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講演のこと考えてたら「ことば」と世界の認識をめぐるあれやこれやにいきついたの巻。

突然なんですが、今度登壇するんです。(宣伝)

しかも、あの嶋浩一郎さんと。いやー、我ながら驚きます。

もともと嶋さんには今から遡ること6、7年前くらいに、僕の仕事の集英社 FLAG SHOPのCMをお願いしたというご縁があるのだけど、頼む方は覚えていても頼まれる方はそれが仕事なわけで、まぁそんなの嶋さんは覚えちゃいないだろうなぁ、とも思う。

でも、大切なのはそんなことじゃなくて、ボケーっとGWを過ごしていたら僕の中でSNS界の女帝感出てるちきりんさんがこんなことを呟いてたのを発見。

あ、はい。おっしゃる通りでございます。まぁ準備は大事よね、準備は。
嶋さんのことも、モデレーターをやってくれるっぽい最所さんのことも、
全く知りませんじゃ話にならないじゃないですか。
それくらいは僕にもわかります。

と言うわけで、とりあえず本を読みましょう。
僕にできることは、本を読むことか、お酒を飲むことか、
お酒を飲みながら本を読むことくらいしかないのですから。

と言うわけで、じゃじゃーーーん!

なんと、うちの会社から出ているじゃありませんか。
(↑宣伝、でも今回嶋さんの近著を探すまで知らなかった)

でも宣伝抜きで、面白かった。そもそも実務家としての嶋さん、研究者としての松井さんと言う2人が共通のテーマで語ると言うのが良いんだよね。プラクティカルとアカデミックの両面から語ることでリアリティもロジックも担保されてる。

「社会記号」なんて言われると小難しいけど、本書の定義によればこんな感じ。

生まれた時には辞書に載っていないのに、社会的に広く知られるようになり、テレビや雑誌でも普通に使われ、見聞きするようになることばのこと。
P.6

要は消費者のインサイトをことばに落とし込んだもの。帯に書いてあるような加齢臭とか、女子力とか、草食男子とか、イクメンとか。

でもこの消費者のインサイト≒潜在的な欲求って言われりゃしっくりくるけど見つけるのは大変なわけですよ。なぜなら消費者自身、自分の欲求をうまく言語化できないから。

自分の潜在的な欲求を言語化することができる消費者なんてほとんどいないわけ。存在しないサービスのニーズなんて消費者アンケートからは出てこない。でも、実際にそんなサービス、製品が世に出ると、私が欲しかったのはこれだ!ってなるのです。

だから潜在的な欲求を見つけ出すことはとても難しいんだけど、そういった消費者インサイトをことばに落とし込むのは雑誌が得意だよね、と言うのが嶋さんの見解。

これに関しては本当に同意で、昨今売れないってことしか言われなくて雑誌=オワコンみたいな話ばかりだけど、優秀な雑誌編集者って定性面でものすごく尖ったマーケターなんだよね。(もうちょい定量面への理解があると最強)

そしてインサイトが「ことば」に落とし込まれることで、消費者の潜在的なニーズが顕在化して、市場を作り出すまでに至る。その辺の話が実務と研究の両面で語られるのがすこぶる面白い。

まぁこの辺の話は詳しく知りたかったら読んでよ、面白いからって話なんだけど、僕が話したいことはそこではなく、本書でも紹介されてる言語学の「サピア・ウォーフ仮説」ってやつなのよね。

われわれは、生まれつき身につけた言語の規定する線にそって自然を分割する。
P.99

例えば、ヘッダーの虹の写真、何色に見えますか?

日本だと虹の色は赤橙黄緑青藍紫の7色(とされている)。
でも虹=7色は常識でも何でもないわけで、英語では6色、仏語では5色(とされている)。
エスキモーは他民族が一般に「白」と表現する色の語彙を数十種類も持っていて、日常生活の中で使い分けているなんて話は有名。

要するに我々はことばを通じて世界を認識しているわけで、認識することばを持たないものに対しては明確に認識できない。

では、色々なことばを持たない人たちの生活、文化、暮らしってどんな感じなのかしら?という興味がムクムクと鎌首をもたげてくるわけです。
そして出会ったのがこの本。

これがまぁすこぶる面白いのよ。
ピダハンはアマゾンの奥地に住む少数民族で400人程度しか存在しない。
彼らの言語には、なんと右も左も、数(1、2、3、4・・・)も色の名前も、存在しない。どこの部族にもある神や創世神話も存在しない。
これはもう言語学的にもイレギュラーの塊なんだそうな。

著者は元々熱心な宣教師でキリスト教の布教を目的にピダハンの村を訪れたのだけど、彼らの言語、文化を理解していくうちに、自らが無神論者になってしまう。

神の教えを広めることをモチベーションにアマゾンの奥地まで行くモチベーションの人間が、無神論に導かれてしまうほどの衝撃がこの民族の言語と文化にあったということ。もうそれだけでヤバいよね。

数や色名の有無の他にも直接体験したことしか信じないっていう原則があって、伝聞も直接体験した本人から自分は聞いたっていう前提がないと成立しないんだって。

だからこれがめちゃくちゃ宣教師泣かせな訳だよね。

「キリストがこう言ってた」
「お前キリストにあったことあるのか?」
「いや、ないけど・・・」
「会ったこと無いのになんでわかるんだ」

もうこの辺は衝撃通り越して、ある種の滑稽さが滲み出てる。
漫才感ある感じの噛み合わないすれ違い。。。

そんなちょっと面白いエピソードも交えながら展開される本書は、
読んでみると思ってた以上に読みやすい。

世界の認識の根元に言語があるのであれば、
まさに世界は「ことば」でできている。
で、あるならば、どんな「ことば」を持っているかで
世界の認識の解像度は変わり得るんだよねぇ。

と、言うわけで、新小売概論「雑誌が “百貨店”になる日」を
よろしくお願いします!って話のはずが全然違うこと考えちゃったよ。
あー、楽しい。

自分の好きなことを表明すると、気の合う仲間が集まってくるらしい。とりあえず、読んでくれた人に感謝、スキ押してくれた人に大感謝、あなたのスキが次を書くモチベーションです。サポートはいわゆる投げ銭。noteの会員じゃなくてもできるらしい。そんな奇特な人には超大感謝&幸せを祈ります。