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フジロックは修行であるって、意外と言ってる人が少ない件。2011年フジロック体験記編Vol.2

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希望もクソも感じられない道を歩き続けて十分くらい。
すっかり旅の気分も消えて、背中から帰りたいオーラを放ちながらトボトボ歩いていた。
慣れない深夜バスで寝不足だし、何か気持ち足も痛い。メガネは雨で洗われて視界が悪い。おまけに霧が出ていて不気味である。
大体ロックフェスなのに、聞こえるのは雨音ばかり。
この世界には神はいないのかと思った時、私は約束の地に辿り着いた。

フジロッカーの聖地エヌ・プラトー

ここに祠を建てようと誓った。

初心者フジロッカーの皆様。皆様はとっくにご存知かもしれませんが、エヌ・プラトーは売店です。ここ重要。

ここさえくれば、フジロックに必要な装備は大体揃う。特にここ数年(とは言ってもコロナ前までしか知らない)はかなり充実しているので、忘れ物をすればここで揃えられる。
お湯もあるので、あったかいラーメンも食べられる。

ここを見つけた時、フィクションかもしれないが目の前で跪いた。
無神論者のくせに神を見た気がした。
というのは大袈裟で、私は生きるために醜く施設の中に逃げ込んだ。
そこには様々な人がいた。
私と同じく情弱のビギナーに、金にモノを言わせた割にって感じの成金に、シティーな感じが滲み出た強者。大阪住みの私はあの場所で誰よりもみずぼらしかったに違いない。


とりあえず雨具のコーナーを探した。
というか、ここで見つからなかったら死ぬしかない。残り少ない携帯電話のバッテリーを「フジロック 自殺」の検索で潰すところだった。
そして私は、雨具コーナーを見つけた。ちょっと泣いた。

とにかくダサい合羽しかなかった。

やっとの思いで見つけた合羽は、ダサすぎて目も当てられなかった。
フジロックはともかく、苗場の要素すら感じられない激しい謎のデザイン。質も1000円のモノと遜色ないように感じられる。

コレ着て3日間過ごすのか……。オシャレなフジロッカーばかりの中で、これかあ…。
しかも値段を見てギョッとした。

確か4500円くらいした。
4500円と言えば、大学生にとっては大金である。ただでさえ軍資金が少ない中、買っていいものなのか。途中でご飯が食べられなくなったりしないか。家に帰る時の電車賃は。

色んな不安がよぎったが、今の状況を打破することが最優先事項と考え、背に腹はかえられぬという覚悟のもと購入した。
何色かあった中で、まだマシに見えた黄色のものを買った。
あれから12年。この時の合羽は母のサウナスーツとなって数年後に行方不明になった。ホントどうでもいい。

私は精悍な顔つきでエヌ・プラトーを後にした。
4500円もかけたのだから、生きねばならぬ。フジロックという地獄を。
こうして私は、初めて木の盾を手に入れたリンクのような気持ちを持ったまま、フジロックのゲートを潜った。

下手くそだけど、ゲートを越えた者の顔

ここから先は、しばらく楽しかった。
毛皮のマリーズのライブ始まりの、志摩遼平のMCに痺れたり(ホワイト)、グリーン奥のグッズコーナーに並びながらKAISER CHIEFSを観たり(グリーン)、お目当てのThe Vaccines(グリーン)で外タレデビューしたり、念願のSHERBETSを観たり(ヘブン)。

ご飯も、美味しかった。
ただ残念なのが、ご飯もビールも雨で味が薄くなってしまうことだった。
2日目にはそれがフジの味だと気づくのだが。
おひとり様の非リアなフジの楽しみ方をここで覚えてしまった。
楽しい。超楽しい。
世の中にはこんなに音楽好きがいるんだなあ。

楽しい話なんて、#フジロックで検索すればアホほど出てくる。

その結果、初日の夜に事件が起きた。

被害者

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