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2019年9月の記事一覧
雨に追われるように。
モンサンミッシェルの
ホテルに泊まったことがある。
世界中から、
ここを訪ねてきた人たちが、
雨に追われるように、
世界中に帰っていく。
なんだかひとりだけ家に
おいてけぼりで、
雨を見てる子どもみたいな気分になる。
モンサンミッシェルの留守番を
ひとりでしてる
子どもみたいな気分になる。
下を向いて。
きつねはずっと下を向いて歩いていた。
何ににも触れたくないし
誰とも話したくなかった。
いつも余裕ないな。
自分が大事すぎて嫌だな。
変わりたいな。
変われないな。
きつねは下を向いて歩いていた。
涙がこぼれたかと思った。
いま、百日紅が満開なんだな
と思った。
また光の中で。
嵐の中で闇がクマに言った。あんたはやっぱりたいしたことない。より優れたやつはたくさんいる。全部無駄、失うだけだ。わかってるだろ?クマは思った。5弦を。ギターの5弦を張り替えよう。ズッキー二をチーズとアンチョビで炒めよう。嵐の後は後片付けをしよう。また光の中で。
こころが壊れたよ。
こころが壊れたよ。
子ぐまが言った。
クマが言った。
そうかい?
なら修復しよう。
ぼくらみんな繕いながら
生きているのさ。
とれた持ち手をカップにくっつけ
錆びた枝切りバサミを磨き
抜けた差し歯を取り替え
ハンカチを洗濯し
何度でも繕って
やりなおしながら
生きているのさ。
おれはおれが邪魔だな。
きつねは思った。
今日はさんざんな日だった。
でもおれはふつうの礼節を
欠いたり、おざなりなことも
たくさん。
落ち込むのだけは一人前なんだな。
おれはおれを大事でなくなりたいな。
おれはおれが邪魔だな。
花のために庭をつくり
風のために響きをうたい
誰かの笑顔のために働きたいな。