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めぐみ
2024年7月8日 14:12
その日の僕はひどく疲れていた。仕事で予想外のトラブルがあり、会社を出たときには22時をすぎていた。家に向かう電車の中で「今から帰ります」というLINEを妻に送ったが、返信はなかった。彼女がすぐに返信をよこさないことは珍しいことだったので、一瞬、どうしたのかなと思った。しかし、なんといっても、いまは22時をすぎているのだ。お風呂にでも入っているか、あるいはもう眠っているのかもしれない。家
2022年3月7日 14:42
「楓さん、俺のこと好き?」と、聡はときどき、わたしに聞く。「うん。好きだよ」と、わたしは何の迷いもなく答える。そうすると、聡は、なぜか少し不機嫌そうな顔をする。「なに? 自分から聞いてきたくせに、なんでそんな顔するの?」「楓さんさ」聡は言う。「もっとさ、怒りたいときは、怒っていいんだよ?」「怒るって、何を?」*聡がこのアパートに住み着いて、もうすぐ半年になる。聡は、
2022年3月18日 18:44
夢の中で、楓さんは泣いている。泣きながら、こう言う。「ねえ、わたしたちの関係性ってなんなんだろう? 聡は、いったいいつになったら、わたしのことを恋人にしてくれるの? もうわたし、待ちくたびれちゃったよ。さよなら」と。俺は、玄関から出ていこうとする楓さんを、なんとかして止めなくては、と思って立ち上がる。「待って」と、俺は言おうとするのだけれど、喉が塞がったようになって声が出ない。追いかけよう
2022年3月24日 18:37
初夏を迎えた頃、聡の就職が決まった。いくつかの企業から内定をもらって検討した結果、来年の春から、大手企業の研究員として働くことに決めたのだという。「大手企業」というのは、文字通りの大手企業で、みんながだいたい名前を知っているような電子機器メーカーだった。「来年になったら、こんなふうに呑気にはしていられないんだろうなあ」と、聡はまだ働いてもいないというのに、頻繁に言うようになった。すべて
2022年3月27日 23:43
コーヒーフロートってさあ、どうやって食べるのが正解なのか、ぜんぜんわかんないよね。このアイスの部分を全部先に食べちゃうと、ただのアイスコーヒーになっちゃうじゃん。なんかそれだと損した気分になるから、こうやって、ちょっと溶かしてから食べるのがいいよね、そうすればさ、ちょっとカフェオレみたいな感じになるもんね。あ、それか、アイスとコーヒーを交互に口にいれるとかも、いいよねえ。「彼女」はそう言って、
2022年4月1日 01:45
”楓さん、いまどこにいる? いま、電話してもいい?”画面に表示されたメッセージ通知を眺めながら、聡が、わたしのことを、どうしようもないくらい好きで好きでたまらない、とかだったらよかったな、なんてことを、つい思ってしまう。そんな世界線のわたしだったら、今みたいに「いま電話していい?」なんてメッセージがきたら、わくわくしながら瞬時に「いいよ」と返信するか、もしくはこちらからすぐ電話をする。きっ