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名演の記憶

ものすごくたくさんではないけれど、それなりにたくさんの演奏会に出会う縁があったと思う。「ベスト**」まで厳密にランキングはできませんが、強烈に印象深かった演奏会を思い出してみようと思います。

ヘルシンキ・フィル in 1988

小学生のとき、地元の文化会館に彼らがやってきた。奇しくも当時の「花王愛の劇場」(日曜日夜のアニメ番組)は「牧場の少女カトリ」。結構良い場面で起用されていた名曲「フィンランディア」。
「カトリの音楽が生で聴けるよ」という両親の誘いに乗っかって聴きに行った。人生初の生で聴くオーケストラ、しかも海外のオケである。演奏はもちろんとても素晴らしかったのだが、ステージいっぱいに楽器を構えた「金髪碧眼のかっこいいお兄さんお姉さん」の記憶がもうすごくて・・・。
前プログラムが「フィンランディア」。後半のメインプログラムは中村紘子さんを迎えてグリーグのピアノ協奏曲だった。大編成のオーケストラを従えて紡ぎ出されるたった一人のピアノ。なんとなく「勇猛果敢」「パワフル」「王者」などなどピアノってこんなに力のある楽器だったのかとひどく驚いたものだ。

金昌国さんのフルートコンサート

これも1988年。中学校に入学してから父に連れて行ってもらった演奏会。
フルートとピアノという編成だったように記憶している。正直あまり興味はなく「連れて行かれた」気分だったが、金昌国さんのフルートが、とにかく素敵だったのだ。華奢で美しい美少女が儚げにふわふわと吹く楽器(周りのフルート少女がみんなその路線だったから)というイメージなんぞ宇宙の彼方に放り投げてしまうような、凛として艶やかな、どちらかというと男性的に思うくらいそのフルートの音はどっしりとして、でも荘厳なまでに美しかった。吹き込む息の音がまるで聞こえないのだ。息が全て音になった、今でも私はそんな表現をしている。力強さも大地に根を下ろした樹齢数千年レベルの巨木が静かに存在し続けるような力強さなのだ。「フルートってこんな音を出す楽器だったの!?」である。
 両親がドイツに留学していた頃に少々交流があったのだそう。
 あの音を超えるフルートの音には、未だ出会えずにいる。

ザビーネ・マイヤーのクラリネットコンサート

これも1988年だった(笑)。ホルンを吹き始めたんだけどなあ。
ザビーネ・マイヤーほか3名のクラリネットアンサンブルが、やはり地元文化会館に来てくれたのだ。当然「え〜ホルンじゃないの?」な気分だったのは言うまでもない(不届き者なのだ)。
以前に大編成のオーケストラが乗っていたステージにポツンと3人のクラリネット奏者。スタスタと出てきて、おもむろに始まった演奏。
フルートのときとはまた違う、ものすごく輪郭のはっきりとした密度の高い音は、しかしながら瑞々しく軽やかに弾むような音だった。指で突いたら弾き返されそうなくらいに。少し左右にスイングしながら吹くザビーネ・マイヤーは、とても可愛らしく見えた。
途中舞台袖から子供のぐずる声が聞こえて、曲間にサッと引っ込んだザビーネさん、小さな子供を抱っこして再び登場、少しの間抱っこしてステージ上を歩いてお子さんをあやしたのち今度は一人で一曲をサラサラっと吹いて、素敵だったなあ。

あんなにホルンを吹いてるくせに、ホルンはないのかよと言われそうですが・・・。

昔の思い出なのもあるのだろうけど、この3つの演奏会は何ものにも代え難い思い出の名演です。

心に残る演奏会というものまた書いてみたいな。

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