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2020年3月の記事一覧

好きなことのことを20個。

好きなことのことを20個。

クマが子ぐまに言った。
目を閉じるときぐらい
好きなことを考えよう。
好きなことのことを20個くらいね。

たとえば海。
さざなみの倍音。
みなもがくだく光。
電線のない水平線。
トンビの声。ピーヒョロ。。

そんなふうに20個考えよう。
好きな森や好きなお店。    
好きな人のことを。

進歩できたら上出来。

進歩できたら上出来。



‪海辺の老詩人が‬
‪タコスを作りながら言った。‬

‪さてと、‬
‪どんなできそこないでも‬
‪どんな状況でも‬
‪できることがある。‬

‪進歩することだ。‬

‪脱獄犯は脱獄について‬
‪進歩することができる。‬
‪一歩ずつでも進歩できたら上出来だ。‬
‪おれのタコス作りも‬
‪一歩ずつ進歩してる。‬
‪うむ、上出来だ。‬

面接。

面接。

‪面接官が言った。‬
‪あなたの経歴を話してください。‬

‪お洒落なオカマのキツネ が‬
‪言った。‬

‪あたしが育ったのは「困難」。‬
‪学んだ学校はあたしの「失敗」。‬
‪めざしているものは‬
‪すみれ野原。‬

‪あなたが依存してる組織‬
‪いま、窮地でしょ。‬
‪使えるわよ、あたし。‬

いいこと教えてあげるわ。

いいこと教えてあげるわ。



‪いいこと教えてあげるわ。‬
‪#お洒落なオカマのキツネ が‬
‪子ぐまに言った。‬
‪絶望の渦中でも幸せはある。‬
‪このふわふわパンを‬
‪厚めのフルーツサンドみたいに。‬
‪あんたが何に気づき‬
‪何を大事にするかで‬
‪あんたの世界は変わる。‬
‪さ、取り組みましょうか、‬
‪この地獄に。‬
‪指のクリームをなめながら。‬

真っ黒の夜の世界に行くのかな。

真っ黒の夜の世界に行くのかな。



‪うろ覚えのドラマ。‬
‪幼稚園児の芦田愛菜たちは‬
‪親に内緒で重病のともだちに‬
‪会いに行く。‬
‪途中でゴッホのポスターを見る。‬
‪ともだちが言う。‬
‪ぼくは真っ黒の‬
‪夜の世界に行くのかな。‬
‪芦田愛菜が言う。‬

‪ゴッホの夜は青いの。‬

‪このなんの解決にもならない‬
‪圧倒的に美しい詩情。‬

‪この生の財産。‬

平穏はいつ来るの?

平穏はいつ来るの?

‪平穏はいつ来るの?‬
‪子ぐまが訊いた。‬
‪クマが言った。‬
‪来ないよ。‬
‪いつだって問題は起こる。‬
‪平穏は待つものじゃなくて‬
‪守るものさ。‬
‪嵐の日の灯火を守るように。‬
‪雨に打たれていても‬
‪きみの好きなひとは‬
‪きみの好きなものは‬
‪きみの好きな場所は‬
‪変わらないだろ?‬
‪その気持ちを守ることが‬
‪平穏さ。‬

悪い状況はいつまで続くの?

悪い状況はいつまで続くの?

‪悪い状況はいつまで続くの?‬
‪子ぐまが訊いた。‬
‪#お洒落なオカマのキツネ が答えた。‬
‪状況ってね、あんまり関係ないの。‬
‪問題はこころ。‬
‪こころが闇に囚われていれば‬
‪状況は悪化する。‬
‪こころが平静なら状況はただの状況。‬
‪でも。あたしらたいがい‬
‪闇に囚われてるからさ、‬
‪だから光と緑で中和するわけ。‬

正解は不自由。

正解は不自由。

‪#お洒落なオカマのキツネ が‬
‪子ぐまに言った。‬
‪正解ってね、‬
‪不自由なの。‬
‪息苦しい。‬
‪コルビジェの教会もロックもピカソも‬
‪正解でもなんでもないわ。‬
‪運命も世の中も‬
‪理不尽すぎて正解だけでは‬
‪太刀打ちできない。‬
‪あたしらパンダの‬
‪カルーセルに乗って‬
‪無責任と無意味なものを手にして‬
‪生き抜くの。‬

きみのこころの庭のこころの玄関の花の手入れを。

きみのこころの庭のこころの玄関の花の手入れを。



クマが静かに子ぐま言った。
問題は状況がどうかじゃないよ。
どうにもならないこともあるしね。
問題はなにをこころに
ともして生きるかさ。
どうにもならない時でもね。
さ、まずは、
きみのこころの庭の
こころの玄関の
花の手入れをしよう。

あたしは運命をきっかけにする。

あたしは運命をきっかけにする。

#お洒落なオカマのキツネ
子ぐまに言った。
ねえ?気づいてない?
困難の時、本質が見える。
困難の時、少し進化する。
最初に陸に上がった魚は
水の中を追われた魚だってさ。
困難って悪者か啓示か。
平穏って味方か淀みか。
あたしは運命をきっかけにする。
運命の被害者で終わらないわ。

美しさは、罪と恥。

美しさは、罪と恥。



‪子ぐまに‬
‪#お洒落なオカマのキツネ が言った。‬
‪あたしにとっての美しさはね‬
‪罪と恥なの。‬
‪明るいところで、みんなで‬
‪ほめたたえあうものなんて‬
‪たいしたものじゃない。‬
‪美しさは、まずいまずいと‬
‪思いながら動揺する個人的な秘密。‬
‪美しい花なんて‬
‪恥ずかしくて‬
‪見てらんないわよ。‬

しぶとくお洒落しながら。

しぶとくお洒落しながら。

‪子ぐまが言った。‬
‪どんな状況も解決できる‬
‪ひとになりたいよ。‬
‪#お洒落なオカマのキツネ が言った。‬
‪あら、あたしはね、‬
‪どんな状況でもしぶとく‬
‪お洒落しながら‬
‪生き残れるひとになりたいわ。‬
‪解決なんて一瞬のことで‬
‪問題は常にある。‬
‪解決なんかできないままでも‬
‪キリっとお洒落して生きたいわね。‬

やがてそこに草が

やがてそこに草が

どうしても気持ちを
切り替れないことがあるよ。
子ぐまが言った。
クマが言った。
大丈夫。やがてそこから
草が生えてくる。蔦がからんでゆく。
鳥が種を運び、花の芽が発芽する。
気づくとそこは緑茂る庭。
はじまりがどんなことでもね。
やがて花に残った午後の雨粒を
夕日が美しくうるませる。