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ルパンの影として生きた作家 2020/04/16

早く寝たので早く起きる。少しスッキリした気分。なんかこう、何も考えなくて良いシンプルなものが食べたくなって朝は卵かけご飯を食べる。おいしい。昼はお茶漬けを食べる。おいしい。夜はその反動かなんかジャンクなものが食べたくなってコンビニの塩焼きそばとかポテチをぽりぽり。大しておいしくない。

それにしても働きながら毎日3食をこなしていくのは本当に面倒くさい。ただ、面倒臭いのは平日が慌ただしいからであって、休日ともなると何食べようかは楽しみのひとつなのだから、慌ただしいことが諸悪の根源なんだろうな。

仕事終わってまたもや脳みそが疲れてしまったので、さっさと寝て、夜中に起きて本を読む。ジャック・ドゥルワール『いやいやながらルパンを生み出した作家;モーリス・ルブラン伝』読了。

なんとなく細切れで、すべてが断片的なのでいまいち盛り上がらないなぁ、と思ったらそれもそのはず、とにかく資料が存在しないらしい。ルパンは世界的な名声を得ているのにその作家のことはほとんど記録が残っていない。ルブラン自身がほぼ表舞台に出てこなくなってしまったので。

出来るだけ恣意的な省察を避け、資料自らが語り、そこからおのずとルブラン像が立ち現れる、本来なら著者は、そんな伝記を書きたいと思っていたかもしれない。しかし、気の遠くなるような綿密で誠実な調査の末に見つかった書簡は、公開および個人コレクション両方合わせてたったの五五通(初版刊行時)、それにインタビュー記事は八本だけだったというから、この仕事がいかに無謀なものに思えたか想像に難くない。
P.411

結果的に、出版社との契約ややりとりなどのエピソードが占める割合が高くなってしまい、アシェット社に対してはいつも愚痴を言う人、みたくなっている。

八月十一日、アシェット社に宛ててルブランは書いている。「『緑の目の令嬢』はどうなっていますか」。六月の初版八千部はすぐに売り切れ、七月に三千部を増刷し、現在さらに六千部を刷っているところだと知らされた。ルブランは、「お便りには感激しました。さらに六千部の増刷ということは、合計すると一万七千部です。ルパンもの十二作目にしては、見事です。なんの宣伝もしてもらえなかったのですから」と答えている。
P.327 - P.328

こんな感じで、いつもアシェットは宣伝してくれないとぼやく様子が本書でも複数回出てくるものだからケチくさいというか、しわんぼうな印象になってしまう。でも、他の記録が残っていないだけなのかもしれないし、作家とは大抵そんなもん、なのかもしれない。(ちなみにしわんぼうって吝ん坊と書くらしい、初めて知った。)

いずれにせよ、ルパンの成功によって純文学を志していたルブランはなりたくなかった大衆作家になってしまい、そこから逃れることもできなくなってしまった。近しいけれど違う夢が叶う悲哀。この「作家としての成功を願い、売れているのに不幸な人」というのは『笑ゥせぇるすまん』のエピソードとかに出てきてもおかしくない話だな、なんてことを思いつつ読了。

恋愛の中で僕がとりわけ好きなのは、女を惚れさせることだね。そのために、僕は、抗えない魔法の力を発揮して、どんなに身持ちが堅い女も気を許してしまう言葉を語る。どんなにつれない女の心にも、ぽたりぽたりと落ちる熱い涙を流すことができる」。
P.69

ルブランが26歳の頃の手紙。最初に読んだときは意外と調子に乗った感じの人なのかと思ったのだが、読み終えた今は、こういうある種、どこにでもいる女好きのありふれた男の気質が、成功によって暗く変質してしまったようにも思えて、全く印象が変わった一節だった。

自分の好きなことを表明すると、気の合う仲間が集まってくるらしい。とりあえず、読んでくれた人に感謝、スキ押してくれた人に大感謝、あなたのスキが次を書くモチベーションです。サポートはいわゆる投げ銭。noteの会員じゃなくてもできるらしい。そんな奇特な人には超大感謝&幸せを祈ります。