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現役銀行員が考える。消える銀行、残る銀行~読書記録vol.7~アントフィナンシャル

銀行が変わらないなら、われわれが銀行を変える

これは、元アリババ会長のジャック・マーの言葉。

銀行員の私としては、ドキっとくる言葉。


現役銀行員の私が言うのもナンだけど、これからの銀行業界はかなり厳しいと思う。銀行の中にいる人間でさえ、危機感を持っている。従来の収益構造では利益を出すことが難しくなってきていると言われて、はや10年ほど経っているだろうか。

そんな中、ある本を読んで、さらに危機感をつのらせた。


『アントフィナンシャル』-1匹のアリがつくる新金融エコシステム

中国の新しい金融を知りたい方、バリバリ日系の銀行員の方は、是非読んでみて欲しい。


以下、この本のまとめと感想をサラっと書いたので、もし良ければサラっと読んでみてください。



◆読書感想文

「GAFA」と言うと、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字だと知っている人は多いでしょう。今イケイケのアメリカ企業ですよね。

では、「中国のGAFA」と呼ばれている企業群を知っていますか?

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「中国のGAFA」と呼ばれている企業群は、「BAT」と呼ばれています。

「BAT」は、バイドゥ、アリババ、テンセントの頭文字です。
バイドゥ:検索サービス
アリババ:ネット通販
テンセント:SNS

なかでも、中国社会での影響力が大きいのが、アリババの金融関連会社である「アントフィナンシャル」!!

アントフィナンシャルの業務って、本当に多岐に渡っています。QRコード決済の「アリペイ」をはじめ、融資、資産運用、保険。

・・・あれ?銀行と業務内容かぶってない・・・?

あくまでもテクノロジーによって金融、そして社会の在り方を大きく変えるのが彼らのミッションなのです。「中国でキャッシュレス化が進み、一般の人々が金融サービスの恩恵を享受できるようになったのは、この企業のおかげと言っても過言ではない。」

すごいな、アントフィナンシャル。


◆一番心に残った言葉

この本「アントフィナンシャル」のどこが一番心に残ったかって、ココ。

「銀行が変わらないなら、われわれが銀行を変える」

冒頭にも書いた、この言葉が、一番心に残りました。

 中国の中小企業は金融サービスから縁遠かった。アリババは加盟しているネットショップの売上やキャッシュフローなどを確認し、彼らの資金不足という問題を目の当たりにした。
 この問題の解決に取り組むため、銀行と提携してデータを基盤とした融資モデルを構築しようとした。だが結局は物別れに終わってしまう。「実績のないあなたがたの言うことを信じて、あなたのやり方で金を貸すなんて、ちょっと無理ですよ」というのが銀行側の言い分だった。
 ジャック・マーは「銀行が変わらないなら、われわれが銀行を変える」という信念のもと、単独で「阿里小貸(アーリーシャオダイ)」というマイクロクレジットサービスを開発。
(flierより)

この話を聞いて、何ていうか、納得した。
「実績のないあなたがたの言うことを信じて、あなたのやり方で金を貸すなんて、ちょっと無理ですよ」というのは、古い体質の銀行がまさに言いそうな言い分。

これからの銀行業界は厳しいだろう、と冒頭に書いたが、それでも私は、今働いている銀行の仕事が好きだ。だけど、これからは、「消える銀行、残る銀行」というのが以前にも増して明確になってくるだろう。

そもそも、従来の銀行の収益モデルは、以下の3つ。

1.貸出金利と預金金利の差による収益
2.外国為替による収益
3.金融商品やサービスの提供による手数料収入

低金利が続いている今、1による収益は限りなく低い。
2による収益だって、これからメスが入るところで、どんどん安くなるだろう。
3だってそう。フェデリティ証券は、投信販売手数料を撤廃した。

今後こういう流れは加速していくと思う。



では、「消える銀行、残る銀行」の違いはと言うと、それはたった1つのシンプルなこと。

「変化に対応できるかどうか」

これにつきる。

私が今いる銀行が生き残れるかどうかはまだ分からないが、「変化に対応しようとしている」姿勢は、経営陣から読み取れるので、まだしばらくは今いる銀行で働き続けようと思っている。(なんて上から目線w)


非常に上から目線のコメントを書いたところで改めて、この本の要点を書いて、読書感想文を終わりにしようと思います。

◆要点3つ

以下、flierから要点です。

1.「アリペイ」はもともと、アリババが手がける各種ネット取引における「信用」の問題を解決するために生まれた。

2.QRコードを活用し、リアル店舗でも利用できるようになったアリペイは、またたく間に普及した。「財布を持たずに外出」が、中国人の新たな習慣となった。

3.「ジーマ信用」は、信用評価の対象と見なされてこなかった人々のために生まれた、各種データから信用度をスコア化し、高スコアの者は敷金なしで賃貸住宅を借りることも可能となった。

※経済的信用は、信用履歴、行動傾向、契約等の履行能力、経歴の特製、人間関係という5種類のデータと強い相関を持つ。



読書感想文はサラっと1,000字ぐらいで書くのが目標なのですが、今日も気がついたら2,000字こえていました…!

中国の新しい金融を知りたい方、バリバリ日系の銀行員の方は、是非読んでみてください。


前回の読書記録はこちら。


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