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金銭を得るためには「ただ、いる、だけ」が必要である。 2020/11/22

 いい夫婦の日。朝早く起きて、走りにでも行こうかと思ったのだけど、なんとなくやる気がしない。ここ2ヶ月くらいの澱のように積もったストレスというか、倦怠感みたいなものがあるような気がする。なので、本を読んだり、グダグダ、ごろごろすることに決めた。

 妻と長女は久しぶりに2人で買い物へ。風邪気味の次女と留守番して過ごした。銀河英雄伝説の外伝がPrimeVideoに追加されており、それを見ながらFGOをコツコツ周回していたのだけど、ついでに最近使っていなかったステッパーを踏み踏みしていたら、猛烈に汗をかき始め、足がふらふらに。ただ、ちょっとスッキリしてやる気が出たのかその勢いでリングフィットで筋トレ。スクワットしたらパンツが破れるハプニングに遭遇したが、太腿がひと回り位太くなっている気がするから、そのせいなのかなと思うがまるで漫画的な展開に次女と大爆笑した。

 録画用のHDDが満杯になっており、録画されていたアニメ等を整理して消していくなど地味な作業をこなしながら、こう言った生活のメンテナンスは地味に重要なのだ、などと自分に言い聞かせていたのだが、まぁこれらはすべて明日のプログラミング講座3日目に際しての何か1つ企画を考えて来てくださいねという課題をやっていないという現実からの逃避のような気がしないでもない。

 人の心の働きというのは実に不思議で、人は気になる物事の影響を無意識に受けているものだし、行動もそれに影響されているように思う。東畑開人『居るのはつらいよ』を読み終わった。これを読んでいたら、ただ「居る」こと、ただ「生きる」ことというのは案外難しいことで、どうしても何かしら意味とか意義とかやることを見つけないと落ち着かないという強迫観念があるのかもしれない、と思うようになった。何も考えずに役に立たない無為な時間の過ごし方をしてみたくなった。

 著者の飛び込んだデイケア施設で先に働いていた、上司、先輩、が相次いで辞めるシーンがあるのだけど、二人のさり方が対照的だった。1人は辞めることを、患者には当日まで明かさなかった。患者を動揺させないためだ。もう1人は、数ヶ月前から予告していた。自分がいなくなる現実を受け止められるようになって欲しかったからだ。

 もう一度言おう。シンイチさんは敗北した。 最大限の最終回を行い、別れを生きようと決めたシン イチさんは敗北した。
 メンパーさんは別れに耐えられなかった。 戸惑い、 動援し、そして最後は否認した。彼らは終わりの時間を、いつもの毎日として粛々と生きた。いや、懸命に生きたのだと思う。別れのもたらす動揺を抑えようとして、デイケアのぐるぐると回る日常にしがみついたのだと思う。体調を崩したり、デイケアに来なくなった人も多かった。
 だからシンイチさんが退職する日は寂しかった。
「最後は絶対お見送りに行くからよ」と言っていたトモカさんも、その日は休んだ。
 シンイチさんは誰よりも慕われたスタッフだったけど、いやだったからこそ、最後はとても寂しかった。彼を慕っていた人ほど、その日にデイケアに来れなかった。トモカさんに至っては、最後の二週間はデイケアに姿を見せなかった。
東畑開人『居るのはつらいよ』P.256

 最後に著者自身の心も蝕んでいったデイケアの闇が語られるのだけど、それは患者と病院と金を巡る話だ。精神病の治療施設も資本主義の金の論理からは逃れられない。

「ただ、いる、だけ」の価値がよく見えない。
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だけど、「ただ、いる、だけ」によって金銭が得られる。
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だから、金銭を得るためには「ただ、いる、だけ」が必要である。
東畑開人『居るのはつらいよ』P.325

 最後の最後に、心がざわついた。もっと多くの人に読まれたらいいなと思う。


自分の好きなことを表明すると、気の合う仲間が集まってくるらしい。とりあえず、読んでくれた人に感謝、スキ押してくれた人に大感謝、あなたのスキが次を書くモチベーションです。サポートはいわゆる投げ銭。noteの会員じゃなくてもできるらしい。そんな奇特な人には超大感謝&幸せを祈ります。