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我殺す、ゆえに我あり (4/4)
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一九九五年~。龍一の記憶
この家には、俺が生まれた時から爺さんと婆さんが居た。
俺は阪神淡路大震災の半年後、あるいは地下鉄サリン事件の四か月後に生まれた。
初めて目を開けた時、病院か家の明るい天井の光が差し込んできた記憶がぼんやりとある。家族だろうか、数人が俺の周りを囲んでいて、笑っていた。俺の誕生を祝福しているようだった。
俺は家族に褒められ持て囃され育った。
「龍一、おむつ
我殺す、ゆえに我あり (3/4)
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彼の第一声は、異様なほど冷めていた。
「でも、もう彼は死んだんだよね。ニュースでやってたよ」
彼の口元は笑っているように見えた。彼はお兄ちゃんが死んで喜んでいる。
「こんなに悠長に話していたのも、彼がここに帰って来ることが決してないから。僕は彼を憎んでいたよ、殺したい程にね。でももういいんや。うつ病も治りつつあるみたいやし。麗夏と会えたおかげかな?」
え……? どうしたの、翔馬く
我殺す、ゆえに我あり (2/4)
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『例の件だが、後始末も無事に済ませたか?』
『はっ、メビスウ様。指紋、頭髪などの痕跡は一切残しておりませんし、スマホ等彼の所持品もバラバラに処分しておきました』
『ご苦労。ハコビに物を引き渡す際も誰にも見られていないな?』
『勿論でございます』
『結構。その調子で頑張りたまえ。頼りにしている』
椅子に座ったまま、軽く胸を張り、腕を何度か回す。俺は深呼吸をした。確かに、明らかな達成感が
我殺す、ゆえに我あり (1/4)
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人間は、何かと意味を持たせたがる生き物である。時に執拗な程に。絨毯の皺や天井の汚れが人の顔に見えたり、ばったり出会った人間と意気投合し「運命」と感じたり。
この地球に生まれたのも、日本語が母国語であるのも、意中の人間に出会ったのも、全て単なる偶然の連続でしかないのに。そもそも、こうして呼吸ができているのも、地球と太陽の奇跡的な位置関係の賜物でしかないのに、人間は意味を後付けする。