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第36週 学者 長谷川三千子

はじめに

今週の学者は哲学者・評論家の 長谷川三千子さんです。


お生まれ

長谷川 三千子(はせがわ みちこ)さんは1946年3月24日 野上三千子さんとして東京にお生まれになりました。

この野上家は日本でも有名な学者一族だそうです。(参照文献 小谷野敦『日本の有名一族 近代エスタブリッシュメントの系図集』幻冬舎〈幻冬舎新書〉、2007年9月30日第1刷発行 ISBN 978-4-3449-8055-6)

祖父は法政大学総長を務めた野上豊一郎(英文学者)氏、祖母は小説家の野上弥生子さん。

お父さんは東京大学教授を務め、世田谷九条の会呼びかけ人であった野上耀三氏(物理学者、1918年 - 2008年)。

お母さんは市河三喜氏の娘、また穂積陳重氏の孫、渋沢栄一氏の曾孫で英語教育者の野上三枝子(1922年 - 2008年)さん。

夫は東京水産大学名誉教授の長谷川晃(長谷川西涯)氏。

また伯父に京都大学教授を務めた野上素一氏(イタリア文学者)と東京大学教授を務めた野上茂吉郎(物理学者)氏がいらっしゃいます。

また素一氏の妻は千葉亀之助氏の娘で、茂吉郎氏の妻は労働運動家高野岩三郎氏の娘だそうです。




学者になられるまで

長谷川 三千子さんは1969年、東京大学文学部哲学科を卒業され
1972年、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了されます。

東京大学で教えを受けた寺田透氏について「師ともライヴァルとも仰いでいる」と述べておられるそうです。


そして1975年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退、東京大学文学部助手になられます。

学者になられてからのご活躍


長谷川 三千子さんは1978年埼玉大学教養学部講師になられ、
1980年埼玉大学教養学部助教授になられます。

1983年3月に論文「戦後世代にとつての大東亜戦争」(『中央公論』)を発表されます。

また1984年5月『中央公論』「男女機会平等法は文化の生態系を破壊する」を発表され、フェミニズムを批判する立場をとられます。

このように欧米における近代思想に批判を加えつつ、言語を主題に日本における思想や哲学のありかたを探求することを自分の学問対象に選び、論文等を発表されています。

1987年、埼玉大学教養学部教授になられます。

『中央公論』1989年7月号から12月号の「OPINION」、『Voice』1993年1月号から12月号の「巻頭の言葉」を担当されました。

また『わしズム』(幻冬舎)1号から14号に「長谷川三千子の思想相談室」を連載されました。


1996年、『バベルの謎』(中央公論新社)により、第9回和辻哲郎文化賞を受賞されています。

『産経新聞』オピニオン面「正論」執筆者を務めておられます。

アメリカの同時多発テロを受けて2002年1月に発表された「『アメリカを処罰する』といふメッセーヂが日本に突きつけたもの」(『正論』)で長谷川さんは

「あの全世界に放映された映像は、言葉で語る以上に明瞭に『これは傲り高ぶるものへの神の処罰である』といふメッセーヂを叫んでゐたのである」(265頁)、「東京裁判において死刑の宣告を下されるべき者がゐたとすれば、トルーマンをはじめとするこれら残虐行為(引用者注:東京大空襲と原爆投下)の企画者、責任者たちであつて、東条英機元首相をはじめとする七人の日本人ではなかつたのである」(271頁)

と書かれました。

この記事によって保守派の間に波紋を呼び、西尾幹二氏、西部邁氏、田久保忠衛氏、小林よしのり氏、入江隆則氏、東谷暁氏、佐伯啓思氏、阿川尚之氏らが論争を展開したそうです。

長谷川さん自身は、保守派はみな同じ土台に立っており、論争は成り立たないとの見解を表明したそうです。

また阿川氏に対しては小林氏との対談で批判を加えておられるそうです。

そのほか、大東亜戦争(太平洋戦争)、靖国神社、憲法、裁判員制度、皇室などの諸問題に関しても発言しておられるそうです。


2011年、埼玉大学教養学部教授を定年退職、同名誉教授になられます。


遠い親戚にあたる安倍晋三氏の首相再任を要望し、2012年には「2012年安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」の代表幹事として名を連ねたことが知られています。

また安倍氏の首相再任が実現した後も応援団を自認しておられました。

文芸評論家の小川榮太郎氏が修士を取得した際の指導教官としても知られています。

また長谷川さんも小川氏も歴史的仮名遣いを使われます。
2013年、NHK経営委員に就任されます。過去にNHKの『クローズアップ現代』での放送の内容に不満を訴えると共に受信料の支払いを拒否する意志を示していたことも知られています。

2014年男女共同参画社会に批判的で「女性が家で子を産み育て男性が妻と子を養うのが合理的」と主張され、また、女性に社会進出を促す男女雇用機会均等法の思想は個人の生き方への干渉だと批判し、政府に対し「誤りを反省して方向を転ずべき」と求めてました。そしてこの長谷川さんが男女共同参画社会基本法を批判するなどしたことに対して、約800件の視聴者の意見がNHKに寄せられ、その大半が批判的な内容であったと言われています。

また同年野村秋介氏らが立ち上げた政治団体「たたかう国民連合・風の会」を『週刊朝日』が「虱(しらみ)の党」と表現したため、コケにされた(誇りを傷つけられた)として野村氏が抗議し、発行元である朝日新聞社の東京本社に乗り込んで中江利忠社長(当時)ら経営陣から謝罪を受け、その際に拳銃自殺をした事件について「彼の行為によって我が国の今上陛下は人間宣言が何と言おうが憲法に何と書かれていようが再び現御神となられた」と追悼文集に寄せたことも知られているそうです。



長谷川 三千子さんの著書

著書は以下の通りです。

単著
『からごころ ―日本精神の逆説―』(中央公論社〈中公叢書〉、1986年/中公文庫、2014年)
『バベルの謎 ―ヤハウィストの冒険―』(中央公論社、1996年/中公文庫、2007年)
『正義の喪失 ―反時代的考察―』(PHP研究所、1999年/PHP文庫、2003年)
『民主主義とは何なのか』(文春新書、2001年)
『長谷川三千子の思想相談室』(幻冬舎、2007年)
『日本語の哲学へ』(ちくま新書、2010年)
『神やぶれたまはず ―昭和二十年八月十五日正午―』(中央公論新社、2013年/中公文庫、2016年)
『九条を読もう!』(幻冬舎新書、2015年) 
共著
『憲法改正』(中西輝政編、小林節・櫻井よしこ・福田和也・松本健一(共著)、中央公論新社、2000年)
『あなたも今日から日本人』(致知出版社、2000年)、西尾幹二との対談
『自由は人間を幸福にするか』(小浜逸郎編、佐伯啓思・竹田青嗣(共著)、ポット出版、2007年)
『〈激論〉 日本の民主主義に将来はあるか』(海竜社、2012年)、岡崎久彦との対談
「哲学を教へるといふこと」『形而上学の可能性を求めて──山本信の哲学』(工作舎、2012年)
『本当は怖ろしい日本国憲法』(ビジネス社、2013年)、倉山満との対談
『この世の欺瞞 「心意気」を忘れた日本人』(PHP研究所、2014年)、金美齢との対談

翻訳
マイケル・ゲルヴェン(en:Michael Gelven)『ハイデッガー『存在と時間』註解』 長谷川晃共訳 (日清堂書店、1978年)


めぐめぐがすごいと思う長谷川 三千子さんのこと

1日本ほぼ唯一の学者家族に生まれられご自身も学者として活躍されていること

2学問的内容は西洋的なのに、日本的な主張で有名になられていること

3ある意味ほぼ唯一の保守派の女性学者としてフェミニズム批判などを行わ定ること



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