、落ち着いたこころを‬
‪なでながら眠った。‬

グラノーラの神様。

グラノーラの神様。



グラノーラを
かき分けてグラノーラの神様が
出てきてクマに言った。
やあ、坊や、健闘してるかい?
坊やが実直に生きていれば
インスピレーションや幸運の
プレゼントが届く。
正確に言うとインスピレーションや
幸運はどこにでもある。
それに気づきやすくなる
回路ができる。
実直に生きていれば。

芸術って何?

芸術って何?



芸術って何?

子ぐまが訊いた。

人形が答えた。

わからなくなるもの。

きたないのか
きれいなのか

罪なのか
正義なのか

痛いのか
甘いのか

かっこいいのか
ださいのか

好きなのか
嫌いなのか

わからなくなって、
ひとが自由になるもの。

わかってしまいすぎると
ひとは自由になれないの。

黙って胸に祝祭を薫らせて。

黙って胸に祝祭を薫らせて。



‪雨降りの世界で。‬

‪あの日、‬
‪その灯がともったときから‬
‪夏は生まれ、音楽がはじまる。‬

‪リースが薫り、‬
‪秘めやかな祝祭がはじまる。‬

‪それを知るひとは‬

‪黙って胸に祝祭を薫らせ‬

‪雨降りの世界を生きる。‬

‪夏は雨の日に生まれる。‬

‪ぬかるむ足元で‬
‪夏草がそよぐ。‬

‪#夏草短編集‬
‪#夏草組曲‬

良くなろうとし続けていれば。

良くなろうとし続けていれば。



きつねはうみに
たどりついた。

さてと。ときつねは思った。

誰かが言ってた。
美しいひとは
美しくなろうとするひと
だって。
ならば、おれの
良くなろうとする人生は
良い人生ってことか。

いまが良いかだめかではなく
良くなろうとし続けていれば
それは良いってことだよな。

バスは呪いと花束を乗せて。

バスは呪いと花束を乗せて。

きつねは
父の日の花を持って
バスに揺られていた。

家族というのは
呪いのような気もする。

おれの本質はその呪いに
囚われている。

まあいい。
荒ぶる呪いを鎮めながら
おれは花を仕立てよう。

全部解決していて
全部素敵なんて嘘だし。

夏至の辺境で
バスは呪いと花束を乗せて
進んだ。

なにもない朝に。

なにもない朝に。



クマは夢を見た。
だれかと休日の朝に
朝ごはんを食べていた。
よく知っているひとのようでもあり
すべてを知らないひとのようでも
あった。
ほとんどしゃべらずに
のんびりごはんを食べた。
音楽も携帯もTVもつけなかった。
静かで、なにもない朝だった。
花だけがテーブルに
たくさんあった。

なんのために生まれてきたの?

なんのために生まれてきたの?

‪花がきつねに言った。 ‬

‪あなたはなんのために‬
‪生まれてきたの?‬

‪わたしは‬
‪雨を薫らせるためよ。‬

‪きつねは‬
‪しばらく考えてから
‪答えた。‬

‪雨の薫りをかぐため。‬

ラヴェルが感じた風の冷たさ。

ラヴェルが感じた風の冷たさ。



クマは音楽の
和音のことや、なりたちに
ついてもっと知りたかった。
けれども、
本を読んでも
どうにも
あたまに入って来なかった。
クマは本を閉じて
窓を開けて
樹の匂いをかぎながら
ラヴェルが感じた風の冷たさや
ドビュッシーがあびた潮騒の
のことを考えた。

ほころぶ日々を繕いながら生きてゆく。

ほころぶ日々を繕いながら生きてゆく。

‪クマは‬
‪寝巻きのボタンがとれたので‬
‪チクチクとつけかえた。‬
‪自転車がキコキコいうので‬
‪油をさした。‬
‪繕うと愛着が増す。‬
‪ねこさまと病院に行く時、‬
‪クルマを修理に持っていく時。‬

‪ほころぶ日々を‬
‪繕いながら生きてゆく。‬
‪ほころぶ自分を‬
‪繕いながら生きてゆく。‬

ものごとは上手くいかなくて、わからないもの。

ものごとは上手くいかなくて、わからないもの。



子ぐまに #お洒落なオカマのきつね が言った。
ものごとってのは
上手くいかなくて
わかんないものなの。
いつも上手くいって
簡単に正解があるってのは
幻想。
あたしら、幻想と現状を
ついくらべて落ち込んだり
するけど、まあ、しぶとく
やってくしかないわ。
土に根差し光と水を
浴びながら。

ひとつだめで止まるようなら。

ひとつだめで止まるようなら。



‪子ぐまが嘆いた。‬
‪苦手なことで、またミスした。‬
‪もうだめだ。‬
‪#お洒落なオカマのきつね が言った。‬
‪人間も社会も総合的に機能してるの。‬
‪ひとつだめで止まるようなら‬
‪とっくに止まってるわ。‬
‪めげずに総合的に真摯に‬
‪とりくんでいれば‬
‪あいつ、あれは苦手だけど‬
‪これは上手だな、‬
‪ってひとは思うの。‬

昨日のライブのアーカイブ。

昨日のライブのアーカイブ。

昨日のライブの
アーカイブです。
見逃された方
お楽しみくださいませ。
#夏至祭の夕べ #夏草短編集