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書籍紹介『【特別支援教育】実践ソーシャルスキルマニュアル』

『【特別支援教育】実践ソーシャルスキルマニュアル(上野 一彦/岡田 智)』という本の紹介です。

思い入れの本

もう10年以上前、初任者の頃にソーシャルスキルトレーニングを研修会で学び、その帰りに本屋で購入しました。

個人的な話ですが、妻の両親と初めてお会いしたときに、支援学校で働かれていた義父から「なぜ特別支援の道に進んだのか?」「今どんなことに取り組んでいるのか?」といった教採面接を思い出すようなやりとりの中でこの本を思い浮かべながら「ソーシャルスキルトレーニングです」と答えたのはいい思い出です笑。

そんな思い入れのある本ですが笑、当時と今とではソーシャルスキルという言葉の認知度が全然違います。あれから10年、ソーシャルスキルと題された本はそれこそ本屋へ行けば溢れかえるようになりました。ライフスキルやキャリア教育といった言葉も登場してきました。

その間に、何度か研修会に参加しましたし、いくつか本も読みました。しかし、僕がソーシャルスキルトレーニングに初めて出会う人におすすめの本として、この本は変わらず一番手の位置にいます。

本の目次と内容

この本は、まずソーシャルスキルについて解説があり、続いて具体的なソーシャルスキルトレーニングとなるゲームや取組みなどのプログラムが、最後に子どもたちの目標となるスキルを特定化するソーシャルスキル尺度というチェックリストが掲載されています。

はじめに
第1章 ソーシャルスキル指導をする前に知っておいてほしいこと

1 なぜソーシャルスキル指導をするのか
2 軽度発達障害と呼ばれる子どもたち
3 すべての指導はこころと行動の理論を背景としている
4 ソーシャルスキル指導とは何か
5 ソーシャルスキル指導のポイント
6 ソーシャルスキル指導の評価
第2章 ソーシャルスキル指導の実践プログラムNo.1 めあてを決めよう/集団・セルフ・仲間・コミュ
No.2 挨拶をする/集団行動
No.3 見る修行/セルフコントロール
No.4 聞く修行/セルフコントロール
No.5 負けても平気/セルフコントロール
No.6 あっ、フライング!!/セルフコントロール
No.7 発表するときは?/集団行動・コミュニケーション
No.8 話を聞くときは?/集団行動
No.9 話しかけるときは?/コミュニケーション
No.10   ものを借りるときは?/集団行動
No.11    仲間に入るときは?/仲間関係
No.12    自己紹介をしよう/集団行動
No.13    名前を覚えよう/仲間関係
No.14    名前で呼ぼう、返事をしよう/仲間関係・コミュニケーション
No.15    あったか・チクチク言葉/集団行動・セルフコントロール・仲間関係・コミュニケーション
No.16    仲間と動きを合わせよう/仲間関係
No.17    助けてらヘルプミー!!/仲間関係
No.18    いろんな気持ち/セルフコントロール
No.19    みんなで決めよう/コミュニケーション
No.20    ソーシャルスキルってなあに?/集団行動・セルフコントロール・仲間関係・コミュニケーション
No.21    わかりやすく伝えよう/コミュニケーション
No.22    提案しよう/コミュニケーション
No.23    上手な聴き方/コミュニケーション
No.24    感情ぴったんこ/セルフコントロール
No.25    協力してやりとげる/仲間関係
No.26    私とあなたの共通点/仲間関係
No.27    仲間のことを知る/仲間関係
No.28    自分を表現する/仲間関係
No.29    こんなときどうする?/集団行動・セルフコントロール・仲間関係・コミュニケーション
No.30    大事な意見は?/コミュニケーション
No.31    相手の気持ちになってみよう/仲間関係
No.32    こころを読めますか?/仲間関係・コミュニケーション
No.33    気持ちの温度計(共感する)/セルフコントロール・仲間関係・コミュニケーション
No.34    私のストレス対処法/セルフコントロール
No.35    これ常識? 非常識?/集団行動
No.36    会話のマナー/仲間関係・コミュニケーション
No.37    子どもプロデュース/仲間関係・コミュニケーション
No.38    上手にありがとう/仲間関係・コミュニケーション
資料 小・中学生用 指導のためのソーシャルスキル尺度
おわりに

第1章では、発達障がいについての説明や、ABC行動分析、トークンやタイムアウト、プロンプト、モデリング、シェイピングなどの支援教育をしていく上で必要になる知識の解説、「教示」「モデリング」「リハーサル」「フィードバック」「般化」というソーシャルスキルの指導の流れや「活動型」「教授型」「機会利用型」のそれぞれの指導の特徴、LDやADHD、ASD(本文では高機能PDDと記載)、軽度知的障がい・境界知能、運動の苦手な子、不登校やODDへと指導配慮例が紹介されています。

第2章では、幼児・小学生(低学年)/小学生(中学年)/小学生(高学年)/中学生のそれぞれの段階に合わせて、集団行動/セルフコントロール/仲間関係/コミュニケーションの4つの指導領域に適したプログラムが掲載されています。この4つの指導領域は巻末の資料 小・中学生用 指導のためのソーシャルスキル尺度とも対応しています。

こんなに内容があると読むのが大変かもと思われるかもしれませんが、図やイラストが多くて読みやすく、意外と薄い本です笑。

おすすめプログラムの紹介

いくつかおすすめのプログラムを紹介します。

あいさつや発表をする際の声の大きさ、座る姿勢図で示すのは、今や教室掲示で当たり前になっていますが、具体的例を示して練習しないと難しい子がたくさんいますよね。

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(画像は特別支援教育「すぐに使える!プリント+ビデオクリップ」より)

こちらの説明や話を見たり聞いたりするのが苦手な子には、見る修行の飛んでいるものが何かを答える「フライングクイズ」や聞く修行の「落ちた落ちた」などがおすすめです。ゲームを通して楽しみながら、見る力や聞く力、ワーキングメモリや自制心といった学ぶための基礎となる力のトレーニングにもなります。

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(画像はPinterestより)

負けるのが嫌でかんしゃくを起こす子たちには、負けても平気の「どーんじゃんけん」がおすすめ。2チームに分かれ、線を挟んでチームごとにたて1列に並び、各チームの先頭が床の線の上を進み、相手チームと出会ったらジャンケン。勝てば前へ進み、負ければどいてチームの1番後ろに並び、負けチームの先頭の人は続いてスタート、といった感じで相手の陣地まで入ったチームの勝ちです。最初から最後まで勝ち続けることはそうそうないので、必然的に勝ったり負けたりを繰り返し経験することになります。

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(画像は日本スポーツ協会より)

あったか・チクチク言葉(最近はふわふわ言葉・チクチク言葉とも)では、あった言葉とチクチク言葉のどちらがいいかを子どもたちと確認し、自分たちでそれぞれに分類する活動などをしておく(それを掲示しておく)と、それ以降で言葉でのトラブルがあったときに子どもたちも自然と振り返られるようになっていくので、早い段階で一度取り組んでおくのをおすすめします。

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(画像はヤサカ ライフ スキル デベロップメントより)

あったか・チクチク言葉と同じく相手の気持ちを考えたり、自分の感情をコントロール(アンガーマネジメント)するプログラムの、いろんな気持ち感情ぴったんこ気持ちの温度計(共感する)私のストレス対処法などもおすすめで、僕も道徳などでの気持ちの学習で活用しています。

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(画像は親子でつくるソーシャルスキル教材より)

もちろんそれ以外にも活用できそうなプログラムが指導の展開(導入→教示→実践→フィードバック→般化のような流れ)と共に紹介されています。

まとめ

ソーシャルスキルトレーニングの本の紹介いかがでしたか。個人的に思い入れのある本ですが、つい先日、職場の先輩が「ソーシャルスキルのチェックリストが…」と話していたので、この本をお貸しすると「私もこの本を探してたの!持ってたのだけど、誰かに貸したまま帰ってこなくて…」と返ってきて、2人でこの本について語りました笑。

本当にシンプルで使いやすい本だと思います。ソーシャルスキルってよく聞くけど何をしたらいいのかわからない?という場合は、まず手に取ってみることをおすすめします。



表紙の画像はAmazon.co.jpより引用しました。