遣らずの雨
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遣らずの雨

 朝から降り続いている雨に、庭の柿の木が濡れている。畳も座布団もじっとりとして冷たい。茶の間でつまらなそうに読んでいた文庫本から政男は視線を上げた。それから卓袱台に置かれた湯飲みを取り上げて番茶を啜る。そばで繕い物をしていた多恵子もつられて湯飲みに手を伸ばした。冷めた番茶は多恵子を惨めな気分にさせた。
「煎れ直しましょうか」
 膝の上の着物を軽くたたんで除けると、お盆を引き寄せた。急須に入ったままの茶殻を茶溢しにあけ、茶筒の蓋を取る。ポットを軽く揺すってみれば、二杯分の番茶を煎れるには頼りない重さである。茶筒の蓋を締め直して多恵子は腰を浮かせた。
「いや、もう出るからいい」
 浮かせた腰を戻し、政男の視線を追って窓の外を見る。西の空が明るい。
「ああ、上がったんですね」

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遣らずの雨

櫻居 惠

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櫻居 惠

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小説の一次創作をしています。 「pixabay」「いらすとや」より、写真・イラストをお借りしています。