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【夫のターン】梅雨の終わりと倦怠感ワンダーランド

 こんにちは、ヒロタアタルです。 
 梅雨の長雨、低気圧、それにともなう重たい肩こり、そんな状況の中で、読むのがつらい日々が続いていた。こんなとき、40年ちょっとの人生を振り返ると、村上春樹の小説は読書の勢いをつけてくれるブースターであったと、ふと思い出した。折しも、村上春樹の待望の新刊『一人称単数』が発売されるタイミング、嬉々として僕は購入したのである。これさえあれば、いままで感じていた読書への倦怠感はほどかれ、読書が日々の生きがいに変わるはずである。この新刊は梅雨の長雨の合間に時折顔を出す太陽のようなものになる……はずであった。
 しかし、その望みはむなしくも砕け散った。つまらなくはないし、面白い作品もある、『品川猿の告白』なんて最高の部類だ。でも、だが、しかし、感想がいまいち書き出せないのだ。読むのもつらいが、どうも書くのも億劫になってしまっているようだ。

 そんなぼくにうってつけの新刊があることをtwitter情報で知り、梅雨の晴れ間の休日、書店へと自転車を走らせた。その本の名はズバリ『書くのがしんどい』(PHP研究所)。ビジネス書などのヒット作を数々手がけておられる編集者の竹村俊介さんの新刊だ。「書くのがしんどい」と思う際に立ちはだかる壁を整理し、もくじだてし、それについての竹村さんなりの解決へのサジェスチョンを示してくれている本だ。レイアウトもよく、語り口も流れるようで、「読むのがつらい」と感じていたぼくでさえスラスラと読めてしまったくらいなので、めっぽう読みやすい本であることは保証する。  
 竹村さんがあげる「書くのがしんどい」をつくる壁は「書くことがなくてしんどい」「伝わらくてしんどい」「読まれなくてしんどい」「つまらなくてしんどい」「続かなくてしんどい」の5つだ。このもくじだてにそって、何かを書く以前のネタの考え方や集め方にはじまり、文章を書く際の技法、そして書くことを続けるための心構えなど、書くことを楽しむためのノウハウが凝縮されている。詳細はぜひ実物を読んでいただきたいので多くは語らないが、印象に残った点を2つ紹介することにする。  
 ひとつは「書くことがなくてしんどい」という章で語られている「インプット」の重要性である。尾籠ではあるものの、ぼくにはしっくりきたのが「飯を食わず運動もしていないのに、便座に唸っていてもう○こは出ない」というものだ。これはまさに、ここ数週間のぼくのことである。読むのがつらいという状況下で、インプットもままならない。そんな状態で「書こう!」とipadに向かっても何が出てこようか。結果、Netflixをタップして韓国ドラマを見てしまうのが関の山。何かを出すには、何かを入れなければならない。我々の体が一番知っていることではあるが、いつの間にやら脳裏から抜け落ちてしまう。インプットなくして、アウトプットなし、である。  
 もうひとつはカバーのソデにもある「書くな。伝えろ。」という言葉に象徴される書き手が持つべきマインドである。ぼくもそうだが、みなさま方の中にも、「どうだ書いたぞ、読んでみろ!」と自己満足的に文章をさらしてしまうことがないだろうか。たしかにそれは「書く」ということをしているが、そこに読む相手という発想がない。「いいんだ、誰も読まなくて、だって自分が書きたいこと書いてるんだもん」と強がって、noteにアップした途端、いいねがついたかどうだか気にしている自分がいる。誰かに読まれたい、楽しませたいという心根があるのだ。そのためには「書いた」だけではだめで、「伝えているか」を意識しなければならない。「伝える」ためのヒントをもう一度、この本を読み直してインプットしよう。そんなさまざまな気づきを与えてくれた一冊であった。  

 ここまで書いてきて、こうした発想は、英語学習、英語運用にも言えることではないかとはたと気づく。大学入試改革が頓挫したものの、少し前まで「英語の4技能評価」で世間は大騒ぎだった。どうしたら作文が…、どうしたらスピーキングができるようになるか、という質問が殺到した。「作文には作文の、スピーキングにはスピーキングの対策本がありますよ、うんぬん」と紹介してやりすごした。今思えば、そういう人にはそもそもの「マインド」をたたき直す必要がありますよ、と言ってあげるべきだったのではないか。そう「飯を食わず運動もしていないのに、便座に唸っていてもう○こは出ない」のだ。書くにも、話すにも、「ネタ」が必要で、それを表現するための型もしっかりインプットすることが重要なんだ。どんなに立派な寿司職人もネタがなければ寿司は握れないのだ(←これも竹村さんの比喩)。  
 そして、もう一つ「相手に伝わるか」という発想も英語を学び、運用する際に重要だ。日本語をそのまま意味通りに英語に直接「変換」しても、相手に、とくに外国人には伝わらないことが多いように思う。伝わるようにどう言おうか、どう書こうか、この発想がないと、伝わらないもどかしさは永遠にとりはらえないだろう。インプットしたことをそのまま使うのではなく、どうすれば相手に伝わるかを考えながら、縦横無尽に言い換え、書き換え、基本の型を使い倒すことが大事なんだと思う。  

 読むのがつらいからはじまり、書くことの指南書に出会い、アウトプットとして、このnoteを書き始めたら英語学習にもつながる発想を得ることができた。そうこうしているうちに、梅雨もあけたようだ。天気もいいし、出すものも出せた! 「あ〜、スッキリした」というのが今の心境である。それでは、また次回のぼくのターンまで、ごきげんよう! 

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