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帰国子女、舞踊と唄と和楽器をこなす多才の芸者 | 箱根芸者物語#5

観光客が行き交う箱根湯本の商店街。

一歩奥の道をゆくとそこには歴史ある、箱根芸者衆が集う「湯本見番」がある。
見番が建ってから70年。今や令和の時代に。
何がどう変わったのだろうか。

変わりゆく時代に合わせ、伝統を守り花柳界文化を継承する「湯本見番」
知れば知るほど奥が深まる花柳界文化の世界。

ちょっとのぞいてみませんか。

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今回はMeet Geishaの「芸者とオンライン飲み会」の海外向け配信で世界中からの参加者を賑わす、現在大活躍中の芸者さん、優美子さんです。彼女は帰国子女であり、とっても芸達者である多才な芸者さん。

もともと彼女は組合長の置屋である「和喜田」に所属していた芸者さん。昨年に独立されて、今は「ゆき和」という置屋さんのお母さんです。

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私は京都出身です。7歳の頃まではワシントンD.Cと、マサチューセッツ州ケンブリッジに滞在しておりました。小学校1年生の時に日本に帰ってきた時には日本語を話さなくなっていたそうですが。

そして、8つの頃から日本舞踊を習っていました。それまではクラシックバレエをやってたのですが、成長が早かったせいかトウシューズを履けなくなってしまって。そこで当時素人として楽しんでいた母から日本舞踊を紹介されて始めたんです。びっくりする事に日本舞踊の先生も19歳までバレリーナだったそうで。

京都では舞妓や芸妓ではなかったのですが、観光客さんの前で日本舞踊を踊っていました。


私は同志社大学の通訳科を卒業したものの、通訳者としての適性がなく、翻訳も同時に勉強していました。海外で「芸者」といえばの映画「Memoirs of a Geisha」( 邦題『さゆり』)の英→日翻訳のお手伝い(とりわけ京言葉)をさせて頂きました。その頃は英語で食べて、踊りは趣味で、と思っていましたが、踊りの先生になり、楽器を弾くようになりました。

師範の資格は10代の頃に取得したのですが、実際に踊りを教え始めたものの、長唄の基礎が必要と痛感しました。長唄を習うなら、三味線か唄のどちらかの選択と言われ、10代の頃から学校や教会で聖歌隊で長く歌って来たため、唄を選びました。その後、舞妓さんの踊りの伴奏を頼まれるようになり、三味線も通信教育で独学していたのを、先生についてお勉強するようになりましたが、日本舞踊よりハマってしまい「本末転倒!」と言われました。

日本舞踊の世界では、三回習って覚えられなかったら才能が無いと言われたものでした。自身も、踊りを習っていた頃は録画は禁止でした。箱根でも、すぐに録画させて頂けるようになったのは、つい最近のことなのです。
楽器のお稽古でも、録音が許されるようになったのはそんなに早い時期ではありません。

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それから月日は経って、とある事をきっかけに東京に移ってきたんです。その頃はもう三味線は弾いておらず、資格を取ってカウンセラーをやっていました。胡弓(こきゅう)だけは続けていたんですけれども。

余談ですが、日本で胡弓が弾ける人はとっても珍しいのです。始めたきっかけは母のお琴の先生が胡弓もなさる方で「娘さん(優美子さん)に見せたらきっとやってくれるよ」と話していたそうですが、先生の言う通りどっぷりハマっちゃいました。胡弓は弾くのがとても難しいんです。特に力の入れ具合が。強すぎるとギイとするし、弱すぎると蚊が飛んでいる音みたいになってしまうんです。

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カウンセラーを続けて3年目が2011年で震災の年でした。地震が起きた後、自分に誓いました。「自分の生きたいように生きよう」と。私の生きたい姿は三味線に毎日触れて、弾くこと。

三味線を弾きながらご飯が食べれる仕事、、「芸者になろう」と決めました。そこから関東の花街すべてをネットで調べ、最初に面接を受けたのが和喜田の母でした。

ありがたいことに、箱根芸者を教えていた、踊りや長唄の先生のレベルが高かったんです。実は、日本舞踊の世界では自分が習ってきた流派以外の、他流の先生についてはいけないのです。ですが、芸者であれば「見番」の流派につくことができるんです。

地方になる人達は「お姐さん」達ばかり。芸者は若い時は立ち方、熟練になってから地方になるのが主流ではありますが、私の場合は芸者の下地がなかったので、最初から地方でした。

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これからの花柳界ですが、お客様の数が100人を超え、芸者衆の数が10人を超えるような宴会はなくなり、少人数のお座敷が主流になってくると思います。その中でやはり、若い人にやめていって欲しくないですね。彼女たちが次の時代を作ると思うので。

ただ、私に「あの頃がよかった」というつもりはありません。時代の変化があってもそれに合わせて仕事のあり方も変化するのだと思います。仕事があるというのはありがたい事です。過去より今が、一番幸せです。

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7月から再開する、湯本見番で行っている「Meet Geisha ショー」ですが、優美子さんもご活躍されます!是非会いに来てくださいませ〜!

優美子さんのブログはこちらです。




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